ケッパー摘みの時期

南イタリア美食便り

今年もケッパー(伊語でカッペリ)摘みの時期になりました。朝方日差しが強くなりすぎないうちに、食用になる花の蕾の部分を手摘みします。ちなみに丸く少し厚みのある若い葉も可食部で蕾同様独特の風味と酸味があります。

ケッパーは地中海地方原産で現在もイタリア、フランス、スペインなどが主な生産地です。スモークサーモンにスライスオニオンと一緒に供されることが多いですね。南仏料理のタプナードソースにも欠かせない食材です。スパイス的に料理のアクセントとして応用範囲はとても広い食材だと思います。冷奴や風呂吹き大根など和の食材との相性も抜群です。

さらに主要成分のカプリン酸やケルセチンは、体内で吸収・分解されると抗菌・抗ウイルス作用が活性化するとも言われる優れもの。

プーリアをはじめ南イタリア各地では石の壁の間から自生しているものが多くみられます。多年草で、毎年冬に枝を剪定すると春ごろから豊かに葉が広がりこの時期になると花の蕾がつき出します。まだ蕾が小さく固いうちに摘まれたものの方が高値がつきます。

日本ではスペイン産の酢漬けのものの方が入手しやすいかも知れませんが、イタリアでは塩漬けのものを使います。我が家では庭に何株かあるケッパーを毎年収穫して塩漬けにして常備しています。一年中色々な料理で大活躍します。

ケッパーが欠かせないプーリアの郷土料理の一つにスパゲッティ アッラ サン ジョヴァンニがあります。

プチトマトをケッパー、アンチョビ、ニンニク、オレガノ、アローロ(ローレル)で味付けしたシンプルであっさりした一品。サンジョヴァンニ(洗礼者聖ヨハネ)の日の6月24日にも必ず食べます。もっともこの料理は常備食材で手軽に作れる我が家の定番なので、この日だけに限らず年中割と頻繁に食卓に登ります。

なんと言っても地産地消が真髄のプーリア料理。それを実践すべく日本国産品のみを使ってプーリアでの食生活を再現してみようとすると、まだまだ手に入らない食材もあるし、価格的に無理がある場合もあります。

日本産のカッペリというのも聞いたことがないなと思いつつ、やはり日本の気候では無理なのかも知れないと、期待せずに検索してみると、なんと日本でもケッパーの種も苗も販売しているではないですか!! 日本でも自家製のカッペリをお使いの方々もいらっしゃるのですね。栽培の仕方などの解説もあり、これは試してみる価値大有りです。

生育する条件さえ合えばそれほど手をかけずに毎年花をつけてくれるケッパー。家庭菜園でもはたまた休耕地の有効活用にも面白い食材だと思うのです。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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