プーリアの春キャベツ

南イタリア美食便り

春はキャベツが美味しい季節。我が家の自家菜園ではいくつも各々の出番待ち状態です。

トンカツと一緒に生で千切りに、またはマヨネーズを使わないコールスロー、ツナとキャベツのレモン風味のスパゲッティなどが我が家の定番です。それともう一品、丸ごとキャベツのオイル蒸し煮が私のイチオシです。

ヨーロッパの家庭での普段の食事は昼に一番たくさん食べるのが習慣で、夜はパンとチーズやサラミなど肉加工品だけというご家庭も多いです。

ケースバイケースではあるでしょうが、ドイツにホームステイしていた友人は、そのお宅では夜はケーキとお茶しか食べないのが普通で驚いたと言っていたことを思い出します。

南イタリアではそこまでの話は聞いたことがありませんが、皆、口を揃えて「夜は軽く」と言います。

私が「ご馳走マラソン」と呼んでいるクリスマスやイースターなどハレの食事ともいうべき特別な会食と比べると美食の国イタリアでも普段の家庭料理は極シンプルなものです。もっとも、わざわざ何品も料理を作らないという意味では軽いと言える夕食も、食べる量が多ければ軽くにはなりません。

一人暮らしが長かった義父は、料理上手で私のプーリア料理好きは彼の味から始まりました。オリーヴやブドウの木の剪定、家畜の解体、サラミやトマトソースなど保存食作り、オリーヴの枝の籠造りなど全ての農家仕事が出来た義父からしっかり学びたかったことはたくさんあります。

彼の夕食の定番は、山盛りの茹でた季節の野菜、野草であったり、チーマディラーペ(西洋菜花)であったり、ビエトラ(スイスチャード)であったり、にオリーヴオイルと粉チーズをかけたものと少々のパン、ワインはきっちりコップ1杯でした。毎日それがいいと言っていました。

そんな義父でしたが、キャベツだけはただ茹でただけではなく、丸ごとをざっくり四等分に切ってそのまま鍋に水とトマトソース少々、オリーヴオイルたっぷり、塩ひとつまみ、を月桂樹の葉と共に弱火で蒸し煮にしたものが好きでした。

トマトの酸味でブイヨンなど入れなくても芯まで甘く柔らかくなった四つ割のキャベツがメインディッシュの夕食を、夜はまだ肌寒い4月の初め暖炉の火をみながら2人で食べた事をこの時期になると思い出します。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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