ここのところ夫ジョヴァンニが、フォカッチャ作りに凝っています。生地を捏ねるホームベーカリーが大活躍です。
フォカッチャというと日本ではイタリアのパンの代名詞のように思われているようですね。イタリア料理店でもパンの代わりにフォカッチャを出すところも多いですが、イタリアでのフォカッチャの立ち位置はちょっと違います。
まず、フォカッチャと一言で言っても地域性がとても強いこと。日本でよく見かける塩とローズマリーののったフォカッチャは北部リグーリア州のジェノヴァのもの。イタリア各地に、「フォカッチャといえばこれ」というその土地定番の味があります。
イタリア最大の小麦生産地であるプーリアには独自の粉物文化がありますが、州都バーリの名物でもあるのがフォカッチャ・バレーゼ。生のプチトマトが上にのっているのが特徴です。フォカッチャの材料である強力粉、塩、オリーヴオイルなどが古代から豊富に生産されているプーリアですから、美味しいのは当たり前。エキストラヴァージンオリーヴオイルをこれでもか、というくらいたっぷりと使います。
トマトの他にも玉ねぎ、ペペローニ(パプリカ)、カルチョッフィ(アーティチョーク)など様々な野菜をのせたものもよく見かけます。プーリアのフォカッチャのもう一つの代表格が、スプンツァーレと呼ばれる小型の長ネギとオリーヴの塩漬けのトマト煮を間に挟んだもの。ネギの甘みとオリーヴの塩け、トマトの酸味が抜群の相性です。プーリア料理では種類豊富な前菜が次々と並ぶスタイルが一般的ですが、その中の一品として必ず登場するのがフォカッチャです。
日本食に置き換えるとフォカッチャはお餅で、パンは白飯、という感じでしょうか。フォカッチャはそれ一品でも料理として成り立つし、スナック的に食べるものでもあります。一方パンは必ずおかずと共にテーブルにのります。パスタやリゾットと一緒にパンも食べるのは炭水化物の摂りすぎじゃないかと思いますが、パンがない食事はあり得ないという感じです。これはイタリア全土に共通する習慣のようです。
ただパンと一言で言ってもこれまた地域性があります。イタリア国内では名の通ったプーリアのデゥラム小麦のセモリナ粉(粗挽き)や茹でたじゃがいもを練り込んだパンはしっとりとして粉の味もしっかりと感じられ、上質のオリーヴオイルとパンだけあれば思わずニンマリとしてしまう美味しさです。最小でも500g、大きいものでは一つ4kgという大きさで薪窯で焼き上げるパンは硬くなりにくく1週間ぐらいは美味しく食べられるので、日本からの旅行客で大きなパンを持ち帰る方も珍しくありません。パンやフォカッチャをはじめタラッリ、フリッゼ、さらにプーリア独特の生パスタのオレキエッテなどプーリアの粉物に特化した専門店の需要は日本でもあるのでは?と考えています。