異物混入が起きた際の対応と再発防止策

食の宝庫九州から

丸亀製麺の、この夏一押しの新商品、「丸亀シェイクうどん」。テレビCMも大々的に打って3日で20万食売上げて人気が上がりそうというところに水を差す事件が起きてしまいました。

諫早店で販売した「ピリ辛坦々サラダうどん」の中に生きた蛙が入っていたとお客様からのクレームが入って、販売停止になったのです。

「丸亀シェイクうどん」プレスリリース

https://pdf.irpocket.com/C3397/CaoZ/pGwF/GowP.pdf

5月19日に発売開始、5月21日に事案発生です。

丸亀製麺HPより 「お詫びとお知らせ」

https://files.microcms-assets.io/assets/58eb40d284924aeb96de2de93fa08d93/c008211303b748b88ee9dcc3a3c4695b/20230523.pdf

当面の間、販売停止となりました。「第二報」

https://files.microcms-assets.io/assets/58eb40d284924aeb96de2de93fa08d93/b7183d840af744ef8ab8660805cae79c/20230525.pdf

シェイクうどんは、深いプラカッブに、うどんひと玉と、スープ、トッピングが乗っています。トッピングは5種類。その中のサラダに坦々肉みそが乗った製品で起きたようです。

この事案は、いかにも現代風の動きを見せましたね。

以前であれば、店舗か運営本部に電話が入って、お客様担当者が駆けつけて、お詫びと商品取り換えで済んでいたかもしれません。保健所に申し出ても、それほど大きな事件にはなっていなかったでしょう。

マスコミとしても、死者やケガ人が出ておらず事件性が低いと取り上げていなかったと思います。

ところが、現在は、速攻でSNSにアップされ、拡散されてしまいます。ビジュアルがインパクトがあったので、一気に広がりました。みんなが面白がったのです。一度、この手の映像が流れると投稿者の手を離れて拡散し続けます。保健所も動かざるを得なくなります。

中には、クレーマーの自作自演ではないかと逆切れする投稿もありました。一時期世間を騒がせたバイトテロの延長ではないかと店を擁護する意見も出てきたのです。

残念ながら、本当に、野菜サラダに入っていた蛙だったと判明し、丸亀製麺は、会社として対応せざるを得なくなりました。

世間が騒ぐとニュースにもなり、業界1の丸亀製麺の事案ですから、トップ扱いになってしまいます。

そして、「お詫びとお知らせ」がホームページに掲載されます。

HACCPの考え方の基本では、危害要因は起こりやすさと重篤性で測ります。

この事案は、どうでしょうか。リリース通りでいけば、20万食出て1食。しかも口に入れていない、怪我も腹痛もありません。

事件とするには、あまりに弱いものです。再発性も低いと考えて良い。

販売中止の必要性は無いと判断しても良いくらいなのです。

この事件に当たったお客様は、もう二度と丸亀製麺には行かない。かもしれませんが。

他のお客様に、同様の事案が起きるかとなると、確率は低いと思います。店の管理もしっかりするでしょうからね。

ところが、丸亀製麺の対応は違いました。ここがやはり日本的だなと感じるところです。

『日頃ご利用いただいておりますお客様のお気持ちを最優先し、当該サラダミックスを使用する以下商品の販売を当面の間、中止させていただくことを決定いたしました。』

「お客様のお気持ちを最優先」

いかにもなコメントです。少数の声の大きい人たちのことを気にしすぎて、科学的な対応が出来ていません。

蛙の混入の原因は、リリースによると野菜は、サラダミックスとして、下請けの工場で洗浄、カット、袋詰めして店舗に運ばれたもので、その中に異物として混入していたとのこと。

つまり、下請け工場に問題があり、そこを総点検して、再発防止策とするようです。

はたして、これで再発防止策になるでしょうか?

製品の形状を見てください。

プラカップにうどんを詰め、スープを入れ、具材をトッピングして、封をしています。

具材をトッピングしたのは、店舗です。下請け工場で、カップに詰めて封をしたものであれば、工場の責任ですが、カップに詰めたのは、店舗です。そこでの確認作業が抜けていますね。取引先の検品の強化だけでは足りません。責任を取引先に押し付けたとしか読み取れません。

現状のサラダミックスの洗浄殺菌されたものであれば、店舗において再洗浄は不要です。開封後の冷蔵保管と使用期限を守れば良いでしょう。

でも、内容物については、詰めながら確認することは可能であるはず。いや、やらなければならないでしょう。

会社として、異物とは何か決めておくことです。健康被害の出る物はダメです、ただし飲み込んでも排泄されるサイズのものは、異物としなくても良いのです。

もちろん商品について、不快な感情を持たれた方には真摯に向き合って対応する必要はあります。

おそらく、この事案以降、サステナブルに移行しなければならない時代であっても、相当数の仕掛品が廃棄されてしまったと思われます。

本当に注意しなければならない危害要因を事前に予測して取り除くHACCPの仕組みを導入してお客様の安全を担保することが肝心です。

上田 和久

上田 和久

スタジオワーク合同会社 代表。熊本県生まれ。厨房設備施工会社、電機メーカーで冷蔵設備の設計施工営業を担当後、食品メーカーへ転職し、品質保証の仕事を経て、2016年1月コンサルタントとして独立。安全安心な食品を提供することに日々、注力する企業に対して、HACCPに基づいた衛生管理の取り組みを支援している。 JHTCリードインストラクター

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