全国公開から遅れて佐賀市の映画館で「百姓の百の声」というドキュメンタリー映画を観てきました。
監督の柴田昌平さんはもとNHKのディレクターで、「千年の一滴 だし しょうゆ」という素晴らしい映画を撮った方です。
新作は、日本の農家を追ったもので、各地の名人と言われる農家が果てしない工夫と努力で作物を育てているところと、日本の農政が世界的にもズレているところを掘り下げています。機会があれば観て欲しいと思います。
さて、映画には出て来なかったのですが、農業界では異端児として、もしくはパイオニアとして注目されていた農業者が昨年亡くなりました。
山下惣一さん、農民作家として知られています。佐賀県唐津市で農業を営む傍ら、農の世界を筆で描き、69年「海鳴り」で第13回日本農民文学賞、79年「減反神社」「父の寧日」が第85回直木賞候補作にノミネートされています。
その山下惣一さんが西日本新聞の聞書きシリーズに連載されていたものがまとめられて出版されました。連載中も、面白く読んでいたのですが、まとめて読むと、一段と農業者が置かれてきた状況が大変だったか伝わってきます。
農業の専門家とは、日々田畑で汗を流す百姓ではなく、大学で研究したり、役所で制度を作る人達のことらしいとか。そこから降りて来た施策に振り回されたこととか。これからはミカンだと、コツコツと山を切りひらき数年がかりで収穫できるようになった途端に、柑橘類の輸入自由化となって、価格が暴落したとか、米の減反政策とか、上げればきりがないほど農政に振り回されています。
「百姓の百の声」の映画に出て来るお百姓さんも、国に制度に頼らず力強く田畑を耕していましたが、農民作家山下惣一さんも、楽しみながら汗をかき、作物を育ててきました。大規模な農業ではなく、小さな農家。単一生産ではなく、少量多品種。売上げや規模を追うことが正しいことではない。農業ではなく小農が世界の潮流である。と。
「振り返れば未来」
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「百姓の百の声」
「千年の一滴 だし しょうゆ」