今、葉桜と八重桜が美しい東京ガーデンテラス紀尾井町に三月末に再オープンしたプーリア料理店「アンティキ・サポーリ 東京店」に行ってきました。コロナ禍の煽りを受け広尾の店を閉めてから約一年、多くのファンが待ち望んだ再出発です。
東京ガーデンテラス紀尾井町は開業5周年ということですが、中に入ったのは初めてでした。名前を聞いただけではどこ?と思っていましたが、元赤プリがあったところと聞けばピンときます。
今はアフタヌーンティーなども楽しめるレストランとして残っている旧館はイギリス風花壇に囲まれて華やかな雰囲気を醸し出しており、バブル時代の思い出が蘇ってきました。
「アンティキ・サポーリ」の本店はプーリアの州都バーリから車で1時間半ほど内陸へ向かったモンテグロッソという小さな村にあります。レストランのすぐ近くにある自家農園では家畜も育てていてまさに0kmの地産地消を貫く素材にとことんこだわった有名店です。
オーナーシェフのピエトロ・ヅィート氏はマーケティングにも長けていて、都会からわざわざこの店に来るためだけに訪れる常連客も後を断ちません。
その店の味を東京で再現するのは至難の技ではありますが、東京店の山崎大輔料理長はピエトロのフィロソフィーを受け継ぎ日本におけるプーリア料理の伝道師として日々奮闘しています。
再出発した「アンティキ・サポーリ東京店」の特筆すべきは同じ会社が経営する「イル バーカロ」というヴェネチア風居酒屋と併設されている点です。入口は一つでレセプションの右側へ進むとプーリア料理、左側へ進むとヴェネチア料理というユニークな構造になっています。
中世以降貿易で栄えた都市、ヴェネチアの立ち飲み居酒屋スタイルのカウンターもありヴェネチアではチケッティと呼ばれる小皿料理とオンブラと呼ばれるグラスワインを気軽に楽しむこともできます。
プーリアとヴェネチアが一緒に楽しめるのは唐突な感じがするかもしれませんが、実はアドリア海に面したこの二つの地域は古くから交易が盛んで、ヴェネチアはプーリア産ワインの一大消費地でした。
平野が多く太陽をたっぷり浴びたアルコール度の高いプーリアワインはヴェネチアの庶民にとって欠かせないものでした。
料理の面では新鮮な素材が豊富なプーリアと海外から輸入されたスパイスなども身近なヴェネチアでは違いがあります。
この両方を一つのキッチンから提供するというのはユニークなところ。ヴェネチア側は居酒屋流、プーリア側ではスローフード流の食事を楽しんでいただけるようになっています。
イタ飯と呼ばれていた頃よりよりオーセンティックでありながら、日本人に受け入れやすい多面性のあるイタリア食文化を堪能できるお店として新店舗で新たな顧客獲得を期待しています。