ロッテリア 2回目

レストランチェック

 日本のロッテリアは元気ないが、韓国ロッテリアは元気だ。世界最大を誇るマクドナルドを押さえて断トツのトップチェーンだ。

ロッテ創業者の故 重光武雄氏(韓国名 辛格浩シン・ギョクホ)は色々な企業を創業するにあたって、強い企業との提携や技術導入に躊躇しなかった。人材も優秀な人を集めていたし、専門技術のコンサルタントを使っていた。

そのおかげで私もロッテリアに知り合う機会を得た。私が求められた技術が、ハンバーガーを早く提供できる技術と、ドライブスルーだ。ドライブスルーの設計は、建物設計、レイアウト、地面に書く文字の表示、POS、無線通信、などの複合的な技術だ。

当時のロッテリアは日本では郊外型の店舗展開が進んでいたが、韓国では郊外型の検討を始めたばかりであった。

そこで、韓国ロッテリアに呼ばれ、面接を受けた。韓国ロッテの幹部と話した。私は韓国語を話せないので、幹部の方は英語で話し出した。流暢なきれいな英語であるだけでなく、品の良い教養をうかがわせるものであった。

しかし、英語で30分くらい話して、私が信用できると思ったのだろう。急に英語から日本語にスイッチした。日本語のほうが私が詳細に説明できると思ったのだろう。その日本語も流暢であった。

面接の後、幹部の方に英語と日本語に流暢な理由を尋ねると、ロッテリアの前の経歴が韓国空軍のパイロットや幹部であったという。飛行機の訓練で、米国や日本に留学したそうで、その教養がわかった。軍人でも空軍のパイロットは、少尉以上で軍人としても位が上で、語学等の高い教養も身につけざるを得ないのだ。

そんな優秀な人材を集める韓国ロッテリアは、韓国で断トツの企業となっていた。韓国ロッテの大きな特徴が、フランチャイズ比率が90%以上と高く、企業としての利益率が高いのであった。顧客の韓国人にとっても国内資本ということで評価が高いし、韓国人向けのメニュー開発も評判が良いのだった。

 その韓国の優位性を日本で発揮できなかったのは、創業者の故 重光武雄氏(韓国名 辛格浩シン・ギョクホ)の後継者問題であった。創業者には2人の男子がいた。長男の重光宏之氏(韓国名 辛東主シン・ドンジュ)次男の重光昭夫氏(韓国名 辛東彬シン・ドンビン)であった。

長男の重光宏之氏(韓国名 辛東主シン・ドン)情報

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8D%E5%85%89%E5%AE%8F%E4%B9%8B

次男の重光昭夫氏(韓国名 辛東彬シン・ドンビン)情報

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8D%E5%85%89%E6%98%AD%E5%A4%AB

 長男の重光宏之氏(韓国名 辛東主シン・ドンジュ)は技術畑で温厚な人物であったが次男の重光昭夫氏(韓国名 辛東彬シン・ドンビン)は大学を出た後、野村証券に就職経験があり、金融面で明るく経営能力が高かったようだ。

 創業者の故 重光武雄氏(韓国名 辛格浩シン・ギョクホ)は弟の重光昭夫氏(韓国名 辛東彬シン・ドンビン)を高く評価し、後継者教育としてロッテ球団のオーナー代行とロッテリアの運営を任せ、長男の重光宏之氏(韓国名 辛東主シン・ドンジュ)には日本のロッテ本体を任せた。

 創業者の故 重光武雄氏(韓国名 辛格浩シン・ギョクホ)の息子に対する接し方は儒教の韓国人らしい厳しいものだった。息子は父親の前で報告する際も、直立させていた。

2人の息子の経営能力を比較し、やがて弟の重光昭夫氏(韓国名 辛東彬シン・ドンビン)を韓国に送り、巨大な韓国ロッテの経営にあたらせた。

 それでうまく行くはずであったが、創業者の故 重光武雄氏(韓国名 辛格浩シン・ギョクホ)が老齢で認知能力に問題が出て、長男の重光宏之氏(韓国名 辛東主シン・ドンジュ)が父親を巻き込み、醜い後継者競争を発生してしまった。

 これらの騒動でとばっちりを受けたのがロッテリアであった。韓国に滞在し、韓国の本体の運営に集中する状況で日本のロッテリアは低迷することになってしまった。そして米国のバーガーキングを展開し、ロッテとバーガーキングの経営をコンサルタント会社のリバンプに任せた。しかし、バーガーキングからは撤退し、本体のロッテも低迷するばかりであった。

 ロッテリアの低迷の大きな原因は、全体の半分を占める直営店の効率が悪く、かつ社員のモラルが低いことだった。

私がロッテリア社員の方と店舗訪問したことがある。予告していたためか店舗は整然としてスムーズな運営だった。そこで働いているアルバイトから情報を得ることにした。全員と話したら、なんと7割が他店からのヘルプであった。

最近来た店長のアルバイトへの接し方がひどく、多くが辞めてしまったという。また、水道光熱費などの管理が悪く赤字状態だった。直営店社員のモラルが低いことの大きな理由が社員の待遇、主に給料が低いことだった。

ロッテリアは親会社のロッテの給料体系や人事規則にとらわれる。工場では機械化され、勤務時間は一定で残業も少ない。でもロッテリアの店舗の社員は営業状況により、残業も多いが、その多くはサービス残業となり、社員に大きな負担を生じるのだ。

 マニュアルも私のようなコンサルタントを多用するためか、つぎはぎだらけで一体性がなかった。これらの理由がロッテリア売却につながったのであろうと推察される。

これから、ロッテリアを買ったゼンショーがどうするか注目されるが難しいだろうと思う。店舗の老朽化が進み、きちんとした運営をするのに多額の費用が掛かると思われるからだ。

ロッテ韓国HP

https://www.lotte.co.kr/global/jp/main.do

ロッテ日本HP

https://www.lotte.co.jp/

故 重光武雄氏関連情報

https://diamond.jp/category/s-lotte2
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%86%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%86

後継者問題

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60735840U0A620C2FFJ000/
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54626480Q0A120C2TJ2000/
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20200624003700882

以上

王利彰(おう・としあき)

王利彰(おう・としあき)

昭和22年東京都生まれ。立教大学法学部卒業後、(株)レストラン西武(現・西洋フードシステム)を経て、日本マクドナルド入社。SV、米国駐在、機器開発、海外運営、事業開発の各統括責任者を経て独立。外食チェーン企業の指導のかたわら立教大学、女子栄養大学の非常勤講師も務めた。 有限会社 清晃(せいこう) 代表取締役

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