外食産業基礎コース 第5回目 人材教育その4

レストランチェック

人材管理:管理者及び店長の役割と時間管理

 前回は店舗組織から社員マネージャーのキャリアプラン(会社での昇進の段階)とトレーニングコースをご紹介した。社員は店舗の運営をしながらトレーニングコースを受けるという目の回るような忙しさだ。そのため効率的な時間管理が求められる。

 マクドナルドでは膨大なマニュアルと、トレーニングカリキュラムやQSCチェックによって目の回る忙しさで効率的な時間の使い方が求められる。それで時間を以下のように使うように教えるようにした。

1)タイムプランニング(時間管理)と改善の手段。

 店舗現場では時間がいくらあっても足りないと言う悩みが多い、その対策として、タイムプランニングをきちんと立て、具体的な改善を行うことが必要になる。自ら工夫して効率的な時間管理を編み出さなくてはいけない。

 仕事が多岐にわたるようになると必ず、ミーティングを忘れたり、約束の期限を忘れたりと、仕事がたまる一方だ。時間は限られているから、効率よく仕事を進めなければいけない。

 目標を効率よく達成するには業務別に優先順位を決め、時間配分の計画をたてる必用がある。これを行動計画と呼ぶ。どんなに優れた計画でも、時間を加味しないと役にも立たない。管理者は仕事のための一連の行動計画を立て、自分の時間をうまく管理しなければならないのだ。

 管理者として成功するポイントは無駄な時間を無くすことだ。時間を有効活用するには仕事内容をわかりやすく簡単に整理し、優先順位を決めることだ。計画は往々にして変更されたり、新たな目標や仕事が与えられる場合が多い。その場合には直ちに仕事を整理し、何が優先順位か再検討をする。

あまり机に座ることなく(机に座っても販売量が増加するわけでなかいからだ)必要な書類を整理整頓するこつを考えなくてはならない。仕事を効率よく片づけるには、各仕事の重要性、時間量、を測定し無駄な労力と時間を消耗しないようにする。

(1)以下の時間の浪費を引き起こす物を認識しよう。

  時間の浪費は誰でもしがちだ。時間の浪費を習慣づけない為には,常に「今のこの時間はどう使うのが一番良いのか?」と考える。必ず目的を持って行動し、それが成果が出せるようにしないと、時間の浪費となる。

  自分の時間浪費をしている箇所に思い当たればそれを修正すればよい。時間を浪費すればどこかでしわ寄せが来て、休みが取れなくなったり、仕事の達成度が低くなる。仕事に優先順位をつけ時間を浪費しなければもっと生産性の高い仕事が出来るだろう。

時間浪費の主な原因

  <1>電話による中断。

  <2>約束の無い訪問者

  <3>会議(予定あるなしにかかわらず)

  <4>不測の緊急事態

  <5>目標、優先順位、期限の欠如

  <6>乱雑な机とだらしない性格

  <7>他人に委譲できる細かな決まりきった仕事まで自分でやってしまうこと。

  <8>一度に何もかもやろうとする。しかもそれに取られる時間を少なく見積もること

  <9>責任と権限委譲が明確になされていないこと。

 <10>他からの不適当、不正確、遅い情報

 <11>優柔不断と遅延

 <12>不充分もしくは不明確な伝達と指示

 <13>「N0,いや、だめ」といえないこと。

 <14>上司が部下の進歩と成長を把握する上で必要な情報の不備

 <15>疲労

  以上のリストの内容に心当たりのない人間はいないはずだ。ではどうやってこれらの時間浪費を防ぐことが出来るのだろうか? その秘訣を見てみよう。「<1>電話による中断。」は携帯電話の普及により深刻な問題だ。

すぐ出ることは相手に時間を取られ、大事な仕事や、思考の妨げになる。直接出ずに常に留守電にし、内容を確認し、必要な電話だけ後で折り返し電話すると効率が上がる。その他は以下の通りだ。

<1>良い記憶力と良いファイリングシステム

<2>柔軟な対応力を持つ。障害があってもそれを乗り越え、やり抜くことができる。

<3>自信。いくつかの仕事が同時に重なっても、あわてず優先順位を貫くことができる。

<4>他人と良い人間関係を築き、維持できる人。人との摩擦や喧嘩などで余計な時間を使わない。

<5>素直な態度で人と接する。遠回しな言い方したり、人から誤解を受けるようなことをしない。

 以上が時間浪費を防ぐ秘訣だが、以下に時間浪費をしがちな人の現象を見てみよう。

<1>優柔不断な人。

    仕事の優先順位を頻繁に変え、あれこれといろいろな仕事に手をつける。

<2>完全主義者

    時間の使い方が下手な人は細かい所に注意を払いすぎる。

<3>情緒不安定名人

    怒りや欲求不満、悩み等があるとそれに邪魔されて、他のことの考えがまとまらず、正しい判断ができない。

<4>過度の緊張をしやすい人

    緊張しすぎる為に、肉体的、精神的疲労が蓄積され、仕事の生産性があがらない。

<5>不安感を何時も抱いている人

  自信がなかったり、失敗を恐れて、仕事に着手できない。

 もしもあなたの時間の使い方がまずいと自覚したら、真剣に努力して改善するべきだ。時間の使い方の達人の特徴を見習うと良いだろう。目標を効果的に達成するには、1秒でも大事にして、行動計画をどう実行するかにかかっているからだ。

(2)仕事のリストアップとカレンダーの利用による時間管理

 効率よく時間管理をするには以下の2点を考慮し計画を立てる。

・目標に優先順位をつけてリストアップする。

・目標達成のための行動計画を開発し、実施可能なように上手に組み立てる。

  仕事を効率よく実施するには、時間管理は極めて重要だ。毎晩寝る前に翌日片付けたい事を全部リストアップし日々の計画表に記入すると良い。

 リストアップした仕事を発生順に処理していくのでは時間が幾らあっても足りない。翌日片づけなければならない仕事の重要度、緊急性が異なるはずだ。重要度や緊急性の高い物から順番に処理すれば効率は上がるのだが、そのような仕事は難しかったり、何となく気が進まないので後回しにしようとし勝ちだ。

そこで、片づけなければいけない仕事一件につき、一枚の紙に記入する。その際に紙の色を変え、優先順位や緊急性の最も高い物を赤い紙に記入し、次は黄色、緑、記録に残す物は白紙の紙、と区分けをする。「何をすることが、自分にとって最もよい時間の使い方か?」を絶えず自問自答し、それから時間のスケジュールを立て、それに従って行動する。

  仕事を達成するために長時間働いたと言って自己満足してはいけない。時間を浪費したために,無駄な時間をかけて仕事を終わらせたのかも知れない。かけた時間の長さと仕事の完成度は違うのだ。

時間管理で大事なのは、どれだけ時間をかけたかではなく、どれだけ効率よく仕事を片づけたかだ。効率の良い時間管理は素早い、的確な行動を生み、間違っても仕事量を増やすことはない。

  年度途中で会社の方針変更や、目標が追加されるといったことがあるかも知れない。こうした場合は、上司と新しい方針や目標の内容を検討して優先順位を決める。そして、新しい目標をどうやってスケジュール化するかを検討する。

場合によっては優先順位を変更したり、スケジュールからはずすことも検討する。自分の仕事の成果にどう影響がでるか、担当の上司と話し合い、同意しておくべきだ。仕事を達成しても、内容を評価してくれなくては意味がない。柔軟な姿勢で目標の変更に取り組み、スケジュールを効率よく管理し、正しい評価を受けるべきだろう。

  時間と労力は最も高い優先事項に費やすようにする。優先事項が複数発生したら、一つずつ手際よく処理する。デスクワークでは優先順位を守って机の上に溜まった書類を効率よく整理し、至急の用事を全部処理してから現場に戻るようにする。

  時間管理に関して、管理者が無視しがちな点は、朝、昼、夜、の時間のバランスを上手に保つという点である。現場では、昼夜を問わず営業活動が続けられている。現場の営業状態をしっかりと把握するには、昼間同様、夜間も現場を回ることが必要である。

バランスの取れたスケジュールを立て、部下の人たちとよい人間関係を築き、運営レベルの向上を図ると共に、現場の持つ問題や強みを把握するよう努める。

(3)書類整理

  書類整理は放って置くと膨大な量となる。書類はきりがなく溜まっていくものであり、効率よく処理しないと身動きが取れなくなる。  会社の書類は次の3種類に分類される。

 ・現場保管の書類

 ・個人保管の書類

 ・会社保管の書類

 どの書類が上記のどの分野にあてはまるか、いったん決まってしまえば、あとは自動的に分類できる。情報をコピーすると書類が膨大に増加する。どこにどの書類が保管されているのかを知っておくようにすればよい。

  定期的に保管している書類が本当に必要かどうかを考える。破棄しても問題ないか、どこかに保管できないか、ファイリングするべきか考えてみる。書類は絶えず整理をすれば書類の山に埋もれることはない。自分の時間をより効率よく使うことができるようになる。

 管理者になると、いろいろなことに時間を取られてしまう。会議への出席は必用なものだけに出来るように,上司や同僚と打ち合わせをして作業を分担し、会社には何日位出向く必要があるかを決める。必要な会議には出席できるよう優先的にスケジュールを立てる。

  会社に到着すると、郵便物や伝言、依頼事項、報告書等、が山のように積み上げられているはずだ。これらの処理のポイントは、重要なものから順に3つに分類することだ。Aは直ちに処理が必要な最優先事項。Cはそれ程緊急でない用件である。Bはどちらか迷うときに分類し、後でAまたはCに分類し直して処理する。

続く

王利彰(おう・としあき)

王利彰(おう・としあき)

昭和22年東京都生まれ。立教大学法学部卒業後、(株)レストラン西武(現・西洋フードシステム)を経て、日本マクドナルド入社。SV、米国駐在、機器開発、海外運営、事業開発の各統括責任者を経て独立。外食チェーン企業の指導のかたわら立教大学、女子栄養大学の非常勤講師も務めた。 有限会社 清晃(せいこう) 代表取締役

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