うれしの茶、次の百年

食の宝庫九州から

先週は、ずっと佐賀市で開催される佐賀インターナショナルバルーンフェスタの会場にいました。

熱気球を飛ばすクルーとして毎年恒例の行事です。熱気球を飛ばすクルーは最低で5人、僕が参加するチームは10人と大所帯です。6日間の期間中、早朝5時過ぎから日没まで、5日、6日は夜間係留があり、20時過ぎまで一緒に動きます。

毎日ランチに何を食べるか大勢でもあり食事の場所は楽しく悩んでいます。会場内に物産館や出店がありますが、来場者数万人もあり会場内でも結構な人出です。大きなテントの中には数十の出店があり、佐賀の名物を揃えています。

そんな中で良い香りがしていたのが、「うれしの茶」のコーナーです。

佐賀県の西部にある嬉野市から長崎県東彼杵町にかけての一帯で栽培されているお茶です。栽培の歴史は古く、室町時代に明から来た陶工が栽培を始めたという伝承があります。江戸時代には長崎の出島から欧州に輸出されています。茶どころの多い九州内でも歴史と生産量を誇っています。

さて、その生産の中心にある嬉野市は、温泉でも有名です。30軒近い旅館ホテルが軒を連ね、大小さまざまな施設が観光客を迎えます。

そして何より、今年9月23日に開業した西九州新幹線の駅が出来たのが大きなエポックになっています。

明治期に長崎へ向かう鉄道網は、いわゆる長崎街道に沿って敷設されましたが、唯一嬉野を通りませんでした。これは鉄道が通ることで町を素通りされるという懸念を抱いた地元民の反対によるものでした。その後の武雄温泉や陶都有田の繁盛振りを見ると嬉野温泉の関係者には「百年の悔い」が残ったと言われてきました。その後、諫早から肥前鹿島を抜けるルートが開通しても嬉野を通らなかったのですから、ずいぶん長い間待ち続けてきたことになります。

嬉野温泉に来るには、これまで観光バスや自家用車しか手段がありませんでした。それが新幹線の開通によって関西などから鉄道で訪れることができるようになったのです。

現在は、長崎駅から武雄温泉駅までの部分開業ではありますが、時代が少しづつ変っていく予感があります。

出島を通じて欧州に届けられた「うれしの茶」が、改めて鉄道網に乗って訪れた観光客のお土産として全国に届けられることになるのです。

そして嬉野温泉の旅館と茶農家が協同して魅力的で新しいプログラムを行っています。

「Tea tourism」

https://tea-tourism.com/

JR九州 西九州新幹線開業

https://www.jrkyushu.co.jp/train/nishikyushu/
上田 和久

上田 和久

スタジオワーク合同会社 代表。熊本県生まれ。厨房設備施工会社、電機メーカーで冷蔵設備の設計施工営業を担当後、食品メーカーへ転職し、品質保証の仕事を経て、2016年1月コンサルタントとして独立。安全安心な食品を提供することに日々、注力する企業に対して、HACCPに基づいた衛生管理の取り組みを支援している。 JHTCリードインストラクター

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