日本企業のマニュアル 加賀屋 3回目

レストランチェック

 旅館とホテルは宿泊業で同じ業種と思われますが、かなり異なります。ホテルは宿泊がメインで食事をとらない場合が多いのです。旅館は基本的に食事と宿泊がセットになっています。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の選定基準には以下の4つがあり

プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選の選定基準 HP

https://www.livedo.net/onsen/pro.html

もてなし部門 もてなしや心配り、対応、案内、清潔さなど

料理部門 献立や配膳(出し方・下げ方)、器、味、質、量など

施設部門 設備や機能などハード面(客室、風呂、宴会場など)を重点に安全性と快適性など

企画部門 旅館の特徴づくりと総合演出、企画商品、商品開発など

の4部門で評価され、料理関連の評価が重いのです。(「企画部門」も旅館の特徴づくりと総合演出、企画商品、商品開発などの点で料理の要素が大きいのです)

 ホテルの洋食厨房と旅館の和食厨房で難易度が違います。旅館の厨房を厨房業者にさせると使いにくいのです。ホテルの食事はフランス料理がメインです。フランス料理は標準化が進んでいます。フランス料理を標準化したのが、オーギュスト・エスコフィエだと言われています。

オーギュスト・エスコフィエ(Georges Auguste Escoffier, 1846年10月28日 – 1935年2月12日)とは

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AE%E3%83%A5%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%A8
https://www.escoffier.or.jp/a.escoffier.html

『レストラン経営と料理考案・レシピ集の著述を通じて、伝統的なフランス料理の大衆化・革新に貢献したことで知られる。現在に至るフランス料理発展の重要なリーダーとして、シェフと食通の間で神格化され、「近代フランス料理の父」とも呼ばれている。

料理を単純化し、調理法を体系化することによって、フランス料理現代化の先鞭をつけた。」と言われている。1903年には初の主著となる「料理の手引き」(Le Guide Culinaire)を出版した。この「料理の手引き」は近代フランス料理の知識と技術の集大成とも言える名著で、5000種類を超える料理のレシピが収録されている』

と言われ、フランス料理の標準化に貢献したのでしょう。フランスというと、芸術的な国と思われますが、ヨーロッパでも、英国やドイツと並ぶ工業国です。フランスの近代的な軍隊の兵器製造技術が米国に渡り、米国の自動車などの大量生産技術につながっているのです。

劉執筆の「ファスト・フードの技術革新 大量生産方式及びフランチャイズ・システム」

その合理的な考え方がフランス料理を近代化し、標準化が進んだと言えるでしょう。

パリにあるフランス料理学校のフェランディー校を見学したことがあります。

http://www.egf.ccip.fr/

 このフェランディー校を運営しているのはなんとパリ市の商工会議所で、80年以上の歴史を持っています。フランスに来る外国人観光客は約8000万人とフランスの人口を上回る数字で、世界の国で最も外国人観光客が多いのです。

観光客の誘致には、ユネスコの世界遺産、景観などの自然資源や、神社仏閣お城などの歴史的建造物、お洒落現代的な町、等が必要ですが、フランスの三ツ星フランス料理店が魅力を引き立てるのです。このフランス料理店を支える調理人の育成を担当するフェランディー校の運営を商工会議所が担当していたことでも裏付けられるでしょう。

 これに対し、日本料理は標準化が全くと言ってよいほどできていません。料理人によって料理方法が異なります。典型的な例ですが、鰻かば焼きです。関東では背開き、関西では原開きです。関東では白焼きにして、蒸してから焼き上げます。関西では蒸さずに焼き上げます。

醤油も地区により味が異なります。関東は濃い口、関西は薄口、九州は甘口と大きく味が異なります。味噌も地区によりずいぶん違いますね。魚の呼び方も地区により異なります。また、包丁の形も大きく異なります。

日本料理標準化

https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/syokubunka/pdf/93106101_01.pdf

http://katoler.cocolog-nifty.com/marketing/2007/02/post_49ee.html

 さらに日本料理を複雑にするのが、季節により食器を変えることです。春夏秋冬のほかに、正月、3月5月の節句、のほかに、結婚式、法事、と器を変えるのが日本料理です。厨房設計で和食厨房が難しいのがこの膨大な器の保管庫です。洋食のように重ねられない壊れやすい食器が多いので広い食器保管庫の用意が必要です。

季節による食器

https://www.bunka.go.jp/foodculture/utsuwa.html
https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202101/202101_02_jp.html

このように日本料理は難しいのですがさらに難しくしているのが、料理人の教育です。

続く

王利彰(おう・としあき)

王利彰(おう・としあき)

昭和22年東京都生まれ。立教大学法学部卒業後、(株)レストラン西武(現・西洋フードシステム)を経て、日本マクドナルド入社。SV、米国駐在、機器開発、海外運営、事業開発の各統括責任者を経て独立。外食チェーン企業の指導のかたわら立教大学、女子栄養大学の非常勤講師も務めた。 有限会社 清晃(せいこう) 代表取締役

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