kitachi ROSSO

南イタリア美食便り

プーリアの我が家の畑では、トマトの実はまだ緑色で硬いですが、例年7月中に作る一年分のトマトソース作りに向けて順調に育っています。南イタリア料理といえばトマトソース味が基本と言って過言ではありません。一般的な家庭では和食にとっての味噌ぐらいの感覚でトマトソースが消費されています。我が家では1年分で750mlのガラス瓶に50本ぐらいの量を使います。

今では手作りをする人は少なくなってきましたが、我が家では親戚と一緒に家族揃って2日間ぐらいかけて、この風物詩と言える食文化伝承イベントに取り組みます。

南イタリアではトマトに関するこだわりは色々とあります。例えば、サラダとして生食する時には完熟手前のまだ硬さが残るものを選ぶとか、日本でも知名度が高いサンマルツァーノ種のような果肉部分が多い品種は加熱用で生食はしないとか。

イタリア政府農水省の伝統農産物認定やスローフード認定も受けているレジーナ種のトマトは、アドリア海沿岸の灌漑水に海水成分を多く含む地域で生産されています。ヘタの部分が王冠の形をしていることからレジーナ(女王)の名がついたと言われていますが、このヘタの部分を絹糸で結んで房状に繋げたものを風通りの良い天井の梁にぶら下げる保存方法では夏に収穫したものが冬まで腐らずに持ちます。万人ウケする味や生産効率、流通の利便性などの追求ではなく伝統的食文化や生物多様性を後世に残す為に生産され続けているこのような品種は、商業レベルのみならず家庭農園を作る一般の園芸愛好家レベルでも広く生産されることが必要だと思います。

トマトと言えば、佐伯にも塩熟トマトと呼ばれるこだわりの高級ブランドトマトがあります。

「kitachi ROSSO」と「朱々」という名前で販売されている商品で、甘みと旨味、酸味のバランスが絶妙です。何もつけずにそのまま食べてみるとその美味しさが引き立ちますが、オリーヴオイルを加えるとまた異次元の美味しさになります。地元の限られた店と飲食店向けの卸売やネット通販などでしか入手できません。「kitachi ROSSO」に至ってはハウス栽培で気温が上がりすぎる夏場は味が変わってしまうので、生産しないないというポリシーのある生産者さんです。

トマト好きな方には是非一度お試しいただきたい希少価値の高い逸品です。

げんきファーム 塩熟トマト「kitachi ROSSO」

http://enjukutomato.saiki.jp/mart/mart.html

サニープレイスファーム フルーツトマト「朱々」

https://syusyu.saiki.jp/mart/mart.html

日本産のトマトは生食向け品種が主ですが、ドライトマトやトマトペーストも含め保存食や調味料としてももっと国産トマトが使われるようになると嬉しいと思っています。その意味では新しい市場開拓の余地はまだまだあるのではと考えます。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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