地中海沿岸のケッパー

南イタリア美食便り

南イタリア料理でよく使われるケッパー(カッペリ)の収穫期が始まりました。

花の蕾を摘み取る作業は、摘み取った後からまた新しい蕾が生えてくるので夏の2、3ヶ月間続きます。

もっとも、我が家では自分の家で使う分と友人にお分けする分が採れればそこでおしまいです。あとは蕾が膨らみ可憐な花が咲くのを楽しみ、その後ケッパーベリーと呼ばれる実を採ります。実は軽く茹でて酢漬けにします。

毎年冬に一度剪定をすれば、その後は何も手をかけずとも蕾をたくさんつけてくれるケッパーですが、収穫は全て手摘みで強い日差しを避けるために早朝に行います。収穫後大きさを選別して塩漬けにし食べられるようになるまで最短でも1ヶ月。

結構な時間と手間がかかる食品です。

ケッパーは暑くて乾燥した地中海性気候地域の岩場を好んで生育する植物で、古代ギリシャ時代から食用されていたとのこと。イタリア料理のみならず沿岸各地の郷土料理として広く使われています。イタリアお得意のIGP(保護指定地域表示、すなわち地域特産品認証制度)に登録されているシチリアのパンテッレリア島産が有名で、日本をはじめ海外へ輸出されています。

日本ではスペイン産の酢漬けのものが一番入手しやすいようですが、イタリアでは塩漬けの方が一般的です。

プーリアでは家の庭や道路沿いの塀などに普通に生えている植物なので、我が家のように自家製の塩漬けを常備している家も少なくないと思いますが、朝市などで平積みされているものを買うという方がむしろ多数派だと思います。

売られている値段は1kg 5-10ユーロほど。蕾が小さい方が高価です。またブランド品だとこの2倍3倍のものもあります。イタリア産ではなく輸入品が大部分を占めるのではと推察します。

ケッパーはスモークサーモンのお供以外どんな料理に使われているかイメージがわかないという方も多いかと思いますが、調味料としては使い勝手の良い、むしろ一度馴染んだらなくてはならない食材だと思います。

私は梅干し、もしくは塩昆布などと同じような感覚で使っています。トマトもオリーヴオイルも出汁の役割をするものだと思っていますが、ケッパーも同様です。魚のホイル焼きや茹で豚などにも合うソースになります。

またこれからの季節、刻んだケッパーを鰹節と一緒に冷奴のトッピングにしてオリーヴオイルと少量のお醤油で是非一度召し上がってみてください。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

関連記事

メールマガジン会員募集

食のオンラインサロン

ランキング

  1. 1

    「ダンキンドーナツ撤退が意味するもの–何が原因だったのか、そこから何を学ぶべきか」(オフィス2020 AIM)

  2. 2

    マックのマニュアル 07

  3. 3

    マクドナルド 調理機器技術50年史<前編>

アーカイブ

食のオンラインサロン

TOP