「リーゾRiso(米)パターテpatate(じゃがいも)、 エe コッツェCozze (ムール貝)」というプーリアの郷土料理があります。イタリア料理ではよくある主役の材料名がそのまま料理名になっているケースです。ちなみに日本人が大好きなパスタ、「ペペロンチーノ」はイタリアでは「アーリオ(ニンニク)、オリオ(オイル)、エ(&)、ペペロンチーノ(唐辛子」と呼ばれているものが省略されて「ペペロンチーノ」と呼ばれるようになっています。
「リーゾパタテエコッツェ」は別名「ティエッラ バレーゼ Tiella Barese」とも呼ばれています。バレーゼとは「プーリアの州都バーリ風の」という意味で、ティエッラと呼ばれるテラコッタの土鍋で作るところからその名がついています。
この料理、言わばプーリア風ムール貝とじゃがいもの釜飯。シンプルな美味しさが癖になります。ユニークなのはプーリアで唯一お米を使う料理であるところ。川のないプーリアでは稲作は行われていないのに産地でもない米を使う料理が郷土料理として伝わっているのは何故か。それはスペインのアラゴン家がプーリアを含む南イタリア全体を統治していた15世紀に遡るのではないかと思っています。スペイン料理の代表格、パエリアのプーリア版のような気もするのです。
パエリアと比べると材料も少ないですし、サフランのような高級食材も使いません。テラコッタの土鍋でオーブン焼きにする作り方もパエリアに比べて簡単です。アラゴン王に使えるスペイン人が故郷に思いを馳せながらプーリアで作った米料理が元になっているのではと、勝手に想像しています。
メインの食材であるムール貝、ワイン蒸しにしてベルギーやフランスでよく食べるイメージかと思います。イタリアでももちろん食べます。プーリアでは養殖も盛んで貝類の中では一番身近なです。生で食べる人もいます。ターラント湾の真水が海底から湧き出ている地帯で作られるムール貝が一番美味しいと言われていて、身がしまって味が濃いのが特徴です。
今まで日本のレストランなどではヨーロッパや南米からの輸入品が使われてきましたが、国内で養殖もされるようになってきました。ビタミン、ミネラルが豊富でしっかりとした出汁が出ます。蛤やアサリと比べると野性味ある味でこの料理ではじゃがいもや米によく染み込んでビールや白ワインとの相性はバッチリの夏の料理と言えます。私のプーリア家庭料理のリモートお料理教室「美奈子のおしゃべりキッチン」でも先日作ったところ「今まで食べたことのないお味。簡単でとても美味しかった」という感想をいだたき嬉しく思っています。ムール貝は普通のスーパーなどではあまり見かけない食材ではありますが、最近店舗数が増えている業務スーパーでチリ産の冷凍のものがお手頃価格でありました。
ムール貝、日本でももっとポピュラーになってもいい食材の一つではと思います。日本産の養殖ムール貝はどんなお味なのか是非一度食べて見たいです。