そこに行かなければ得られない食体験

南イタリア美食便り

イタリアは、大陸とつながる北部以外の大部分が海に囲まれた半島の国です。島国に近いイメージだと思います。

細長い国土の地形的な条件も似ていることから私の中では日本とイタリアを相対的に見るクセがついています。常々「九州は日本の南イタリアだ」と感じることが多く、特にここ数年ご縁のある東九州とプーリアを重ね合わせてみると面白い発見があります。

瀬戸内海が「日本の地中海」と呼ばれることはよくありますが、私的には東九州沿岸も大分県までは瀬戸内海の一部とみることができるのではと思っています。

大分県でもお魚の美味しさには定評がある佐伯市で、プーリアの食材と佐伯の食材を使ったプーリア家庭料理のランチ会を開催しました。

プーリアからは我が家のオリーヴオイル、トマトソース、長唐辛子とケッパーのペースト、乾燥そら豆、オレキエッテパスタ、カチョリコッタチーズなど佐伯では手に入らないプーリア特有の手作り食材を用意しました。

佐伯では地元の道の駅やスーパーから佐伯の代表的な特産品であるブリ、無農薬マリンレモン、地卵、大分産牛乳、アスパラガス、スイスチャード、ブロッコリを入手。写真の前菜5品とパスタ2品、デザートというメニューでした。

ブリはイタリアでは見かけない魚。地中海にはいないようです。特産の無農薬マリンレモンのピールと果汁、佐伯の海の塩で軽く和えてカルパッチョにしました。オリーヴオイルは最後に少しずつご自分でかけていただいて味の変化を感じていただきたいと思いました。

地元ではちょっと甘めのお醤油で分厚い切り身を召し上がることに慣れている方々には新しい味覚だったようです。私は逆にお刺身の一切れの厚さに驚きましたが、カルパッチョでは薄く切ることがポイントです。

また、生魚をオリーヴオイルとレモンで食べると言うことも決して一般的ではないとのこと。今回初めてその美味しさに気づいたと言ってくださった方もいらっしゃいました。

ここ数年で味覚が超保守的な南イタリアの小さな町のスーパーにも日本の大手メーカーの醤油やポン酢が並ぶようになりました。イタリアの大手パスタメーカー製のインスタントYAKISOBAもあります。イタリア人の味覚も社会の変化とともに変わってきていると言う事でしょう。

一方、日本全国で大手メーカーのものであれば、オリーヴオイルはどこへ行っても入手可能となって久しいし、スパゲッティは日本の家庭の定番メニューになっています。

世界中どこでも平均値的な美味しさ、「・・・のようなもの」を作る事は容易になりました。

それは食生活のヴァラエティが広がった証拠で良い事だと思います。でも驚くほど美味しいものはそう簡単には出会えません。どこでも手に入る食材で作ってみても同じ美味しさにはならないのです。また流通に適したように改良された製品では代わりにはならない美味しさというものがあります。

「そこに行かなければ得られない食体験」。プーリアと日本の架け橋として活動する私たちが関われるそれは何かと言うことを探求し続けています。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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