ジンファンデールとプリミティーヴォ

南イタリア美食便り

プーリア南部で今年のワイン用ブドウの収穫が最盛期を迎えております。全般的に今年は夏の間に雨が少なかったため実は小さく量的には少なめとのことですが、その分糖度が高いとのことです。

プーリアには平地やなだらかな丘陵地帯が多く南北に長い州土の各地でブドウの栽培が行われていますが、日本で一番有名なのは主にマンドゥーリアという町の周辺で生産されるプリミティーヴォという品種です。

その名の通り赤ワイン用のブドウとしては初めに収穫期を迎えるのがプリミティーヴォ。小さめの身がぎっしりと詰まったように房になっています。皮の色は黒に近い濃い紫色です。

アメリカはカリフォルニアでとてもポピュラーなジンファンデールと呼ばれている品種の原種がプリミティーヴォだと言われて私はそれを信じてきましたが、DNA鑑定でジンファンデールとプリミティーヴォは同一品種と認定され同意語として品種登録されているとのこと。

すなわち、プリミティーヴォ = ジンファンデール なのです。90年代アメリカで生活していた時からジンファンデールを通してすでにプーリアと親しい関係性を築いていたんだなと再確認した次第です。

数年前からプーリア産のワインにジンファンデールという名称が使われているのを見てどういうことなのだろうと思っておりましたが、さらにカリフォルニアから持ってきたジンファンデールを接木してプーリア産のカリフォルニア・ジンファンデールという名称をラベルに記載しているワインまで出てきています。

私個人的にはマーケティングの方向性で迷走しているのかなとも感じます。ジンファンデールとプリミティーヴォ、日本ではどちらの方が認知度が高いでしょうか?

そもそもプリミティーヴォがアメリアへ渡って何故ジンファンデールと呼ばれるようになったのか?ちょっと調べてみたら、プリミティーヴォが先かジンファンデールが先かという話ではないことがわかりました。

このブドウ品種の原産地はクロアチアとのこと。現地での名前はTribidragまたはCrljenak Kastelanski (正しい読み方不明)だそうです。いずれにしてもイタリアへ渡ったのは18世紀、当時クロアチアを統治していたオーストリア経由でアメリカに渡ったのは19世紀とのこと。いにしえの昔というほどでもありません。

アドリア海の向こう側のクロアチア産のワインに俄然興味が湧いてきました。イタリアではワインの消費量は年々減っていますが日本のワイン市場は拡大しているといいます。日本でもこの品種が生産されるようになればいいのにとも思っています。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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