パンツェロッティ

南イタリア美食便り

プーリアでは今日から暑さが少し落ち着くという予報です。昨日は最高気温が43℃に達しましたが、今日は31℃、明日は昼間でも26℃までしか上がらないと言われています。この急激な温度差も普通ではないですね。

昼間の気温は高くても夜になると気温が下がり湿度も低くなる夏の夜、家族や友人たちと連れ立って気軽に食べに行くのがパンツェロッティです。「今日ちょっとどう?」という感じは日本だったら焼き鳥屋で一杯という雰囲気に似ているかなと思います。

チステルニーノに何軒かある店はどこも連日大盛況。帰省客や観光客が多いこの季節、祖父母から孫まで家族総出でよく働いています。

パンツェロッティは粉物文化が豊かなプーリア発祥のストリートフードです。

ミラノでも大人気でチェーン展開している店もあるとか。 ストリートフードと言っても食べ歩きではなく、野外に座って食べられるテーブルを設けたセルフサービスの店が一般的です。どんなものかと言うと、ピッツァを半分に折ってオーブンで焼いた半月型のカルツォーネは聞いたことがあるかも知れませんが、それを油で揚げたものというイメージが近いです。

カルツォーネはオーブン焼きで、パンツェロッティは油で揚げてあるというのがポイントです。大きさは手のひらの半分程度のものから直径20cmほどのものまで色々です。大量生産の冷凍食品は小さめのものが多いようです。ピッツァ同様、生で作りたてのものとは味と風味に大きな差があるので、是非出来立て熱々を食べていただきたいです。

飲み物はやはりビールが一番合いますね。中の具の基本はトマトソースとモッツァレッラ。これにプロシュートやモルタデッラなどの加工肉類が入ったり、プーリア独特のリコッタフォルテというスパイシーなチーズが入ったりというのがここ数年前までのスタンダードでしたが、最近はピッツァ屋のメニューを思わせる様な30種類以上のヴァリエーションが並ぶようになりました。

プーリア産ではないゴルゴンゾーラ、エメンタール、ブリーなどのチーズ、ナスやズッキーニ入りのヴェジタリアンヴァージョン、クルミやスパイシーなサラミ入りなどなど。これも客層の多様化、志向の多様性を反映しているのでしょう。

何事にも皆一家言あるイタリア人。特に食べ物についてはうるさいです。メニューも数が多いと注文に時間がかかります。「私も同じので。」とはなりません。注文したパンツェロッティを待つ間は「新しくできたあの店はどうだ、こうだ、ああだ」または「私のレシピはどうだ、こうだ、ああだ」とパンツェロッティ談義で盛り上がります。

パンツェロッティを出す店には粉物を扱う業種の中でも元々パン屋系とケーキ屋系があって、ケーキ屋系の方が生地が軽めの傾向があり、材料の品質に凝る店が多いというのが、ワタクシ的な見解であります。これって、元々和菓子屋系の店とパン屋系の店が作るケーキに微妙な違いがあるのと似た様なものかなと思いました。

揚げたてのパンツェロッティにガブリとかぶりつくと熱々のトマトソースが滴り、溶けたチーズがとろーりと伸びるので、受け皿は必須で立っては食べにくいのであしからず。お口をやけどなさらないように気をつけてくださいね。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

関連記事

メールマガジン会員募集

食のオンラインサロン

ランキング

  1. 1

    「ダンキンドーナツ撤退が意味するもの–何が原因だったのか、そこから何を学ぶべきか」(オフィス2020 AIM)

  2. 2

    マックのマニュアル 07

  3. 3

    マクドナルド 調理機器技術50年史<前編>

アーカイブ

食のオンラインサロン

TOP