南イタリア プーリア便り- フェロヴィア

南イタリア美食便り

今日のプーリアは朝7時の気温が16℃、最高気温24℃です。イタリア全土がイエローゾーンになり映画館や劇場が50%のキャパシティで営業可能となり、レストランも屋外のテーブルでのサービスが許可されるようになりました。イタリア全土での1日の新規陽性者は3200名、プーリアでは320名ほどです。6月1日からはさらに規制が緩む事が見込まれており、プーリアでは昨年同様夏は何事もなかったようにヴァカンス客で溢れる事になるでしょう。ちなみに現在のイタリアのワクチン接種率は17%ほどです。夏の間もワクチン接種が続いて接種率が上がれば昨年のように10月以降新規陽性者が増えるということはなくなるのでしょうか?まだまだ先が読めません。早く日本からも自由に行き来ができるようになることを願っています。

さて、我が家の庭では鳥たちと熟したさくらんぼの争奪戦が行われています。熟した実は雨にも弱いためベストのタイミングで収穫するにはお天気との相談もあります。プーリアはイタリア第一位のさくらんぼ生産地で年間52,000トン、全体の36%ほどの収穫量があります。プーリアの中でも我が家から40Kmほど北のバーリ県コンヴェルサーノ、トゥーリ一帯が有名な産地です。主力はフェロヴィア(鉄道)という名のプーリア特産の品種で、鮮やかなルビー色の肉厚な実、酸味と甘味のバランスが良いのが特徴です。日本でアメリカンチェリーと呼ばれるものに近いと思います。

我が家では4年前に接木をした早生種のさくらんぼが今年初めて実をつけました。6月半ばまでサワーチェリーを含め6種類ほどの品種が順番に熟していきます。イタリアでは珍しい日本産のさくらんぼにも似た黄色がかったタイプの繊細な味のものもあります。収穫しながらまた食後のデザートとして生で飽きるほど食べたらあとは、シロップ漬け、ジャム、リキュール作りです。
日本では”一粒おいくら?”という感じの高級フルーツであるさくらんぼですが、その繊細なお味や形の美しさは贅沢品としてそれなりの価値があると言えるでしょう。プーリアでは果物は毎日の食生活の一部であり、欠かすことのできないものでもあります。プーリア郷土料理には伝統的に果物加工品や手の込んだお菓子などが少ないのも生の果物がどの季節にも豊富にあるため、それで満足できているからなのではないかと思うくらいです。

農産物のマーケティングの観点から見ても豊富にあるが故に付加価値を付けにくいということも言えるのかも知れません。イタリア国内でも北部ではさくらんぼも原産地名称保護制度(DOP)などを導入して付加価値を上げている町、地域がいくつもあります。EU圏外輸出にはそのような格付けが功を奏すると考えられます。生産量の多いプーリアではそのような取り組みが遅れていますが、それは危機感が薄いことの証拠とも言えるし、あえてブランドにこだわることなく生き延びていく力強さというか図太さがあると言えるのかも知れません。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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