そら豆とスポルキア

南イタリア美食便り

そら豆が美味しい季節になりました。今年は例年より少し早めでしょうか。

プーリア人はそら豆が大好き。日本で多く出回っているそら豆とは種類が違い、実も鞘も小さく柔らかいです。エグ味なども少ない品種です。

とは言え美味しく食べるには新鮮さが何よりも大事です。畑からすぐに食卓へ、食べる分だけ収穫するのが一番。まさに季節を味わう贅沢です。熟成されたカチョカヴァロやペコリーノチーズの塩味や旨味と生のそら豆の青臭さと甘みの相性はバッチリです。

そら豆と切っても切れない植物にスポルキア(sporchia)と呼ばれるちょっと見はホワイトアスパラガスのようなものがあります。これはそら豆から栄養素を吸って成長する寄生植物です。

地中海沿岸地域原産で、学名はオロバンケ(Orobanche)。200種以上あるとのこと。その中でもそら豆に寄生するものがプーリア方言でスポルキアと呼ばれています。我が家の畑では毎年そら豆を植える場所を替えていますが、スポルキアはそら豆があるところにしか育ちません。

長い間の耕作で至る所の土の中に眠っているスポルキアの種がそら豆が近くに植わったことによって発育してくるのでしょうか?その辺はよくわかりません。

日本名はハマウツボ属、豆類に寄生するヤセウツボと呼ばれるものが近種のようです。外来種被害防止法に指定されており見つけたら駆除するように薦められています。

wikipediaによると日本で初めて発見されたのは1937年ということなので比較的新しい帰化植物ですね。日本でもそら豆畑には生えてくるのでしょうか?そら豆農家さんは駆除に苦労なさっているのでしょうか?伺ってみたいものです。

厄介者として扱われているヤセウツボですが、驚くことに抽出物質にアルツハイマー病に効果があるという研究結果を2018年筑波大学研究グループが発表しています。もしかしてこれから注目される植物になるかも?

日本のヤセウツボは食用として扱われてはいませんが、実はこのスポルキア、なかなか美味なのです。我が家では柔らかい穂先の部分を塩茹でにしてワインビネガーとオリーヴオイルで調味します。

ネットで検索するとグラタンや卵焼きなどレシピも数々でてきます。広く流通するものではありませんが、農家が多い地域では朝市や八百屋にも並びます。むしろこの数年伝統的郷土料理が栄養価などの面でも再評価されることによって再び注目されるようになったと言っても良いでしょう。

お味は独特の甘さと苦味があり、少しウドのような泥臭さとミネラル感があります。鉄分、カルシウムなどを多く含み利尿作用もあります。季節を感じる味が私は好きで毎年楽しみにしています。とは言えあくまでも寄生植物でメインのそら豆に悪影響が出るのは困ります。共存のバランスはデリケートで難しいものですね。

ハマウツボ、ヤセウツボに関する記述

https://ja.wikipedia.org/wiki/ハマウツボ属
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヤセウツボ
https://botanica-media.jp/1234
大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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