日本企業のマニュアル まとめ 2回目

レストランチェック

 前回はマクドナルドのマニュアルの特殊さに起因する複雑かつ膨大なマニュアルをお話ししました。そのため他の外食産業では参考になりにくいのです。マクドナルドの資料の内参考になるのは、人材教育、マーケティング、調理機器開発、などです。

 その中で最も参考になるのが、人材教育の手法です。社員向けの教育方法は膨大で、期間も長くてあまり参考になりませんが、アルバイト向けの作業手順書は簡単でどんな職種でも取り入れやすいのです。

 参考までにコンビニエンスストアー向けのトレーニングマニュアルを以下のように作成しましたのでご参考ください。

(アルバイトの作業手順書 )

 各作業をマンツーマンで説明しながら、仕事を具体的に教える必要がある。各作業を標準化し、最低限度必要な仕事、手順を明記した作業手順書を各作業ごとに作成する。なるべく作業を分解し、細かく業務別に分けると良い。

開店作業、閉店作業、清掃業務、レジ操作、深夜作業、クレンリネス、発注作業、品出し作業、返本作業、など項目別に作業を分け、それぞれ作業手順書を作成するとよい。

 作業項目内容は必要最低限度にとどめる。この作業手順書は簡単なマニュアル、チェックリスト、評価表を合体した物だ。マクドナルドでは従来30時間かかっていた、新人トレーニングを作業手順書の導入により15時間と半減することに成功している。

 表は具体的な作業指示書のサンプルだ。このほかに店舗でつけ加えたい物があれば記入する。あまり複雑にしないで最低限度の内容にするのが秘訣だ。

 このサンプルはレジの操作の作業指示書だ。左側に□□□がある。これは、最初に教えた時に一番左側をチェックする。次に一人で出来るようになったら、真ん中をチェックする。忙しいときにも出来るようになったら、右側をチェックする。これによりどこまで作業を教えて、現在どこまで作業になれているかわかるようになる。そして上の欄に初期終了、一人で出来る、忙しい時出来るかのオーナー確認覧を置く。

 この作業指示書はマニュアルとチェックリスト、評価表をかねているのでそのどの場合でも使用できる。

(タイムプランニング)

 15時間で短期トレーニングするには、作業手順書が効果的だが、同時に標準時間を設定し、計画通りにトレーニングを進行する。

サービス、クレンリネス、フェイスアップ(陳列)、深夜作業、発注業務、搬入倉庫整理、返本作業、など各業務を仮に7つとして、作業手順書を作った場合、それぞれの標準時間を設定する。その作業時間の例を挙げてみよう。

第一日目

オリエンテーション      60分

サービスマニュアルかVTR  10分

サービス説明         20分

サービス実習         30分

一人で作業          60分

評価とフォローアップ     20分

クレンリネスマニュアルかVTR10分

クレンリネス説明       10分

クレンリネス実習       20分

評価とフォローアップ     30分

オーナーと懇談        30分

初日労働時間計        5時間

第2日目

サービス復習

クレンリネス復習

フエイスアップ

搬入倉庫整理

一部の発注作業

所要時間        5時間

第3日目

前日の復習

深夜作業

発注作業

返本作業

フォローアップ

合計          5時間

 このように標準時間を設定し、効率よく進める。アルバイトの適性により時間がかかると思いがちだが、もし人により必要なトレーニング時間が変わるようであれば、教え方が具体的でないか、要求基準が高すぎる場合だ。最初から多くを期待しないで、最低限度必要なことだけ教えればよいのだ。

そして1カ月後2カ月後になれた時点で、同じ作業手順書で基準を高くしてチェックし再評価する事により店舗の基準を落とすこともないのだ。

 コンビニの作業レベルであれば、深夜業務までも15時間以内に教えられるはずだ。実際に教えているオーナーは随分と多いはずだ。ただ現在は教える人により時間が異なっているだけだ。作業手順書の標準化とタイムプランを明確に立てることでだれでも15時間でトレーニングできるのだ。

 20人のアルバイトを採用しているとして、平均2年間の定着期間だから、年間10人のアルバイトを採用しなければならない。もしアルバイトのトレーニング期間を1人当たり、4時間短縮できるとする。チェーン全体で1000店舗あるとすると4時間×10人×800円×1000店=3200万円もの金額を削減できるのだ。しかも定着率が高まれば、トレーニングコストだけでなく、サービスのレベルも向上するのだ。

 是非挑戦していただきたい。

店舗名

氏名

カウンターサービス、POS操作、作業指示書

初期終了   一人で出来る     忙しい時出来る    VTRを見た

日付

オーナのサイン

□□□1.自然な笑顔でお客様の目を見て挨拶する。

□□□2.ゆっくり丁寧にお客様に話しかける。正確にPOSレジのスキャナーで商品を読みとる。

□□□3.ピーク時でない場合は、 新商品の発売のお知らせとお勧めをする。

□□□4.売り上げの 合計キーを押し,その金額をお客様に伝える。

□□□5.代金を受け取り,受け取り金額を述べてから,POSに打ち込む。

★高額紙幣は,始めに小銭を渡し,紙幣はお客様の前で数えて渡す。

★高額紙幣は釣り銭を渡すまでしまわない。

□□□6.商品の量に応じた袋を選び丁寧にいれる。マークがお客様に向いているようにする。

□□□7.バッグは両手を添え,カウンターの上を滑らせるように丁寧に差し出す。

□□□8.笑顔でお客様の目を見て挨拶する。

★「ありがとうございました。」

★「ありがとうございました。またどうぞおいでくださいませ」

サービス接客用語

・いらっしゃいませ。

・ありがとうございました。

・かしこまりました。

・少々お待ち下さい。

・恐れ入ります。

・申し訳ございません。

□□□9.商品を探しているお客様がいたら声をかける。

□□□10.どこにどのような商品があるか把握しておく。特に新商品。

□□□11.高額紙幣の取扱いに注意する。

□□□12.カウンター周辺を清潔に保ち,常に整理整頓して置く。

□□□13.暇な時間帯は店舗外部も清掃する。

□□□14.クレジットカードの処理を出来る。

□□□15.公共料金の処理を出来る。

□□□16.宅急便の処理を出来る。

□□□17.コピー機の処理を出来る。

□□□18.FAXの使い方を説明できる。

□□□19.レジの打ち間違いが合った場合には, 正しく処理できる。

□□□20.当店の取り扱い商品以外のものを要求された場合失礼のないように応対し,当店の商品をお勧めする。商品の特徴を説明できる。

□□□21.必要に応じて,隣のレジの袋詰めなどの手助けをする。

□□□22.店内を清潔に保ち,ゴミなど落ちてないようにする。

□□□23.廃棄処分を正しくできる。

□□□24.電子レンジ、コピー機、FAXなどの機器が正しく作動していない時は,オーナーに知らせる。

□□□25.オーナーの指示に従って必要な資材,備品を所定の位置に補充する。

□□□26.レジを離れる時は,オーナーに確認する。

□□□27 .常に身だしなみに注意する。

以上

王利彰(おう・としあき)

王利彰(おう・としあき)

昭和22年東京都生まれ。立教大学法学部卒業後、(株)レストラン西武(現・西洋フードシステム)を経て、日本マクドナルド入社。SV、米国駐在、機器開発、海外運営、事業開発の各統括責任者を経て独立。外食チェーン企業の指導のかたわら立教大学、女子栄養大学の非常勤講師も務めた。 有限会社 清晃(せいこう) 代表取締役

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