佐伯市観光協会の臨時総会で講演をさせていただきました。
イタリアと日本、九州と南イタリア、そして九州を縦割りにした大分県と宮崎県の全域と熊本県、鹿児島県、福岡県の一部を含む東九州とプーリア州のスケール感と地理的特徴の類似点からどのような問題共有ができるのか、特にルーラルツーリズムの観点からプーリアで起こっていることを紹介しながら、東九州の佐伯市で今後私が実現したいきたいことなどのお話をしました。
特に参加者の方々の印象に残った点の一つは、我が家のあるプーリア中央部のヴァレディートリア地区でもプーリア州全体でも、この30年間以上人口が横ばい状態で大きな減少はみられないということのようでした。
人口が減少していない理由は、B&Bや貸別荘、そして食文化に焦点がなるアグリツーリズモ、アドヴェンチャーツーリズムの面ではサイクリングなど観光に関連する仕事が増えている事と、リタイア後のUターン人口が多い事が挙げられると考えます。
観光客の増加で地元民は言うに及ばず大学などで外へ出た若者もリタイア後の元気な高齢者も仕事があるのです。全国的な人口問題としては高齢化少子化という日本と共通の課題を抱えてはいますが、もともと日本の半分ほどの人口しかないイタリアでは、右肩下がりの人口減少にはなっていないのです。
プーリアは見どころややることはたくさんありますが、ローマやフィレンツェ、ヴェネチアなどのように世界的に有名な遺跡や文化遺産がたくさんある観光地ではありません。
強いて言えば、豊かな自然と農民文化、それが育んだおおらかな人間性が魅力です。
アグリツーリズムや農泊が推進するルーラルツーリズムが成功するために必要な歴史と環境が整っているとも言えるのです。それが都市生活者の癒しとなり「第二の故郷」として何度も訪れる観光地となっています。
その成功の理由の一つとして、スローフード運動そして、そこから派生したスローライフ、スローシティという考え方や運動の機運が、それらが失われる直前のタイミングで、まだまだオーセンティックな形で一昔前の生活が実践されていた頃に上がったことによってスムーズに観光資源化できたということもあるかと思います。
要は、プーリアではまだまだ週末は家族親戚がたくさん集まって食事をし、女性陣は朝から手打ちパスタを打ち、自家製のサラミやチーズ、保存食の野菜などがテーブルにのぼり地元産のワインや食後酒を傾けながら何時間もおしゃべりをするといったライフスタイルが残っていたということです。
そんな地元に人々の日常が観光客には非日常であることに気がついたことが大きな転機になったのです。ただそれを観光客用に簡略化し過ぎず、わかりやすくし過ぎずに、昔ながらのやり方にこだわるところはこだわるというのが、ポイントなのかも知れないと思います。
人と人との関わりの中で一過性の売り手と買い手という単純な関係性ではなく個人と個人の相互尊重した間柄であるからこそ「第二の故郷」になり得るのかと思います。