多拠点での活動

南イタリア美食便り

8月も残すところあと1日、今夜は珍しいスーパーブルームーン。プーリアは最高気温は28℃程。秋風とも感じられるよう爽やかな風が吹いています。この夏は2回ほど海水浴に行きましたが、多分今年ももうその機会もないでしょう。

私事ですが、10月から大分県佐伯市の地域おこし協力隊として着任することになりました。

かねてから「九州と南イタリアは似ている!」という自論のもと、相違点について考えてきましたが、今までプーリアの田舎町での生活や食文化について学んできたことを日本の地方再生のために役立てることができたらと考えています。

プーリアはここ数年、ブームと言っても良いほど観光業が盛んになってきています。

特に我が家周辺のイトリアの谷地域では目に見えて宿泊施設が増えています。そのほとんどが個人経営の小規模なブティックホテル的なものだったり、B&B、貸別荘です。長期滞在できるところがなければ、来訪者が増えても、地元の経済への貢献は限られています。

美しい海に囲まれて豊かな田園風景や食文化が最大の魅力のプーリアですが、今後の課題は、夏季だけではなく年間を通じて宿泊施設の稼働率を保つことでしょう。そのためには文化的なイベントや参加型のアクティビティなど内容の濃い独自性のある、言わばソフト面の充実が欠かせないと考えています。

そして一つの自治体だけではなく周辺の市町村との連携が相乗効果を生むという点も見逃せません。来訪者目線で見ると行政区域の境目など関係なく、移動距離が少ない範囲で色々な楽しみ方ができた方が便利です。名所旧跡を周る旅ではなく、のんびりと自然や美味しい食べ物を堪能する旅、そして第二の故郷と思って何度でも再訪したくなる旅、それがプーリア観光の一つの理想的な形で、それが昨今の繁栄の理由だと考えます。

もちろん州の観光局は存在を知らしめるためにSNSなどを使ったり、都市部で大規模なキャンペーンを行なったり、個人客へ直接アピールするために露出を増やす活動も積極的に行なってきました。多くのファッションやエンターテイメント業界のセレブに注目されてきたことも偶然ではないと言えるでしょう。

イトリアの谷を囲む5つの自治体(チステルニーノ、ロコロトンド、マルティナフランカ、チェリエメサピカ、オストゥーニ)を合わせても10万程度の人口で、世界遺産などもなく、ビーチがある訳でもないこの地域がプーリア観光の中心地となっている理由と将来的な継続策を見つめつつ、大分県佐伯市にとって何か参考になることが提案できれば面白いことになるかも知れません。

10月以降、夫ジョヴァンニと時に一緒に時には別々に、大分とプーリア、そして東京、ロンドンを行き来しつつの多拠点での活動を目指します。そこで見聞きしたこと、感じたことを共有させていただきたいと考えておりますので、どうぞお付き合いいただければ有り難く存じます。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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