今年の年初、福博の街に素晴らしいレストランがオープンしました。
福岡西中洲のフレンチレストラン「ラ メゾン ドゥ ラ ナチュール ゴウ」の福山剛シェフの新しいステージです。
ゴウの頃から予約が取れず、キャンセル未遂のピンチヒッターで2度ほど訪問し、このコラムに記事を書きました。
そのときも興奮して書いた記憶があるのですが、半年たってやっと訪問できた今回は更にアップグレードしていて、2日経っても残像が浮かびます。目いっぱい五感を刺激されると印象の深さが違うのでしょう。
レストランは、キャナルシティ博多の西側、那珂川のほとりに建つゼロテンビルの3階にあります。
お洒落な外観のビルには、エンターテインメントと一体になったバーと、アジアNo1レストラン「ガガン」のシェフと福山シェフが一緒に立ち上げた「GohGan」があります。「Goh」は3階。
店に入ると、ナチュラルなテーブルに椅子が10脚ほど。テーブルドットでの提供です。
今回は、シンガポールの団体6名、香港から1名、着物の女性3名と僕ら2名。12名が揃ったところで一斉にスタートです。
客室奥の仕切りが動くとオープンキッチンが姿を現します。料理を仕上げる風景を眺め、料理の説明を聞きながらサービスを待ちます。
お通し風のくるみをつまみながら、1杯目、皆さん泡系のようです。
まずはフィンガーフードを3種、ライスクラッカーにイカ、いくらをのせて鮨に見立てたもの、コーヒーとフォアグラ、ほうずき。どれも手が込んでいます。
次は、味付けして軽く火を通した鯖、巨峰のスライスが乗っているのは、トマトと葡萄を発酵させたものをジュレにしたソース。柔らかな酸味が口の中に広がります。
次は、蒸した鮑と椎茸のスライス、あおさのパウダーが掛かっています。ベースは椎茸のリゾット。そこに椎茸と焦がしバターのソース。
福山シェフのスペシャルです。椎茸と鮑の食感が似ていて、山のものと海のものが口の中で混じりあいます。
この店のお料理は、福山シェフが産地まで出掛けて探してきた、地元九州産のもの。特に生まれ故郷である朝倉の食材をふんだんに使っています。力のある原材料を一度、分解して再構築する。シンプルなようで相当複雑な手順を踏んで組立てられたお料理が続きます。基本はフレンチですが、和食に振ったり、スパイシーで東南アジアからインドを連想させるものもあり。これはガガンの影響が大きいのだろうなと思いました。
次の、焼いた松茸とタチウオには、朝倉の奥、古処山で育った鶏のコンソメ。なにやら不思議なガラス器で旨味を引き出します。
これはもう和食の世界です。
さらに魚が続きます。甘鯛に合わせるのは百合根とキャビア。日本酒のベルモットを使った尖ったところの無いソースが本当に美味しい。
伊万里牛のローストは、柿の蒸し焼き、もろみ醤油を使ったソース。柿で造ったカンズリがアクセントになります。
五島うどんをあご(飛魚)出汁とスパイシーなミンチ肉の入ったソースで食べる。これはキーマカレーうどんですね。
デザートは梨をアーモンドのブランマンジェ、甘酒を凍らせたパウダーで仕上げたものがでました。
薪のように炒った番茶と、栗のパイで締めます。
総じて、出汁の効いたフレンチ、フュージョンの料理を楽しみました。また、福岡や九州の食材を大切に扱い、思いがけない組合せには唸りました。
けして英語が堪能ではない、福山シェフが、ガガン・アナンドに誘われ、アジア各地のお客様に受けているのは、言葉を超えた料理の奥深さ、出汁を含めた和食文化を背景にした引出しの多さだと思います。もちろん人柄も。あの笑顔があれば言葉は必要ありません。そして、西中洲の店でも、店を出て次の角を曲がるまで見送っていただいて驚いたのですが、今回もエレベーター前で、ずっとお見送りに立っておられて(記念写真を撮ってワイワイやっていたのに)恐縮した次第でした。
福岡には「Goh」がある。胸を張ってご紹介できそうです。
「Goh」
「010ビル」