食品の味を守るということ

南イタリア美食便り

4月6日はイタリアのパスタメーカー協会が定めた国際カルボナーラ・デー! カルボナーラは世界中で愛されている代表的なイタリア料理の一品。日本人も大好きですよね。それだけに色々にアレンジされて〇〇風カルボナーラという名前も多く存在します。

イタリア人大半の意見としては、この料理の起源については諸説あるものの、正式なレシピはこれ!という定義ははっきりするべきと思っているようです。ちなみに伝統的な材料は、スパゲッティ、卵、グアンチャーレ(豚頬肉のベーコン)、ペコリーノ・ロマーノチーズ(ローマ地方の羊乳チーズ)、胡椒、以上。

イタリア全土で大きな影響力を持つ農業生産者団体、コルディレッティ(Coldiretti)も独自の調査でイタリア国外でカルボナーラと呼ばれている料理の76%は偽物だと発表しました。

ペコリーノ・ロマーノの代わりに牛乳のチーズを使っているとか、バターや生クリームが入っているとか、グアンチャーレの代わりにパンチェッタ(腹肉)のベーコンを使っているというだけで、偽物呼ばわりとは人聞き悪いし、大袈裟だと思うのですが、これもイタリア国産農業製品の保護とブランドイメージのPRのためであります。

実際、例えば一般的によく知られているパルメザンチーズとその元々の由来となっているパルメジャーノ・レッジャーノチーズと比べてみると似て非なるものであることは明らか。

本来の味、工業製品的に作られたものではない食品の味を守るということは大切なことだと思います。そのために生産者団体がメディアを通して声を上げることは有効です。

一方、日本食ブームが一般消費者にも浸透してきているイタリアで、スーパーマーケットでも日本食っぽい商品が増えています。

「あれっ、何これ?」と思ったのはわさび味のいりごま。珍しいというか、聞いたことないと思ってよく見ると台湾のメーカーが製造流通している「日本食っぽい」ブランドでした。同じブランドが出しているピーナッツ餡入り餅というのも興味をそそられます。

イタリアのパスタメーカーがインスタントヤキソバを出している時代、RAIイタリア国営放送のお昼のバラエティ番組の料理コーナーでYakiudonがフュージョン料理として紹介されていましたが、「ちょっと違うんですけど。。。」という内容のものでモヤモヤ感が一杯になりました。

日本の食品メーカー、農業水産生産者、飲食関係などの業界団体の皆様、そして政府関係の皆様、イタリア人のように挑発するくらいの勢いで和食を世界にアピールしていただけませんか?

国民性の違いはよく理解しておりますが、イタリアでは今がチャンス、そろそろ戦略を見直して欲しいと切に願います。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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