ここ数日、春の嵐とも感じる激しい雨風と雲ひとつない晴天が気まぐれにやってくる天候不安定な日が続いているプーリアです。暖炉に火を入れるのは後どのくらいだろうと随分と小さくなった薪の山をみています。当地では一年おきに剪定されるオリーヴの枝が硬く火持ちの良い薪になります。搾油した後の種も圧縮されてペレットになります。プーリアにとってオリーヴは本当にかけがえのない恵みです。
週一でたつメルカート(ストリートマーケット)では、オレンジ色や黄色の鮮やかな柑橘類の山々が並んでいます。大体1kg2〜2.5ユーロぐらいがメルカートでの相場です。ミカン類では10月ごろにで始める早生のミヤガワという緑色のタイプのものから始まりマンダリン種、クレメンタイン種と季節を追うごとに出回る種類が変わってきます。オレンジ類ではネーブル系とブラッドオレンジ系がメインです。日本でもシチリア産タロッコ種のルビー色のブラッドオレンジのジュースはよく知られていますね。イタリア人もオレンジジュースはよく飲みますが、この季節はバールなどでも手軽にその場でオレンジを絞った生ジュースを出してくれます。その場合、スプレムータ(生搾り)と呼ばれ、瓶などに入った既製品(スッコ=ジュースの意)とは区別されます。
日本でも柑橘類は種類が豊富ですが、イタリア特産の柑橘類で有名なのはキノット、ベルガモット、そしてチェードロです。キノットというのは北部リグーリア州、イタリアンリヴィエラと呼ばれる海沿いの地方が有名産地であるオレンジ類で実は苦くて生食向きではありませんが、ドクターペッパーを思い出させる昔ながらの清涼飲料に使われています。ベルガモットの有名な産地は南部カラブリア州。こちらも独特の香りが特徴でアールグレー紅茶や香水の原料として使われます。我が家の柑橘類コレクションにこの3種類の木も含まれていますが、生の皮を少し爪で傷つけると立ち昇る香りは驚くほど強く、紅茶やカクテルなどにごくわずか加えて楽しんでいます。チェードロはナポリ地方が特産の大型のレモンです。実のジューシーな部分は酸っぱくて小さく、黄色い外皮と実の間の白い部分が厚いという特徴があります。主に食べるのはこの白い部分で苦味は全くなくほのかな甘さと軽い食感が食後にぴったりのさっぱり爽やかな後味です。日本でも熊本の晩白柚はこの白い部分随分厚いですが、食感が全く違います。砂糖漬けや清涼飲料など加工品としてお土産になるぐらい珍しい種類のレモンでナポリ地方以外では生での流通はほとんどありません。日本でこだわりのナポリピッツァを出す店などはもし生のチェードロが手に入るとしたら喉から手が出るほど欲しがるに違いありません。