南イタリア プーリア便り- ゼッポレ

南イタリア美食便り
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自分がカトリック世界の住人だと実感するのは、日々よくあることなのですが、毎年3月19日もそんな日です。
イエスキリストの義父である聖ジュセッペの誕生日でイタリアではこの日が「父の日」なのです。ゼッポレと呼ばれるサワーチェリーののった大きなカスタードシュークリームとスプマンテで祝うことが欠かせません。

我が家では前日の夜カスタードクリームを作りパン屋で買ってきたシューに詰めて冷蔵庫に入れておきます。そうするとクリームがシューをしっとりさせ翌朝食べる頃にはいい感じになるからです。ゼッポレのシューは普通のシュークリームのそれよりちょっとボテっとしていてフレンチクルーラーに近い感じ。
同じ生地をオーブンで焼いたものと油で揚げたもの2種類作る人もいます。我が家はもっぱら焼きシュー派です。揚げシューのガッツリ感も私個人的には捨て難いのですが、カスタードクリームが大好きな夫、ジョヴァンニはむしろ軽めの焼きシューで2個目に手を出すことを選んでいると考えます。確かに焼きシューの方がカスタードクリームの味が引き立ちますよね。ちなみにシューはサクッとではなくしっとり、というのも彼のこだわり。
ケーキ屋さんやバールではもちろんクリームの入った完成品を売っています。
シューだけであればパン屋さんで買います。シューも自分で作ればとも思うのですが、2回ほどチャレンジしてうまく膨らまなかったのがトラウマになっておりお店で買ってくることにしています。

カスタードクリームとサワーチェリーに関しては自家製が譲れません。鶏を飼っているので毎日生みたての卵がありますし、前年に収穫、種抜き、シロップ煮と手間暇かかったのサワーチェリーもこの日のために出番を待っているようなものです。

味噌汁にそれぞれ我が家の味があるように、我が家のカスタードクリームは二十数年の歳月をかけてジョヴァンニ仕様に改良を重ねた定番中の定番です。「最高の」とか「本物の」とかという形容詞はしっくりきませんが、簡単でシンプルに美味しいし、何よりカスタードクリーム好きの夫が喜ぶ私の秘密兵器の様なものだと思っています。

「父の日」は日本では毎年6月の第3日曜日ですが、調べてみるとカトリック系だけではなく世界中に独自の「父の日」を制定している国はたくさんあります。「母の日」もしかり。それぞれの国の文化や歴史を象徴していて興味深いです。

世界中の父の日や母の日にかこつけて年に1日だけとは言わず自分へのご褒美という意味でももっともっと父の日や母の日を祝って大人が元気になることが大事なのだと思っています。花一輪でも、ケーキ一つでも、要は気持ちの問題ですよね。カスタードクリーム万歳!(コレステロールや砂糖が気になるお年頃ではありますが)

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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