ファスト・カジュアル 2回目 2021年09月29日

レストランチェック

 先回は、ファスト・カジュアルとして、米国元祖ファドラッカーと日本のモスバーガーのハンバーガー業態をご紹介した。
 今回はファスト・カジュアルをより分かりやすく表現した米国の店舗と食品スーパーをご紹介しましょう。

 それはバハ・フレッシュというメキシコ料理店です。(後にウエンディーズが買収)
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-2825/

 ファスト・カジュアルの特徴が分かりやすいのはメキシカン料理のバハ・フレッシュ
Baja Freshです。白と黒、グリーンをテーマカラーにした明るい内装にし、清潔さを全面的に打ち出したのです。店内の中央にあるカウンターの後ろは厨房ですが、カウンターに並ぶ客からは調理行程が全部見えるようにしています。カウンターの下がり壁には、

<<FOOD CANNOT BE MADE AT MICROWAVE SPEED>>
 と書いたメニューボードが出迎えます。
 当店は注文後、生の材料から丁寧に造り上げるので、少々時間がかかります。調理済みの食材を電子レンジで温めるだけのファーストフードとは違いますよ。という意味です。
メニューボードにはさらに
<<NO CAN OPENER>>
 当店の食材は缶詰などの保存食料品を使わず、すべて生の素材です。ソースもすべて店内で生の素材から造り上げます。

<<NO FREEZERS>>
 ファーストフードのように冷凍食材は使わず、生の食材から調理します。

<<NO LARD>>
 動物性油脂を使わないので、健康的です。

<<NO MSG>>
 うまみ調味料などのごまかしを使わず、自然のうまみを組み合わせておいしい味を実現します。(米国ではうまみ調味料を摂取すると赤面や、動悸が高くなったり、発汗する等のアレルギー症状を訴える人がおり、うまみ調味料をいやがる傾向があります。)

 このような標語を誇らしげに掲げているのです。カウンターに並び、厨房を見たら、奥のグリルでトマトとピーマンを焼いている。何の料理かと聞いたら、メキシコ料理に欠かせないサルサソースを生の素材から作っているところだと言うのです。そして店内にはサルサソースバーを設置し、好きなだけとれるようにしています。大変説得力のある標語と、デモンストレーションです。

 メキシコ料理には日本人はなじみがないのでピンと来ないと思います。正確にはテックスメックスという肉料理中心のテキサス料理と、メキシコ料理の融合料理です。日本にはファストカジュアルという言葉がありませんが、日本の外食にもモスバーガー以外にファストカジュアル業態と言える素晴らしい店舗があります。丸亀製麺とブロンコビリーです。

<<丸亀製麺>>
 メニューはぶっかけうどん(温冷)並みで280円、大で380円、一番高いメニューでも500円以下と言うリーズナブルな価格です。天ぷらなどのトッピングも150円前後だから、腹いっぱいになっても600円程度です。

 店舗入口正面の棚には業務用20kg入りのうどん用小麦粉の粉が積み上げられ、職人が小麦粉をこねて塊にして、熟成後、製麺機で自家製麺をします。厨房は360度の角度から全て見えるようにレイアウトしています。製麺機の横ではうどんを釜で茹でています。その調理光景を見ながら注文する。目の前にはフライヤーで揚げたばかりの天ぷら、造りたてのおにぎり、お稲荷さんが並べられ、思わず天ぷらを注文してしまいます。会計が終わったら、かけうどんの場合は丼に盛られたうどんに出汁を好きな量自分でかけます。その際に、天かす、葱等の薬身を好きなだけ盛り付けられるお得感があります。そのお得感が何とも言えないのです。
 低価格だけでなく、使っている食材、調理工程を全て顧客に見せるようにして、安心感と出来立ての品質を訴求している素晴らしい業態です。
 丸亀製麺は海外進出しています。ロシアの店舗ではおにぎりの代わりに寿司を作って売っています。一部分を現地好みに変えられる素晴らしい厨房設計です。

丸亀製麺
https://www.marugame-seimen.com/
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-4028/

<<ブロンコ・ビリー>>
 入口正面の冷蔵ショーケースには美味しそうなステーキ肉が陳列してあり、部位と重量、産地や飼育時の餌を明記しています。その後ろにはオープンキッチンが広がっています。
 キッチンでは目立つ場所に分厚い木の蓋をした大釜で魚沼産のコシヒカリを、蒸気を吹き上げて炊いています。そのちょっと後ろの中央の炭焼きグリルでは、ハンバーグや、ステーキをジュージューと音を立てながら焼きあげられているのです。
 客席に案内される途中には目立つように10数種類の新鮮な野菜とフルーツなどを盛り付けたサラダバーとカラフルなドリンクバーがあります。
 期待感に胸を膨らませて白と赤のチェックのテーブルクロスをかけたテーブルに着きます。注文をとる従業員はしゃがんで顧客と同じ目線になるようにします。
 メニューはハンバーグとステーキと絞り込んでいます。ハンバーグランチ170gはサラダバー、大かまどご飯、スープがついて税込1050円。サーロインステーキは160gで大かまどご飯とスープがついて1155円、それにサラダバーがつくと+360円です。ステーキは最大640g3339円まであります。熱々の鉄板に乗せた俵状のハンバーグがジュージューと音を立てて運ばれてきます。それを従業員が目の前でカットし、まだ赤い肉の面を熱々の鉄板につけて火を通しソースをかけ、蒸気と香りを振りまくのです。
 訪問したのは日曜日のランチでした。客席には家族連れ、特に祖父夫婦、若夫婦、子供の3世代が目立つ、家族団欒の場となっています。客単価が低く、ファミリーレストランと言うより、家族向きのファスト・カジュアルと呼んでよい楽しい業態です。

ブロンコ・ビリー
https://www.bronco.co.jp/
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-4026/

<<ファストカジュアルの定義>>
 ファスト・カジュアルFast-casualとは、ファースト・フードよりも、大人にターゲットを合わせたメニューで、客単価は6ドルから9ドルの間です。ファスト・フードで提供しない低アルコール飲料(ビールやワイン等の食中酒。米国は敬虔な清教徒が建国したので、アルコールには厳しい制限があります。安息日の日曜日には酒類の販売が禁止されている州があるくらいです。悪名高い禁酒法も清教徒の影響です。)も提供します。そして、よりアップスケールな内外装デザインを採用しています。サービスはセミセルフサービスで、注文してお金を払ってから客席につくとそれから調理して料理は後から運ばれます(ファストフードのように作り置きはしません)。現在の消費者はより良い品質や鮮度の高い料理を求めており、注文後調理をしてくれるなら多少の時間は待つのです。
Fast-Casualの料理は、ベーカリーカフェ、ハンバーガー、スープ・サラダ、イタリアン、アジアン、メキシカン、中華、HMR(総菜)まで幅広いのです。

<<米国ファスト・カジュアル店舗>>
 
元祖H.M.R.
Katz’s Delicatessen
カッツ・デリカテッセン
https://katzsdelicatessen.com/
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-3646/

Chipotle メキシカン.
http://www.chipotle.com/
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-2264/

Panera Bread, ベーカリーカフェ
http://www.panerabread.com/
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-3640/

Fuddruckers, ハンバーガー
http://www.fuddruckers.com/
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-3616/
https://www.sayko.co.jp/food104/post-2272/

Boston Market, HMR、いわゆるお総菜
http://www.boston-market.com/

Pei Wei 中華
https://www.peiwei.com/

Baja Fresh メキシカン
http://www.bajafresh.com/
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-2825/

Chick-Fil-A
http://www.chick-fil-a.com/

Five Guy’s
http://www.fiveguys.com/

IN&OUT BURGER
https://www.in-n-out.com/

Shake Shack
https://www.shakeshack.com/

UMAMI BURGER
http://www.umamiburger.com/

<<食品スーパーの逆襲MSミールソリューション>>
 これからちょっと外食にも大きな影響を与えている食品スーパーの例をご紹介しましょう。
 食品スーパーのFMIと言う(フードマーケティングインスティテュート)業界団体が、
HMRの分野、特にボストンマーケットに対抗しようと言うことでMS(ミールソリューションという言葉)を提案しました。
 FMIはボストンマーケットの提唱したHMRを徹底的に分析を行いました。その結果わかったのは
1)晩ご飯だけでは便利ではない
 従来の食品スーパーに総菜を買いに行くと、あちこちに総菜売り場が分散していたり、売り場全体が広いので時間がかかるという欠点がありました。しかし、ボストンマーケット等の店舗は面積も小さく車で乗り付けて(場合によっては電話で事前に注文を入れられる。)数分で買い求めることができて便利だと言う事で人気がでたのです。

 しかし、ボストンマーケットを良く分析してみると彼らはすぐ食べる食事しか提供していません。例えば、主婦がパートタイムの仕事の後にあたふたとボストンマーケットに駆けつけて,数人前の食事を買ったとしても、それだけでは夕食だけであり、朝食のミルクやパン、フルーツ、コーンフレーク、たまご、野菜等は別途食品スーパーで買わなくてはいけません。晩ご飯だけを考えれば便利ですが、翌朝の食事を考えるとそう便利でもありません。

2)人の家に食事によばれたときのお土産はどうするのか?
 また、家庭パーティに招待を受けたときにはお土産をもって行かなくてはいけません。米国人はお土産、お歳暮、お中元の習慣が無いと勘違いしやすいのですが、そこは同じ人間同士、必ずお土産やお歳暮の習慣はあるのです。お歳暮はどちらかというと親しい友人や親族同士での贈り物で、クリスマスの際に1年間の感謝を込めてギフトを贈ります。クリスマスギフトは子供だけでなく、大人にも贈るのです。
 家の食事に招待するというのは外食に招待するよりも、心のこもった接待となります。親しくなったり、仕事上の大事な友人は家庭に招待します。招待された側は必ず、手土産を持って行きます。それが、きれいな花だったり、美味しいワインだったりします。花の選択やワインの選択で招かれた人のセンスがわかってしまうわけです。
 
 このような分析結果から、食品スーパー内で、ボストンマーケットのように店内で調理を行うようになってきました。大手のクローガーやアルバートソン、セーフウエー等もこぞって店内調理に力を入れたのです。すべてオープンキッチンで総菜だけを買いに来る客が便利なように入口に一番近い場所にサラダバー、サンドイッチバー、ホットデリコーナー、パン、調理済み食材を配置し、同時にワイン、チーズなどをすぐ側に置き、一度にすべての買い物が可能になるようにしました。勿論、食事に招待された時のお土産に便利なように花とワイン売りはレジスタの外に置いて買えるようにしたのです。

 こうして食品スーパーの総菜は、外食のボストンマーケットと同等以上に戦えるようになったのです。

<MS(ミールソリューション)の店舗

Draegers
http://www.Draegers.com/
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-2684/

 Draegersが2000年第初頭に開店したシリコンバレー・サンマテオの店舗は、FMIが唱えるミールソリューションを忠実に実現した店として有名になりました。

 ボストンマーケットがローティサリチキンと温野菜、冷たいサラダを武器に大成功を治めたことは食品スーパーにとって大きなショックを与えたのです。ボストンマーケットはHMR(ホームミールリプレイスメント 家庭食事の代行)と言う言葉を生み出し、時代の寵児となりました。 更に、イーチーズなどのように外食マーケットからお総菜に参入する動きに食品スーパーとして具体的な対策が必要になりました。そこで、業界団体であるFMIはMS(ミールソリューション 食事の悩み解決)という提案を行ったのです。

 そこでDraegersは画期的な店をシリコンバレーの中心のサンマテオに作り上げたのです。日本の高級スーパー紀伊国屋も真っ青になるような高級スーパーです。

1)ワインの選択
 普通ワインの試飲ができませんが、ここではテイスティングルームをおいて、顧客に試飲をしてもらい納得して安心して購入できます。勿論、料理、チーズへのマッチングの相談にものってくれるのです。

2)料理がわからない
 料理の悩みについては2階に料理の本を集めて販売しています。椅子もおいてじっくり本を読んでから購入できるようになっています。料理の分野だけですが、大型の本屋と同じくらいの種類の本を集めているので何料理でも万全です。

 料理の上手な人であれば本を読んで色々な新しい料理をできるのですが、普段料理をしていない人には無理です。その悩みを解決するために料理教室を設置しました。料理教室と言っても普通の家庭料理を教えるのではなく、米国(主にサンフランシスコ)の有名なレストランのシェフを先生とする高級料理の講習です。授業料は料理付きで30-50ドルと高額ですが大人気であっという間に予約が埋まってしまいます。

3)テーブルセッティングをどうしたらよいのかわからない
 入口にはきれいな花屋をおいており、そこでテーブルにあった花を購入できるようになっています。花は痛みやすいので買い物の後購入してそのまま車に乗れるように気を遣っているのです。テーブルセッティングについてはウイリアムズ・ソノマクラスの立派な店舗を構え、色々な内装やデザインのダイニングルームにもあわせられるようにしています。

4)家で1人で食べるのは寂しい
 いくら美味しそうなお総菜でも1人で食べるのは寂しいし、家で並べて食べて、片付けるのも面倒だという人にはレストランを店内に設けています。普通店内のレストランというとファーストフード中心のフードコートで味気ないことおびただしいのですが、この店は何とサンフランシスコ市内の繁盛店からイタリアンの最高級シェフをスカウトし、高級イタリアンの店舗を設置しているのです。

 家で食べる独身者には野菜だけでなく、サラダバーやフルーツバーを並べたりして、1人でも色々なフルーツや野菜を食べられるようにしています。サラダバーでは手作りのドレッシングで個性を出すように工夫を凝らしています。

5)健康志向
 外食ばかり多いと脂肪分、塩分、糖分、カロリー、等の摂取が多いわりには植物性繊維やビタミンが不足します。そこで、健康食として話題になっている寿司、中華料理、温野菜などをお総菜として販売しています。

 米国では寿司のシャリ米を野菜としてとらえ、健康的な食事として脚光を浴びています。その寿司と枝豆(やはり繊維質が豊富で健康的だと言うことでしょう)を販売しています。

 現在の米国の高級食材スーパーのお総菜部門には必ず、イタリア料理、テックスメックス(メキシコ料理とテキサスの肉料理が融合した)料理、カリビアン(リゾート地フロリダのあるカリブ海の島々)料理、中華料理、日本料理、が並べられているのが特長です。
 皆さんに見ていただきたい食品スーパーが、オーガニック食材を販売するwhole foodsホールフーズです。最近アマゾンの傘下に入りました。元々は全国各地の零細なオーガニックスーパーを合併して大きくなったオーガニックスーパーです。食品スーパーはその土地になじみのある食生活に密着するため、全国展開は難しいのですが、ホールフーズは唯一の例外で、全国展開しています。日本のオーガニックの食品スーパーというと、野菜中心のお粗末な店舗が多いのですが、ホールフーズは大型のお洒落な店舗で、オーガニックの野菜はもちろん、肉、魚、乳製品、ワイン、ビール、等すべてオーガニックです。牛肉で言えば、通常は短期成長しやすい蛋白質として肉を混ぜた、濃厚飼料で、ケージに入れて、成長ホルモンや、抗生物質を与えます。オーガニックの牛は肥料や除草剤などを一切与えない牧草で放し飼いで飼育します。その牛からとった乳製品のチーズや、ヨーグルト、牛乳も販売します。鳥も不健康なケージ飼育でなく放し飼いで、成長ホルモンや、抗生物質を与えません。魚は養殖でなく天然ものです。
 ホールフーズの素晴らしいのは、持ち帰り総菜が充実していることです。オーガニックの食材を使って出来立ての総菜を提供しています。もう一つ私が好きなのは、ベーカリー食材です。特にケーキ類が良いのです。私のケーキの好みは子供じみた、苺ショートケーキです。シリコンバレーのアンドロニコスの店頭にはケーキコーナーを設けています。フランスのケーキのようにお洒落で思わず買ってしまいます。しかし日本のケーキの3倍も甘く日本人には食べられません。しかし、ホールフーズの苺ショートケーキは日本人向きの甘さです。
 最近はイートインの客席を店内の食品売り場と関連して設置したり、大型のイートインコーナーを備えています。

<<その他のスーパー>>
<サンフランシスコエリア>
Andronicos
アンドロニコス
https://www.andronicos.com/

whole foods
ホールフーズ
https://eu.wholefoodsmarket.com/?destination=www.wholefoodsmarket.com%2F
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-3596/

<ニューヨークエリア>

wegman 
ウエグマン
https://www.wegmans.com/
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-3550/

stewleonards
ステューレオナード
https://www.stewleonards.com/

 ニューヨークの食品スーパーは当マガジンにも寄稿していただいている、ニューヨーク在住の下城さんのブログをご覧ください。豊富な画像でご覧いただけます。
https://ny-news.amebaownd.com/

<ヨーロッパ>
 イタリア・ミラノ
百貨店の食 ラ・リナシャンテla Renascente
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-2417/

 ドイツ・フランスのデパ地下
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-2401/

 食品スーパーの売上げを分析してみると長期的には食材を生から調理をするという消費形態は衰退するという事は明らかです。また、食材のみを販売しても粗利益は25%前後と低いのです。ボストンマーケットのような総菜を調理してすぐ食べらられるように売れば、少なくても50%うまくいけば70%近くの粗利益を確保できるのです。

Fast-Casual
王記事
https://www.sayko.co.jp/food104/post-2682/

1)Fast-Casual の売り上げ動向(NPD社のレポート)
 2001年11月の売上の伸び率は2%と低下しています。しかし、店舗数の増加は継続しているのです。2002年9月にはfast-casualの店舗数は16%増加し、1年前の6591店舗から7651店舗に増加していました。業態としては良いのですが、価格が高めなので景気の影響とチェーンによっては苦戦していると思われます。
 Fast-Casualのカテゴリーの年商は5ビリオンドルになっていましたが、外食売上の2%を占めているにすぎませんでした。しかし、外食全体の売上は2002年で4.5%の成長に対して、今後5年間で年間15~20%伸びると予想され、成長率が高いのです。
 このカテゴリーが注目されるのは食の動向に敏感で所得の高い人たちが多く利用していると言うことです。以下の表のように、18才から34才の年齢層の支持率が圧倒的に高く、顧客の平均的な年収も75000ドルと比較的に高いのが特徴です。

年齢層   FAST CASUAL・QSR(ファストフード)・MIDSCALE・ CASUAL DINING
Under 18  15%      22%          15%    17%
18 ー 34  37% 30% 22% 29%
35 ー 49 28% 28% 28% 27%
50 ー 64  14%      13% 21% 17%
65 & over 6% 6% 14% 11%
Source: NPDFoodworld

2)Fast-casualの起源
 このカテゴリーの創始者は1982にレストランコンセプト作りの天才 Phil Romanoが開業した、Fuddruckersだと言われています。Phil Romanoは経営から離れていますが、現在もチェーン展開を継続しており、200店舗近い直営店とフランチャイズ店を展開しています。氏は大人気のイタリアンの、マカロニグリルと、お惣菜のイーチーズと言う大繁盛コンセプトも開発しました。
 マクドナルドやバーガーキングなどのハンバーガーチェーンは冷凍の食材を使って、調理工程を見せていないことに注目し、全ての素材を生から作り上げ、その調理工程を見せるようにして大人気を得たのです。客単価7.50ドル。10種類のトッピングを選べることができます。ハンバーガーの売上比率は65%と高く、1店舗平均年商は1.5ミリオンドルに達します。
 ファドラッカースのコンセプトは調理工程を全部見せると言うことと、店内で肉の塊からひき肉にしてハンバーガーパティを作り、小麦粉からバンズをスクラッチで作る工程を見せることです。マクドナルドやバーガーキング、KFCなどのファストフードの厨房は客から見えないようにしています。そのため、客は冷凍食品を電子レンジで温めているだけだろうと思っているのです。しかも、食品添加物や油脂、塩分、カロリーが多いと言う不信感も抱いています。その不信感を払拭するのがオープンキッチンの目的なのです。オープンキッチンというと通常はカウンターからキッチンが見えるだけなのですが、ロマーノ氏のコンセプトは360度の角度から見えるようにしようと言うものです。
 黄色い看板がかかっている入り口を入ると、左側にブッチャーがあります。肉を塊から挽肉にする工程を見せ、出来上がった巨大なハンバーガーパティをトレイに並べています。ブッチャーの横には畑から取れたてのように新鮮なレタスやトマトが並べられているのです。入り口右側にはハンバーガー用のバンズをスクラッチで粉から焼いて、焼き立ての香りの良いバンズを並べています。入り口正面にはハンバーガーを焼くキッチンが広がっています。キッチン左手のレジで自分の好きなハンバーガーを注文します。ファドラッカースは肉のサイズは1/3ポンド(148g)から1ポンド(453g)までの大きさを選べます(マクドナルドのレギュラーハンバーガーで1/10ポンド・45G)。1ポンドのハンバーガーは約7ドルもします。マクドナルドのように作り置きをしないので注文後、5~10分ほどかかります。ハンバーガーの渡し口からはキッチンでハンバーガーを焼いているのが丸見えなので、どんな風に焼き上げているのかを見ていると飽きが来ません。
 出来上がると名前を呼んでくれます。出来上がったハンバーガーにはケチャップや野菜は付いていません。ケチャップ、マスタード、マヨネーズ、野菜などのコンディメントは、コンディメントバーで好きなだけ選べるのです。つまり自分好みのハンバーガーを作り上げることができるのです。
 食生活の傾向として牛肉消費が減少の一途であったのですが、アトキンスダイエットという低炭水化物ダイエットの影響で、牛肉消費量が増加に転じています。特にステーキやハンバーガーは人気を回復しています。
http://www.fuddruckers.com/

3)大手ファーストフードのFast-Casualへの対応
 Fast-Casualのメニューコンセプトの特徴を大きく物語っているのが、メキシカン料理のBaja Fresh(バハ フレッシュ) http://www.bajafresh.com/ です。メキシカン料理のお店はおいしいのだが店舗の内装があか抜けなかったり、薄汚かったりします。そこで、Baja Freshは白と黒、グリーンをテーマカラーにした明るい内装にし、清潔さを全面的に打ち出したのです。店内の中央にあるカウンターの後ろは厨房ですが、カウンターに並ぶ客からは調理行程が全部見えるようにしています。
 売上が低迷しているファーストフード業界大手はこの動きに注目し、具体的な対策を打ち出したのです。Fast-casual は資金も人材もノウハウも不足しており、成長に必要な投資先や提携相手が必要でした。そこで、大手ファーストフードチェーンはその成長ノウハウを自社のチェーンに取り入れるために、資本提携や買収を仕掛けたのです。その結果多くのFast-Casualのチェーン店は大手外食チェーンの傘下に入りました。

<1>Jack in the Box(西海岸のハンバーガーチェーン)
 Qdoba メキシカンチェーン
直営28店、フランチャイズ店58店
今後15の直営と45のフランチャイズ店を開く予定。
5年間で600~700店舗を開店し、8年以内には1000店開店予測
Jack in the Box社は45ミリオンドルで買収

<2>McDonald’s
 Chipotle メキシカンチェーン
マクドナルドの傘下に入り数百店舗を展開し、上場後マクドナルドは売却。

Boston Market
 鶏の丸焼き等の鮮度の高い料理をテイクアウトできるようにして、一世を風靡したのですが、食品スーパーの競合に敗れ会社更生法を申請し、マクドナルド傘下に入りました。その後売却されました。

Pret A Manger
 イギリスでチェーン展開したフレッシュサンドイッチチェーンで、狂牛病
に苦しんだヨーロッパ・マクドナルド社が注目し、33%を出資しました。買収総額は35~50ミリオンドル。ニューヨークを中心に数十店舗展開。

<3>Wendy’s
Baja Fresh
 メキシカンチェーンで、200店舗展開。2002年に272ミリオンで買収。

CafE Express
 カフェのチェーンで、Houston本社

Pasta Pomodoro
 San Franciscoを中心に展開しているイタリアンパスタチェーン

<4>Yum Brands(もとトライコン、KFC、ピザハット、タコベル等の親会社)
 テレビ料理番組の人気者Martin Yan 氏と提携し、アジア料理店を展開。
その他、カリフォルニアのPasta Bravo と提携

5)数多くある、ファスト・カジュアルの業態分析

(1)有名シェフが経営するカジュアルレストランや高級レストランのメニューを絞り込んだ業態

(2)有名シェフのブランドを使い、企業化した業態

(3)チェーンレストランまたは、経験者がマーケットリサーチの結果作り上げた新業態
(4)大手チェーンがファスト・フードやカジュアルレストランで人気の商品を研究し作り上げた業態

等に分かれます。

 初期のファスト・カジュアルである(1)の業態で有名なのはウオルフギャング・パック・エクスプレスです。経営者のWolfgang Puck(ウオルフギャング・パック)氏はフレンチの有名調理人で、フランス修行時代は日本の有名シェフ、石鍋裕さんや熊谷喜八さんと一緒に働いていました。その後、米国西海岸のLAに渡り、フランス料理のお店を開業しようと思ったのですが、当時の米国はすでにフレンチの時代は終わり、サンフランシスコ対岸の学生街バークレーにあるシェパニーズ http://www.chezpanisse.com/ のようにフレンチをベースにカリフォルニアの新鮮な野菜や魚介類を組み合わせた、ニューアメリカンが人気を呼んでいました。そこで、ウオルフギャング・パック氏はイタリアンをベースに新鮮なカリフォルニアの野菜と海産物を組み合わせたスパーゴを開店したのです。次にカリフォルニアの多民族(特に東南アジア系の)にあわせ、カリフォルニアスタイルの中華料理店シノワ・オン・メインを開業、その新鮮で素晴らしいサービスのお店は大成功をおさめました。そして、パック氏は米国で開催されたサミットなどのシェフを努めるなど米国のトップシェフの座を獲得したのです。

 その名声を背景に、氏の名前を付けた、パスタとピザを中心としたカジュアル業態のウオルフギャング・パック・カフェを開発しました。オープンキッチンの中央には石釜を設置し、その石釜の周囲等にパック氏の前の奥さんのBarbara Lazaroff氏(有名なインテリアデザイナー)がデザインした、原色のカラフルなタイルを張りつめ、店内の内装はその色とコーディネートした新鮮なイメージのお店で、LA名物として全米で大人気となりました。
 次の開発はファースト・カジュアル業態のウオルフギャング・パック・エクスプレスでした。ピザとパスタ、そして調理済みのお持ち帰り惣菜などを組あわせたセルフサービス店舗で、LA空港やサンフランシスコダウンタウンのメーシーズ百貨店などに開業し、大成功をおさめました。その他、氏の名声を元に冷凍食品を製造販売する会社を設立するなど、会社の仕事の拡大を続けたのです。

 しかし、ファースト・カジュアルタイプのイタリアンチェーンを買収してから、その業績にかげりが出てきたのです。
 2003年9月15日付けのニュースによるとWolfgang Puck’s casual-restaurant company, Wolfgang Puck Worldwide (以下WPW社と省略)が, 数店舗を閉店するか、業態変更をすると伝えてきました。

 会社の創始者であるパック氏はカフェ業態の見直しと、買収したワシントン州に本部を構えるCucina! Cucina! Inc. の14店舗の見直し又は売却を検討し、ファースト・カジュアル業態に専念するようになりました。WPW社は25店のエキスプレスと15店のフルサービスの ウオルフギャング・パック・カフェ、21店舗のCucina! Cucina!を展開をしましたが、複数の業態を抱えるのは難しいという結論に達したようです。

 2001年にはWPW社は冷凍食品部門を20ミリオンドルでコナグラ社に売却し、2001年末には業界の専門家をスカウト、ファースト・カジュアル業態のエキスプレスに集中しています。エキスプレス1店舗の平均年商は1.8ミリオンドルにのぼり、収益性が高く、フランチャイズ化により2007年までに300店を開店する計画でした。しかし、業界筋は300店舗ものフランチャイズチェーン展開を行うにはかなりの資金力が必要であり、大幅な資本力の増加が迫られると見ていまし。

 LA空港などのウオルフギャング・パック・エクスプレスは賑わっていたのですが、LA最大規模のサウスコースト・プラザ・ショッピングモールのウオルフギャング・パック・カフェは目の前に開店したローストビーフの名店、ローリーズの新しいファースト・カジュアル業態のカーバースに完全に負け、閑散としていました。

 パック氏のようにブランドのある有名シェフであっても複数の業態を展開するのは難しく、大手チェーン傘下に入りファーストカジュアル業態に専念するか、パック氏の一番の強みである高級レストランビジネスに専念するか、の選択を迫られていると言うのが、厳しい米国外食業界の実状です。

6)大手ファスト・フードの対応
 2001年9月11日のテロ以降不振の米国外食業界にやっと回復の兆しが見え、て2003年6月29日の週から5週連続で増加して回復していたのですが、2009年のリーマンショックでまた不振に陥りだした。その要因は大手チェーンレストランのマーケティングの強化によるものです。
 大手チェーンのマクドナルド、バーガーキング、KFCなどの大手ファストフードチェーンは、マーケティング活動を強化する際に、ファスト・カジュアルの台頭を重視しました。大手ファストフード各社はファスト・カジュアル企業に出資したり、子会社にして、そのノウハウをメニュー開発に取り入れだしたのです。
 米国マクドナルド社の2003年10月22日の投資者向けの発表によると、健康志向に対応した新メニューのミールサイズサラダが好調で、アメリカ国内のセールスの低下に歯止めがかかり、第3四半期の売上が12%向上したのです。
 新商品のサラダ成功でホット一息ついたマクドナルド社ですが、本当の回復にはほど遠いのが実状でした。コスト削減やサービス提供時間の短縮を目指して、メイド・フォー・ユーと言う食材別の保温保管システムを開発したのですが、それが品質を低下させ、同時に、ピーク時の提供時間を長くすると言う大問題を抱えてしまったからです。
 マクドナルド社は提供時間が速い、特にドライブスルーの提供時間が速いと言うのが売り物でした。しかし、メイド・フォー・ユーシステムの失敗とQSCに対する管理の甘さが、オペレーションを低下させ、米国ファーストフード業界で最も重要なドライブスルーでの評判を落としてしまったのです。

続く

王利彰(おう・としあき)

王利彰(おう・としあき)

昭和22年東京都生まれ。立教大学法学部卒業後、(株)レストラン西武(現・西洋フードシステム)を経て、日本マクドナルド入社。SV、米国駐在、機器開発、海外運営、事業開発の各統括責任者を経て独立。外食チェーン企業の指導のかたわら立教大学、女子栄養大学の非常勤講師も務めた。 有限会社 清晃(せいこう) 代表取締役

関連記事

メールマガジン会員募集

食のオンラインサロン

ランキング

  1. 1

    「ダンキンドーナツ撤退が意味するもの–何が原因だったのか、そこから何を学ぶべきか」(オフィス2020 AIM)

  2. 2

    マックのマニュアル 07

  3. 3

    日本外食歴史

アーカイブ

食のオンラインサロン

TOP