ニューヨーク・ブルックリンの全米一のステーハウスと海外の高級店と提携するワンダーテーブルの提携によりピーター・ルーガー東京店が開店して2年ほどたち、2回目の訪問です。今月誕生日を迎えるのでスタッフが予約してくれました。勘定は私持ちですが。
さて店名がPeter Luger ピーター・ルーガーとあるように、ドイツ系ユダヤ人の操業のようです。米国の肉の7割はユダヤ系の方が取り仕切っており、その関係で最高級の肉が取り扱えるようです。米国の本店は、ニューヨークのイースト川対岸のブルックリンにあります。2001年の3/11テロ前までは倉庫街で治安の悪い町でした。
ニューヨーク・マンハッタンから行くのにタクシーが必要ですが、治安が悪いのと、帰りの客がいないので流しのタクシーは行ってくれません。また訪問する際はタクシーで玄関に着け、帰りは店にタクシーを呼んでもらい帰るように言われました。
一度訪問時に帰りは白タクでした。地元のちょっとガラの悪い運転手で、古いキャデラックのボンネットに水牛の角をつけた車で帰りはどきどきした思い出があります。店の周辺を歩けば命がないと脅かされるような治安の悪い町でした。
ニューヨークの本店は予約が取れないし、行き帰りが難しい店です。こんな時の対策が、良いホテルに泊まることです。良いホテルとは単に豪華なサービスの良いホテルでなく、優秀なドアマンとコンシェルジェがいることです。
ニューヨークに行く目的で多いのは、予約の困難なミュージカル・ショーやレストランです。優秀なコンシェルジェは、その難しい予約を取る力があるのです。優秀なドアマンは頼むと、難しい場所まで行けるタクシーを呼んでくれるのです。もちろんチップはたっぷり必要ですが。
そんな難しい条件のあるニューヨーク・ブルックリンまで高い航空運賃と日時を使うことを考えれば東京の店はありがたいですね。
コロナ禍で1年遅れの開店でしたが、いまだに予約困難な繁盛店です。開業130年を誇るブルックリン本店の雰囲気を持つ、煉瓦造りのお洒落な1軒屋です。
サッポロビールの恵比寿工場跡地の恵比寿ガーデンプレイス隣接、サッポロビール本社前です。物件はサッポロビール所有で、このあたり全体を北海道のサッポロビール園の雰囲気にするためレンガ造りの建物群です。130年前に建てたブルックリン本店の内装はドイツ系ユダヤ人が造ったビアホールのような簡素な作りですが、恵比寿店は本店よりおしゃれな内装です。
ただ残念ながら、一階の入り口から受付に数段の段差があり、車椅子生活の私には向いていません。デザイナーは見た目の豪華さを追い段差をつけたのでしょう。ピーター・ルーガー本店の厨房は地下のクローズドキッチンですが、恵比寿はモートンズのようなオープンキッチンです。本店入り口のバーはカジュアルなスタンディングスタイルですが、恵比寿には入口に近い1階の広々とした、座席のあるバーです。
当日は入り口から下がる1階の広々とした客席に案内されました。客席は3層に分かれているそうで、個室も多く備え、パーティーにも適しています。
開店して間もなく、予約が数か月前までいっぱいでしたが、いまだに予約困難です。スタッフがやっととった予約は平日のランチで、それも開店早々の11時でした。
席についてまず食前酒です。ステーキ屋というとシャンパンかスパークリングワインでスタートですが、本店ピーター・ルーガーと同じくビールでスタートです。本店は地ビールを出すのですが、ここにはなく、瓶のブルックリンでスタートです。
ブルックリン(日本ではキリンビールが製造)には生もあるのですが、大家がサッポロビールですから、生はサッポロの3種類です。2杯目から敬意を表して、サッポロ黒生にしました。
前菜は、名物トマトと生オニオンのスライスにピータールーガー・ステーキソースをかけます。質素な味ですが、トマトの酸味と、オニオンのピリッとした味が、舌の味蕾(みらい)を刺激し、次に来るステーキの味をフルに楽しめるそうです。
その他オニオンブレッドで質素にビールを飲んでステーキを待つのですが、本店にもある大きな海老が売り物のシュリンプカクテルも注文しました。
ピーター・ルーガーを有名したのは熟成肉です。地下の貯蔵庫で表面が真っ黒になるまで黒カビで肉をドライエイジングして、うま味を最高に引き立てています。ドライで熟成することで旨みが熟成し、黒カビでその旨さをさらに出しているのです。
ステーキはポーターハウスで、T字型の骨の左右にヒレ肉とサーロインがついて両方味わえます。T字型の骨付きのステーキにはTボーンステーキとポーターハウスがありますが、ポーターハウスのほうが、Tボーンに比べ、”シャトーブリヤン”と呼ばれる料理に使われる、”テンダーロイン/Fillet Mignon (サーロインと比べて1/3以上)が大きく”と”サーロイン(ナイト爵を冠したロイン)/ストリップロイン”が付いた最高級部位です。
その部厚い肉に特別なコーシャ(ユダヤ)ソルトを振りかけ、上火のブロイラーで焼き、表面に焦げがついたら、一度取り出し肉に切れ目を入れ熱い皿に乗せ、バターを加えもう一度焼き上げます。そして十分に焦げ目がついたら取り出しテーブルに運びます。お皿がブロイラーで加熱されて熱いので注意して食べます。
ウエイターが、肉の部位の説明し、ヒレとサーロインの肉を一切れづつ取り皿に乗せ、お皿にたまった溶けたバターと肉汁を肉にかけてくれます。 まずシンプルな味を楽しみ、ワサビとホースラディッシュ、醤油を頼みます。本店では絶対に出してくれませんが、ここは日本のワンダーテーブル、出してくれました。
付け合わせは、シンプルにクリームスピナッチとジャーマン・フライドポテトです。肉の焼き方は勿論ミーディアムレアです。肉にもっと火を入れたいときには熱々に熱せられたお皿の縁を使います。
テーブルは木目のある木です。本店のテーブルは130年間使っているので真っ白になっています。テーブルクロスはありません。肝心の味ですが、本店のコクのある味よりちょっとあっさりした印象です。
後で肉のプロに聞いたら「東京はNYのように熟成しっかりできた状態ではなく、早めに輸入して日本で在庫調整しながら追熟しているようで、熟成庫の状態がNYとはまるで違うので、同じ状態に熟成されないかもしれません。好みによりピーター・ルーガーの熟成香はあまり好きではないという人もおり、そういう人にはいいのかもしれません。
NYスタイルのカビは黒カビで、表面は真っ黒になります。それに対して日本で使うのは白カビで、全く種類が違います。焼くときのバターを使うことと、この熟成香の両方が味の違いでしょう。匂いは説明しにくいのですが、クセを感じてピーター・ルーガーは好きではないという人がいますが、私はこれこそがピーター・ルーガーですので、あっさりしては物足りません。
ウルフギャングも、ベンジャミンもNYのピーター・ルーガー系のステーキハウスが東京に出てきていますが、すべて同じ感じです。」と教えていただきました。
肝心の熟成肉ですが、私にはその繊細な味は分かりません。正直に言えば、日本の松坂肉や神戸肉の、霜降りのほうが柔らかくおいしいと思います。でも米国人にはこの熟成肉のほうが良いのです。
米国の肉は脂が塊でついて、霜降り状態ではありません。美味しさは脂にあるので、こってりとした味を求める人はそれをつけて食べるのです。健康志向の人は脂身を避けて肉だけを食べるのです。
私がマクドナルドで関西地区の運営部長時代、3台目CEOのマイク・クインラン氏が関西にきて接待をしました。本社のCEOですから、予算は潤沢です。そこで京都の有名鉄板焼につれていき、最高級の霜降り神戸牛を提供しました。
そしたらなんと、クインラン氏は肉を押さえつけ脂を搾って食べるではありませんか。そして、日本の肉はグリーシーだと言い放ちました。美味しさの詰まった脂を搾って食べる米国人の赤身肉が好きなことがわかりました。
私はワサビと醤油を頼み食べたので余計にあっさりしたのかもしれません。私はシカゴのモートンズのほうが好きな理由はワサビと醤油です。ピーター・ルーガーのベテランのウエイターはピーター・ルーガー流を強制し、醤油なんて言えば馬鹿にされます。
モートンは顧客優先主義です。さすが米国にはワサビがないのでホースラフィッシュを頼み、醤油とレモンをもらいます。米国で醤油はソイソースですが、通じません。そんな時には、キッコーマンと言えば通じます。
さてデザートはたっぷりの植物性生クリームのついたでかいチーズケーキとチョコレートファッジサンデー、フルーツです。フルーツは本店に負けないイチゴが出ました。本店のイチゴは小さいミカンくらいの大きさですが東京も負けず、立派なイチゴが出ました。
ランチで軽く食べて1人17,000円と高いのですが、ニューヨークまでの飛行機代を思えば安いですよ。
ワンダーテーブル会長のヒューマックスグループの3代目総帥 林 祥隆 Yoshitaka Hayashiさん(元ワンダーテーブル社長)は米国留学経験があり、米国料理の大ファンで良く来店するようですね。
会社情報
ワンダーテーブル
親会社ヒューマックスグループ
YouTubeで動画が多いので以下に紹介します。
本店の動画
恵比寿の動画
ニューヨーク・ブルックリンのピーター・ルーガー本店には5回ほどいっておりますが、最後の訪問時は25人くらいの団体でした。私は病に倒れるまで、最適厨房研究会という厨房業界の任意団体の会長を務めました。東京ガスさんのサポートで運営していました。
ある会合の懇親会で担当副社長のMさんと飲みながら雑談していたら、ピーター・ルーガーの話になりました。担当副社長のMさんは天然ガスの調達が重要な仕事で、ニューヨークに数年駐在し、ピーター・ルーガー本店は大好きだったと意気投合し、グループを募って食べに行こうということになりました。
丁度、アトランタで開かれる全米厨房工業会のN.A.F.A.M.に合わせニューヨークとアトランタを組み合わせました。ニューヨークでは、ピーター・ルーガー本店。アトランタではCHOPSというステーキ屋を訪問した思い出があります。
画像
<参考までにその2010年本店訪問記録です>
米国一のステーキ屋 ピーター・ルーガーPeter Luger
ニューヨークというとNOBUのようにトレンディーなレストランが軒を並べているように思われるが、歴史のある古いステーキ屋も頑張っている。米国人にとってビーフステーキはいまだにご馳走で、どこの町にも古い伝統的な美味しいステーキ屋がある。
シカゴは牛の集散地でもあり、モートンズのような美味しいステーキ屋が多いし、何処の街に行っても当店は米国で一番美味しいと銘打つステーキ屋がある。しかし、どのステーキ屋も一目置く米国人の憧れのステーキ屋がニューヨークにある。それがピーター・ルーガーだ。
正確に言うとマンハッタンから川を隔てたブルックリンにある。名前のごとく、ドイツ系のユダヤ人の経営する、1887年創業130年にもなる老舗だ。(多分米国でも最も古いステーキ屋の一つ)
ピーター・ルーガーに訪問したことのある日本人はそう多くない。ブルックリンの工場や倉庫街の寂れた場所にあり、店の周囲は夜間に外を歩いたら間違いなく強盗に襲われるという怖い場所だったからだ。最後に訪問した10年前はホテルでフロントに行き方を尋ねたら、危ないから行かないほうが良いと言われるし、タクシーに行ってくれといったら嫌がり、チップを弾んでやっと行ってもらえたほどだった。
帰りもタクシーで店舗前から乗らないと命がないよと驚かされた。2001年の911のテロ以後、警察が増強された影響で治安が各段に良くなったが、相変わらず交通手段に困る場所だ。
マンハッタンから橋を渡るとちょっと荒れ果てたバスターミナルに到着。そこでユーターンをすると目の前に古いレンガ立ての建物が見えてくる。それがピーター・ルーガーだ。
建物周囲には人気がないのだが、玄関をくぐるとそこは別天地。どこからきたのだろうかと思うくらい人が溢れている。ウエイティングバーは立錐の余地がないくらい一杯だ。それもカジュアルな服装の裕福な人たちばかりだ。この店は数週間前から予約を入れないと入れない。
ウエイティングバーの壁面にはZAGATやその他のグルメ雑誌による表彰状が隙間なく貼られている。過去23年間米国一のステーキ屋として評価されている。古めかしいバーカウンターでバーテンダーの写真を撮っていたら、いかめしい顔で「ダメダメ」と言う。どうしたのかと思ったら、「あなた方の写真を撮ってあげるよ」と笑顔に変わり話しかけるのだ。
バーテンダーと打ち解けてしばらく飲んでいるうちに席が用意された。ウエイティングバーから一歩入ると100年前にタイムスリップしたかのような古い客席に案内されるの。店内は古いドイツ・ビアホールの雰囲気の漂う、古びた木と白壁の内装だ。
テーブルはなんと創業以来のものという古さだ(足はさすがに変えているそうだが)。テーブルクロスなんてお洒落なものは使っていない。
さてメニューを見てみよう。普通のステーキ屋であれば、テンダーロイン(ひれ)ニューヨークカット(サーロイン)、リブアイ、Tボーン、ポーターハウス、など色々な部位があるのだが、ここの料理数はマクドナルドや吉野家もびっくりの単品だ。
以前はポーターハウスだけだったのだが今回はリブアイもある。その他に一応、Lamb Chopsや魚も置いてあるが、ほとんどの客がポーターハウスのステーキを注文する。
前菜はトマトとオニオンの厚切りにピーター・ルーガー・ステーキ・ソースをかけて食べる。オニオンの辛味とトマトの酸味が舌を刺激し、次に出てくるステーキの旨みをたっぷり味わうことができるからということだ。
前菜を食べ終わるころには人数分のポーターハウスが一皿に大盛りに盛られてでてくる。通常は一人前のお皿に盛られて出てくるのだが、このお店は熱々の大皿に山盛りにして提供し、それを皆で取り分けて食べる。
盛られたステーキは、焼いたときにでた肉汁をたっぷりかけられている。このメリットは大盛りにした肉の熱でなかなかさめないと言うことだ。
肉の旨みは肉の中の脂分にあるから、焼いている時に下にたれる脂を受け取りバターを加え、後で肉にかけ、さらに焼き上げる。どんな風に焼いているか厨房を覗くと、上火焼きのガスグリラーが何台も並んでいる。安いステーキ屋は鉄板を使うグリルを使用し、中級になるとチャーブロイラーと言うグリッドの下から炎や炭で焼き上げる。
しかし、モートンズやピーター・ルーガーのように高級な厚い肉を焼き上げるには上火のブロイラーの遠火でじっくりと焼き上げなくてはいけない。和食で鯛などの大型の魚を焼き上げるのと同じ要領だ。
大きなポーターハウスは食べやすいように切れ目を入れてある。肉の表面はからっと焦げ目がつき、中は程よいピンク色。味付けは塩コショウだけのシンプルさだ。ウエイターに醤油を頼んだら『そんなの置いていないよ』とそっけなく断られた。
皿にたまっている肉汁につけて食べるのが流儀だ。他の調味料なんか要らない、肉の持っている味だけで食べさせる旨さだ。肉はUSDAのPRIMEという最高の品質。ウエイターに味の秘訣を聞くと最高の肉を熟成庫で5週間ほどじっくりと味が出るまで熟成させると言っていた。いわゆるドライ・エイジングだ。肉の表面が黒く変色するまで熟成させるのだ。
このこだわりが130年も営業し、長年ZAGATで米国一のステーキ屋というタイトルを守りつづけている秘訣だろう。付け合せは伝統のジャーマンポテトとホウレンソウクリーム煮。これだけで、腹いっぱいになる。
130年も営業を継続している理由はステーキに対するこだわりだけではない。客席で接客にあたるウエイターのサービスも魅力の一つだ。場所柄、女性従業員は通いにくいのだろう。全員が中年男性のウエイターだ。最初は味気ないと思ったが、客に媚びないドイツ系の自信たっぷりの接客サービスが小気味良い。
7年ぶりに訪問したが、ウエイターや受付のマネージャーも昔から変わっていない。素晴らしい定着率だ。肉の品質や店の歴史に対する質問にも歯切れの良い答えが返ってくる。そのスピーディーで的確なサービスも人気の一つだろう。
当店でしか食べられないという料理の魅力と、店舗の雰囲気、そして自信を持ったサービス、という飲食店繁盛の基本を忠実に守っているのが、競争の激しいニューヨークで130年以上も繁盛店として生き残る秘訣なのだ。
メニューを見てみよう。7年前に比べると3割以上価格が上がっている。日本はその間価格が下がり続けていますが、米国はしっかりと価格を上げている。でも、上がったと言っても1人前で40ドルほどですからバリュー・フォー・マネーだ。
現在はこのお店でウエイターをしていた数人が独立して、マンハッタンでピーター・ルーガーに負けない品質のステーキ屋を経営しているが、この130年の歴史を感じさせる建物内装の雰囲気を味わうにはやはりこのピーター・ルーガーに来なくてはいけない。
(17年前の価格) 再訪問時の価格
ステーキ 1人前 29.99ドル 39.95ドル
2人前 59.90ドル 81.90ドル
3人前 89.55ドル 122.85ドル
4人前 119.60ドル 168.80ドル
ステーキサンドイッチ 18.95ドル 無くなりました
Lamb CHOPS 28.95ドル 39.95ドル
その日の魚 18.95ドル 時価
以上がメインディッシュです。
前菜は 17年前の価格 再訪問時の価格
ジャンボシュリンプカクテル(4本) 12.95ドル 時価
ジャンボシュリンプカクテル(6本) 17.95ドル 時価
スライストマト2人前 6.95ドル 10.95ドル
スライストマトとオニオン2人前 8.50ドル 10.95ドル
カナディアンベーコン 1.95ドル 2.95ドル
ミックスサラダ 8.50ドル 7.95ドル
シーザースサラダ 前回無し 9.95ドル
野菜の付け合せ
フレンチフライポテト1人前 4.25ドル 5.95ドル
フレンチフライポテト2人前 7.50ドル 9.95ドル
ベイクドポテト 3.50ドル 4.95ドル
ジャーマンポテト2人前 8.50ドル 10.95ドル
ホウレンソウクリーム煮2人前 4.25ドル 8.95ドル
デザート(たっぷりとしたホイップクリーム付き)
アップルパイ
チョコレートムース
季節のフルーツ
アイスクリーム
ホットファッジサンデー
チーズケーキ
フルーツタルト
ピーカンパイ
シャーベット
店名: ピーター・ルーガーPeter Luger
住所:Broadway Brooklyn. NY
電話: 718-387-7400
HP :http://www.peterluger.com/
以上