南イタリア プーリア便り- バカンス

南イタリア美食便り

8月15日は聖母マリア被昇天の祭日、イタリアでも夏休みのピークです。日本のお盆休み同様、この前後が一年で人々の移動が最も多い時期の一つです。都会生活者が故郷に帰るだけでなくバカンスで移動する人々も多いので、海に囲まれたヨーロッパ有数の夏の観光地、我がプーリアも通常の人口の数倍の来訪者で溢れかえります。コロナ禍2年目の今年も例年以上の賑わいを見せています。音楽などの野外イベントは縮小ヴァージョンですが行われていますし、レストランなどもフルに営業しています。ホテル、B&B、貸別荘などは満室状態です。ヨーロッパでは元々、店舗の営業やロックダウンに関して「自粛」ではなく「禁止」だったので、そのたがが外れるとまさに反動とも言える勢いで人々は夏を楽しんでいます。ワクチン接種も進んでいるのでむしろマスクをしている人の方が少数派と言えるような状態です。大きなホテルが何軒も連なる大型観光地ではなく、むしろ独立点在する宿泊施設の多い当地では、他の観光客と適当な距離感を保ちながら自然を楽しむことができるので、コロナ禍が終わっていない現状では最適なバカンス地と考える人が多いという事でもあるのでしょう。

バカンスについて言えば、ヨーロッパ内の移動は例え1000km近い移動距離だとしても(プーリアからミラノまでぐらい)自家用車を運転して来る人々が多いというのは日本的な感覚ではちょっと驚きかも知れません。それにはバカンスの日数が長いこととバカンスの過ごし方にも理由があると思います。日数は2週間が一般的。1週間づつ2度取る人も多い
です。そして過ごし方は観光スポット巡りというより一ヶ所に長期滞在して毎日のようにビーチでまったりするというケースが多いです。当地に何の縁もゆかりもないヨーロッパ北部の都市在住者がこの地を気に入り別荘を購入して毎年夏はプーリアで過ごすというケースも少なくありません。

我が家のあるヴァッレディートリア地区は、適度に田舎で適度に便利、元々お節介気味でホスピタリティ心の厚い人々が、観光地ズレすることもなく、自分たちも楽しみながら仕事をしている感があると私は感じています。大きな産業もなくむしろ地味めの観光地でありながら、人口が増えてこそなく、でも大きく減ることもない横ばい状態でこの40年間ほどバランスを保っているという事実の鍵が、ここにあるのではないかと思うのです。人口減少に悩む日本の地方町村にとって何かヒントになることがあるのではないでしょうか。

コロナ禍によって顕著になった働き方や休暇の取り方についての価値観の変化。私はこれをチャンスと考えています。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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