アグリ&スロートラベル・エキスポ

南イタリア美食便り

2月下旬を迎えアーモンドの花が満開を迎えるプーリアから、北部ベルガモ市で行われた「アグリ&スロートラベル・エクスポ」に視察に行きました。

ベルガモはロンバルディア州ベルガモ県の県庁所在地で、アルプスの麓に位置する人口12万人の都市です。イタリア商業の中心地ミラノから電車で約1時間、40kmの距離にあります。

1980年代からアグリツーリズモ法が制定され、スローフード運動など農村観光を推進してきたイタリアの現状を調査することによって、日本の地方再生や農泊の取り組みのヒントになることが見つかるのではと思いました。2月初旬にはミラノでイタリア最大の旅行博BITが開催されましたが、そちらよりむしろ農泊関連にフォーカスを当てたこちらの展示会の方が参考になるに違いないと目をつけました。

今回で9回目を迎えるこの「アグリ&スロートラベル・エキスポ」ですが、B2Bのマッチング商談会とブース展示の2つの側面を持っています。商談会では主催者が招待したイタリア国内35、国外15の旅行代理店(バイヤー)と宿泊施設、体験プログラム実施団体、旅行企画者(セラー)などが参加。一般向けのブース展示は、行政では国、州、自治体の各レベルでの取り組みの紹介、民間では観光協会、商工会議所、サイクリングやハイキングの全国協議会、アグリツーリズモ協会、チーズ、ワイン、ハチミツ、パン、などなど農業加工品生産者が約130ほど軒を連ねます。

昨年度は3日間で約2万人の来場者があったとのこと。

キーワードは、エノガクトロノミア(ワインと食)、チクロツーリズモ(サイクルツーリズム)、モンターニャ(山)、カミーニ(トレッキング/ハイキング)、アッチェシビリタ(アクセスビリティ)、ヴィア・ディアークア(水の道)、フォルクローレ(伝統、伝承)、ソステニビリタ(サステナビリティ)を上げており、それぞれ実演、トークショー、ワークショップなど合計120ほどのイベントがありました。

出展者は北部ロンバルディア州の団体が多く、プーリアからの出展者も数件ありましたが、地元PRの色が濃く現れていました。イタリアの中でも工業中心で人口も多い北イタリアでは、ストレスも多く自然に触れる事の必要性が高いからかもと感じました。キーワードにもあるようにロンバルディア州は海がなく、自然といえば山。そして、北部を横断するイタリアで一番長い川であるポー川の恵み。この辺はプーリアにはない自然環境であり、観光資源です。

目についたのは、サイクリスト協議会、伝承文化保存会、災害援助や自警団など、また子どもたちの林間学校の運営にボランティアとして関与するシニア層の活躍です。

シニアになってから参加するというより、長年の趣味がこうじて年金生活者になってから活躍の場を見つけたという方々が多いように見受けられました。また、カトリックの司教区のブースでは教会や聖地を歩いて巡る巡礼の旅をPRしていて、自然とスポーツと精神文化さらにグルメを掛け合わせたカスタムメードの休暇の過ごし方を考えるきっかけとなりました。

個人個人の郷土愛や趣味嗜好に対するパッションが表面的ではない、地に足のついた地方再生の原動力に違いないという感想を持ちました。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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