オリーヴの収穫タイミング

南イタリア美食便り

今の時期プーリアでは、オリーヴの収穫のタイミングの話題で持ちきりです。オリーヴ栽培を生計としている農家だけではなく、ほとんどの地元民は先祖代々受け継がれた土地にオリーヴの木を何本も所有しているので、本業の仕事の合間に家族単位で収穫をおこないます。今年はいつが最適か、実の熟し加減と天候を予測して予定を立てるのです。そして収穫用の道具、電動熊手のモーターや、実を受け止めるネットの点検など準備をします。収穫したらすぐに搾油所へ持ち込み、なるべく早く、できればその日のうちにオイルにします。皆が同じ日に持ち込むとたてこんでしまうので、予約も欠かせません。一年間、美味しいエクストラヴァージンオイルを食べるための作業は大事な生活の一部になっています。
家庭によっては、自分達が食べる分のオイルを確保したら、それ以上は収穫せず自然に地面に落としてそれを集め精油所へ売るところもあります。その方が手はかかりませんが、労働力に見合う価格で買い上げてくれる訳ではない場合が多いので落ちたままになっているオリーヴの実を目にすることも最近は多くなってきている気がします。

今年は、我が家周辺では晩春に霜が降ったり、特に暑く乾いた夏が続いた後9月半ば急に雹が降った事もありました。ここ1週間ぐらいは毎日雨が降ったり止んだり。35℃超えの干ばつの夏だったことは大敵であるオリーヴミバエの発生を抑える要因としては良いことでもあります。収穫前に雨が降ることで実が大きくなるのでこれも悪くはありません。我が家の今年の収穫は低量だった去年と比べると良い年になりそうです。
Olive Oil Times(https://www.oliveoiltimes.com)という世界のオリーヴオイル情報を集めたネットマガジンによると今年はイタリア全土では昨年より20%ほど収穫量が多いだろうと予測されています。中部、北部は思わしくないが、南部の特にプーリアでは良い収穫が見込まれるとのことで、何よりです。

巨大な盆栽のように曲がりくねった樹齢数百年のオリーヴの古木の樹海を眺めていると、気候変動の波を乗り越えることもできるに違いないと思える穏やかな気分にも一瞬なりますが、それは根拠のない安心感でもあるのかもしれません。そんな時代に生きていることは事実です。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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