プーリアの紫カリフラワー

南イタリア美食便り

この1週間、プーリアの我が家周辺では雲ひとつない青空が続きました。畑では紫カリフラワーの大きな花が収穫の順番待ちをしています。

カリフラワー以外ではキャベツ、チーマディラーぺ、フェンネル、プンタレッレなどが収穫時期を迎えています。家庭菜園の規模ですが、いっときに家族3人では食べきれない量がピークをむかえるので無駄にしない手間と工夫が必要です。

私が子供の頃、高度成長期の日本の我が家ではカリフラワーといえば茹でたものマヨネーズをつけて食べるのが定番でした。その後1980年代、アメリカでチェーンレストランのサラダバーに生のまま並んでいたのを見てびっくりしたのを覚えています。ブルーチーズドレッシングとよく合う事を発見しお気に入りになりました。

その頃は将来南イタリアの片田舎で、自家菜園で山程採れたカリフラワーをどう使い切るかと頭を悩ませている自分がいることなど夢にも思いませんでしたし、低炭水化物ダイエットやカリフラワーライスとしての食べ方が注目されるなんてことも思いも寄らないことでした。

プーリアで出会ったカリフラワーの食べ方で一番気に入っているのはオリーヴオイルの蒸し煮です。作り方は超簡単、洗って小房に分けたカリフラワーを深めの鍋に入れ、塩ひとつまみ、月桂樹の葉一枚とオリーヴオイルをたっぷりめに回しかけして蓋をして中火で煮るというもの。茹でるのではなく蒸し煮にするのでビタミンCも逃しません。茎は外側の硬い部分をむいて食べやすい大きさに切ります。むしろ茎の方が甘さがあります。

口に入れるとほろっと崩れるくらい柔らかくなるまで煮るのがポイントです。そのまま食べても良し、チーズと一緒にパンに乗せトーストにするのも良し。トマトやベーコンなどを加えてパスタのソースとして使うも良し。卵を加えてキッシュの具にしても美味しいです。

保存食としては軽く茹でて冷凍するか、酢漬けにします。保存食を自家製すること、食べ方、利用の仕方までが農民料理、農家の食文化。それもプーリアで学んだことの一つです。季節ごとに旬のものを採りたてで食べることと保存食としてひと手間かけたものを旬以外の季節に食べることは両方とも美味しいし贅沢なこと、そんな風に思います。

都会に住む友達が、「田舎暮らしに憧れる。保存食を作るのだって楽しそう。アパート暮らしでは作ったって置いておく場所に困る」と言われて感じたことは、「いいとこ取りは難しい。田舎には田舎の大変さもあるんだけどな。」

人それぞれ違う、その時その時の「自分のプライオリティ」。それを選んで楽しみながら粛々と行うのが良さそうだと、山積みされた大きな紫カリフラワーを見ながら思ったのでした。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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