旅行と物流のサークル

南イタリア美食便り

かねがね南イタリアと九州の相違点と類似点について興味があります。

感覚的に似てるなぁと思うところが多いからなのですが、今ベネチアから遊びに来ている若い人類学研究者の友人と世間話をしているうちにどうしても自分の興味のある話題に繋がっていってしまい彼女の研究方法などが私の南イタリアと九州の比較研究の仮説の解明にどう役立つだろうかと考えてしまいます。

私は学者ではないのでちょっと大袈裟ですね。(笑)

彼女は我が家を含め当地周辺の自給自足の近い生活に感激してくれていて、特に採りたての野菜や果物、自家製のオリーヴオイルの美味しさが感動的だと言ってくれています。

日本ではネットの産直、お取り寄せが盛んだという話からイタリアではどうかという話になると彼女自身も含め彼女の周辺では食品に関してはネット通販は使ったことがないとのこと。

我が家ではイタリア産のジャポニカ米とたまに醤油などは和食材専門輸入業者のサイトから購入しているけれどそれ以外は全く必要を感じない生活です。とはいえ、イタリアの食料品のネット通販事情はどうなっているのか、少し調べて見ました。

加工食品一般と生鮮青果、魚介、食肉など専門店のオンラインショップはたくさん出てきます。またプーリアの特産食品など地域括りのショップもありますが、品数が少ないことと生鮮品がありません。どれも生産者独自の運営ではなくマーケティング会社が主導している印象です。

アマゾンは生鮮品の取扱はゼロでした。日本の「食べチョク」や「BASE」に似たサービスは見当たりません。これは何故なのか。一言で言えば国民性の違いですが、宅配ネットワークの信頼性と食べ物へのこだわりや郷土性の強さが関係していると思います。

イタリアでは以前よりも改善されてきたとは言え、流通網が脆弱です。システムというより末端の配達員の個人的な質の問題もあります。また食べ物に関して保守的なイタリア人は、珍しいもの、食べたことのないものより、食べ慣れたものを自分の目で確かめて買いたいという心理が強いのではと思います。

また、家族経営の小規模生産者をまとめてマーケティングや決済まで管理する作業についても個人の自己主張が激しいイタリアでは日本と同じようにはいかないだろうなということも想像できます。

私は九州の生産者さんの傾向を見るために食べチョクやBASEをチェックしたりするのですが、楽天市場などには大々的に県が委託して特産物を販売するサイトなどもありますね。実際どのぐらいの収益が上がっているのか知りたいものです。

ベネチアの友人は我が家のオリーヴオイルをご購入。10歳のお嬢さんはバカンスは毎年我が家に来たいと嬉しいことを言ってくれました。我が家で食べたものが思い出と一緒に自分の家でも食べられ、それを食べるとプーリアを思い出すといった旅行と物流のサークルを実感します。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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