山と海の距離が近い佐伯。2015年に旧佐伯市と南海部郡(みなみあまべぐん)5町3村が合併し九州最大の面積を持つ自治体となりました。その大部分は山と海岸線。そして当然ながら林業と漁業が盛んです。佐伯城址を中心に番匠川河口の平地が広がる市内中心部から海辺の街へ行くにはまず山越えになります。新緑の美しい緑のグラデーションの山に囲まれたカーブの多い道を走ること30分。佐伯にいくつもある魚市場の中でも規模の大きい蒲江漁港の目の前にある道の駅かまえ Buri Laboratory(ブリ ラボラトリー)に行きました。
ここは目の前の市場で揚がる新鮮な魚介はもとより佐伯の特産品である多くのブランド養殖ブリ(かぼすブリ、若武者ブリ、美人ブリ、麹ブリなど)や伊勢海老、緋扇貝の生簀もあり、地元の海産物、酒類、食品、からオリジナルTシャツやバッグなどその選び抜かれた品揃えに以前からわたくしが一目を置いているお店です。日本各地にある「道の駅」の中でもオシャレ度の高い店だと思います。それもそのはず2019年から店長を勤める早川さんは二十代の若者。お父さんの故郷が佐伯で小さいから親しんではいたものの育ったのは神奈川県。大学を卒業してすぐ佐伯に移住してきたそうです。還暦を過ぎて移住してきた私は、彼の活躍ぶりにいつも刺激をもらっています。
今日のお目当ては、併設されているレストランで旬のおすすめメニューである、「炙りカツオ丼」。
「目に青葉、山ホトトギス~」と心の中で呟きながら山道をドライブして行ったのですが…。
最後まで迷いに迷って、思わず注文していたのは、「生しらす丼と天ぷらの定食」でした。。。
生シラスと言えば、プーリアではschiuma di mare(海の泡)とも呼ばれる季節の珍味として珍重されていました。漁業資源保護のため2016年から禁漁となり密売が摘発されると厳しい罰則があります。プーリアの隣のカラブリア州の郷土料理としてローザマリーナと呼ばれるこの生シラスを発酵唐辛子漬けにした保存食があります。今でもカラブリアでは売っていますが、原材料の生シラスは輸入品だということです。佐伯でもシラスの水揚げ量は随分減っているとの話も聞きます。
イタリアではもう食べられなくなってしまったシラス、日本でも食べられなくなる日が来る可能性はどうなのでしょう? 注文したは良いものの少しだけ罪悪感にも似た後ろめたさを感じたことは否めません。
生シラスだけではなくカタクチイワシなど小型の青魚は、足が早いこともあり生のものは都会では中々お目にかかることはできません。水産業の町、佐伯だからこそ身近にある流通経路にのりにくい魚もいりこや練物といった従来の日本的な使い方だけではなく、イタリアの郷土料理の中に新しいヒントがあるかも知れないと感じます。
ボリュームたっぷりで大変美味しくいただいた生シラス丼&天ぷらですが、オリーヴオイル&レモンと共にブルスケッタの上に乗せて、という食べ方も佐伯の皆様に是非試しいただきたいものだと思いました。