weekly Food104 Magazine 2006年2月22日号

メルマガバックナンバー

● 米国レストランNEWS
● 赤石貴麻の酒蔵探訪記
● 食ビジネスニュースリリース
● 王利彰のレストランチェック

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● 米国レストランNEWS———————————————■□

■ シカゴ郊外食の風景―サンドイッチはあなたを裏切らない

シカゴ郊外の日本人向けフリーペーパーを読んでいたら、タイ・レストラン特
集があったので、早速タイ料理のランチ・バイキングに行って来ました。値段
が$6.85と安くて手頃なのは良かったのですが、味もそれなりでガッカリして
しまいました。その晩は何か腹の底から旨いと思える物が食べたくて、裏切ら
れず安心して食べれる物は何かなと考えました。何時行っても変わらない美味
しさを約束してくれる物と言えばやはりアメリカではサンドイチでしょうか。

アメリカのサンドイッチの代表と言えば、T.G.Iフライデーズのスイス・マッ
シュルーム・バーガーです。トロリと白いスイスチーズとソテーしたマッシュ
ルームをミディアム・レアーのハンバーガー・パティにかけて食べると最高で
す。ここのベイクド・フレンチ・オニオン・スープもコクがあってなかなか他
では味わえません。少々日本人には塩味が強すぎる感じはしますが、それでも
美味しいです。またハンバーガー・パティは肉汁に旨みがあって噛み締めた瞬
間なんとも言えない至福のひと時です。ソテーした甘いオニオンがまた肉に合
う事この上なし。ケチャプもマヨネーズもかけなくても十分美味しいです。な
んか「どっちの料理ショー」みたいな解説になってしまいましたが。日本にも
フライデーズが進出して成功しているようなので、是非このハンバーガーを試
して見て下さいね。フライデーズ金曜日、土曜日は深夜12時半まで営業してい
るので助かります。普通のレストランは郊外では10時半か11時で閉まってしま
います。

その次に私の頭に浮かんだのは、夜食の救世主メキシコカン・ファスト・フー
ドのTaco Bell(タコベル)です。深夜2時までドライブ・スルーが開いている
ので小腹が空いた時には助かります。最近ではウエンディーズなども夜12時ま
でドライブ・スルーを開いております。ファスト・フード店もずいぶん営業時
間を延長しているようですが、夜間にバーガーを食べれるほど強固な胃は持ち
合わせていません。しかし、メキシコのサンドイッチと言えるタコベルのチキ
ン・ソフト・タコスは小さくて丁度いいサイズです。小麦粉で作ったトルティ
ーヤにグリルしたチキンと刻んだレタス、トマトとチーズを巻いたものです。
値段も1つ1ドルちょっとで3つも食べればお腹も落ち着きます。メキシコ料理
は値段も手頃で豆や米を多く使っていて味付けもマイルドなので、中華料理、
インド料理と並んでアジア人にも人気があります。

さて、今回ご紹介するのはグルメなサブ・サンドイッチのJimmy Jone’s(ジミ
ー・ジョーンズ)です。サンドイッチは仕事や勉強の合間に手軽に食べれて便
利で、軽食扱いされていますがなかなか奥が深いし、パンの種類もその店によ
って全然違います。このジミー・ジョーンズはイリノイ州南部の学生の町シャ
ンペーンに本社があり、現在では300店舗を全米に展開し成功しています。ジ
ミー・ジョーンズ氏が19歳の時に、世界で一番旨いグルメ・サブ・サンドイッ
チをお腹の空いている学生達に作ってやろうと思い立ち、1983年に創業したの
です。食べてみると分かりますが、お腹が空いてなくても思わずぺろりと食べ
てしまうさっぱりとした美味しさです。

その秘密はバンズが旨いことです。普通サブ・サンドイッチというと妙に柔ら
かいホット・ドック・バンズみたいだったり、あごが痛くなってしまうような
歯ごたえのあり過ぎるフレンチ・ブレッドだったりしますが、ジミー・ジョー
ンズのバンズは今まで食べた事の無いような歯ざわりで驚きました。外皮はし
っかりしているのにパン自体は噛むとスーと溶けてしまうような、ちょうど良
い厚さです。ロースト・ビーフを頼みましたが、肉の量と刻んだレタスとトマ
トの量がバンズの厚さと丁度よい具合で、食べた後の嫌味が全くありません。
ぼそぼそせず全てが喉にスルスル入ってしまう感覚です。

マヨネーズもコクがあって、あまりべったりと塗らなくても十分美味しいので
す。こんなシンプルで美味しいサブ・サンドイッチは初めてです。全て素材が
良いのでしょう。特別な趣向はないものの、これこそグルメと言えるサンドイ
ッチでした。値段は8インチのサブでどの種類でも$3.79です。ミディアム・レ
アのロースト・ビーフが柔らかくて本当に満足しました。サブ・サンドイッチ
というと中身が色々うんざりするほど入っていて、噛み切れず、ダラーとこぼ
れてしまって食べるのに厄介ですが、ジミー・ジョーンズのは中身が少なめな
ので食べ易くて助かります。きっと日本の皆さんにも喜んでもらえるサンドイ
ッチだと思います。

中身はロースト・ビーフの他、スモークハム、ツナ、ターキー、イタリアン・
サラミ、ベジタリアン、BLT(ベーコン+レタス+トマト+マヨネーズ)など
胃の小さい私も8インチのサブ2本食べれるほどの美味しさですよ。

http://www.jimmyjohns.com
http://www.tacobell.com
http://www.tgifridays.com

(イリノイ州シカゴ在住 カズコ・デイビス)

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● 赤石貴麻の酒蔵探訪記~日本の酒~——————————■□

■ 手間をおしまず、昔ながらの搾りで(栃木県・片山酒造株式会社)

「初搾りを14日にやることになりました。都合がよければご来店ください」。
昨年、初めてお目にかかった時に、交わした約束を覚えていて下さり、今回の
訪問となった。

「原酒」と大きく書かれた看板が通りからもよく目立つ。店に入ると早速、案
内してくださった奥の蔵では、初搾り作業の真っ最中。当蔵の搾りは、槽(ふ
ね)とよばれる搾り器で余計な圧をかけず、自然にゆっくりと搾る方法をとっ
ている。1袋に6Lのもろみをつめ、それを600袋、槽の中に積んでいくのである。
2~3日かけて搾るという。

「作業を見て頂いてお酒を召し上がって頂きたいんです。こういう搾りをして
るからこういう味なんだと。機械よりも手間も時間もかかりますが、機械で搾
るのとは違って雑味が少ないんです。それと、搾った後の酒粕にもいいんです。
お客様からの声もありますし、大量生産販売の蔵と小さな田舎の蔵との差別化
は、手間がかかってもこういう造りをするか否かだと思うんです」。6代目の
若き当主、片山さんは槽から流れ出る新酒を前に話してくれた。

そのしぼりたての新酒を試飲させて頂いた。アルコール度数19~20度の原酒と
は思えなほど、口当たり軽やか。それでいて、新酒の荒々しさがなく、フレッ
シュなんだけど、落ち着いていてやさしさがある。当主、片山さんの雰囲気に
似ているような感じを受けた。

「柏盛をどうぞよろしく!」声の主は、松井杜氏。身体の大きさとは反比例す
る声の大きさで驚いた。そんな松井杜氏の声は、蔵にいる間中、あちらこちら
に響き渡っていた。その指示を実直に受け、手際よく作業をすすめる2人の蔵
人。「うちは『類は友を呼ぶ』というか、ユニークな人の集団なんですよ。」
と片山さん。

松井杜氏は新潟県寺泊出身の67歳。越後・野積杜氏。高齢の為辞めることにな
った、前任の杜氏から紹介されたのが、前年まで他の蔵で酒造りをしていた松
井杜氏だった。松井杜氏はこれまで、数々の鑑評会で金賞受賞・入賞というす
ごい経歴の持ち主。片山さんも「来てくれると決まってから知って、驚きまし
た」と話す。

2人の蔵人も個性的な経歴の持ち主。1人は日光で地ビールを造る醸造家。冬は
酒造りを手伝いに蔵に入られているそうです。1人は日本酒好きなら一度は耳
にしたことのある酒蔵などで、冬は酒造りをし、夏は、自転車でカナダ横断を
したりする冒険家。そして、経営者と蔵人の2つの顔をもつ片山さん。この4人
のチームワークで柏盛の酒は醸し出されている。

地元の名産品がライバルと遠慮がちに話す片山さん。「旅先で、『どこにいっ
たら、何をたべよう』ってありますよね。日光・今市にきたら、どこのたまり
漬け、どこの羊羹、買って帰るって。うちも、柏盛の酒や酒ケーキを買いに、
蔵に寄ろうという風になればと思うんです」。

年間200石生産される、そのほとんどは、この蔵での販売又は通信販売での販
売となる。一部、近隣宿泊施設などで販売されているが、一般酒店には依頼が
ない限り、卸していないという。「経営者としては一本でも多く売ることを考
えなくてはならないと思うんですが、それだけではないと思うんです。うちの
お酒を飲んで頂いて、1人でも多くの方に喜びを与えられる、そんな会社にな
りたいと思うんですが・・ちょっと理想的ですかね」。

「うちの特徴はこの搾りですし、まっとうな仕事をしているからこそ、みて頂
きたい」ということで、当蔵ホームページでも、搾り日を告知。
→ http://www.kashiwazakari.com/index.shtml

○本日お薦めの酒
「素顔」
しぼりたての無濾過生原酒。オールドタイプの瓶が個性的。「濾過も何もして
いない、完全な生の状態を表現するのに」と、先代社長が名付け親。
720ml 3,060円

「三年熟成 原酒柏盛 M-35」
基本ともいえる、原酒柏盛を-5℃に保たれた熟成用コンテナで3年間熟成。
変色なくまろやかな熟成酒に仕上がってます。 720ml 3,570円

「15年熟成」
-5℃に保たれた熟成用コンテナで15年間熟成。年間5本のみの限定販売で、現
在平成19年まで予約が入っている、幻の逸品。

「カップ酒 原酒柏盛」
原酒柏盛のカップ酒。地元今市で毎年恒例の蕎麦祭りでは、カップ酒片手に蕎
麦を食らうという光景も。 420円

○全国菓子博覧会 会長賞受賞の「酒ケーキ」
「お酒を飲まれない方でも、お酒を楽しみ味わっていただけるか。」自らもお
酒が飲めなかった先代社長が考案した酒ケーキ。上質のスポンジと酒のバラン
スが絶妙。 酒ケーキ大 1,450円 小 1,050円

○お問い合わせ先
片山酒造株式会社
〒321-1263 栃木県今市市瀬川146-2
TEL: 0288-21-0039
FAX: 0288-22-6911
URL: http://www.kashiwazakari.com/index.shtml

○著者撮影の写真
http://photos.yahoo.co.jp/ph/tafdmail5/slideshow?&.dir=/8c6f&.src=ph&.view=t

○食文化研究家 赤石貴麻(あかいし・たかお)
E-Mail:tafdmail5@yahoo.co.jp

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● 食ビジネスニュースリリース —————————-■□

■ アンデスの新食材と料理を紹介 FOODEX JAPAN 2006 3/14~17 幕張メッセ

○場所:幕張メッセホール4・ブースNo.551
日本貿易振興機構(ジェトロ)“Andes Carnival”ゾーン
○日時:2006年3月14日(火)~17日(金)10:00~17:00
(最終日は16:30まで)

フジテレビ商品研究所は3月14日から17日まで千葉・幕張メッセで開かれる
「FOODEX JAPAN 2006」(日本能率協会ほか主催)において、日本貿易振興機
構(ジェトロ)のアンデス新食材プロモーションに協力します。

“美肌をつくる”といま話題になっている「カムカム」はレモンの25倍のビタ
ミンCを含んでいます。栄養価が高くて宇宙食にもなっている「キヌア」はア
レルギー用食品としても使われ、「マカ」は滋養強壮や持久力をつけるといわ
れています。またこれから注目されるであろう不老長寿の秘薬と言われる「ボ
ロホ」をはじめとしてベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビ
アで収穫される優れた、珍しい食材の機能や効能に関するセミナーを開催。
あわせて食材を最大限に生かして、日本の日々の食生活に生かせる料理レシピ
を作成し“Andes Carnival”ゾーンにて紹介します。

*同フェアはアジア・環太平洋地域最大の食の展示会で、75カ国・地域が出品
し、会期中に約9万人が訪れます。

■ FOOD2006inFUKUOKA(海外新食品・食材商談会)を開催

当所並びに福岡市等で構成する福岡アジアビジネス支援事業推進協議会では、
海外諸国の優良な食品製造業を福岡に招聘し、九州地域の小売、卸売、飲食等
企業との商談会を開催致します。

本事業は、地域関連企業における海外からの新規仕入先の拡大、促進を目的と
しており、今回で6回目となります。特に今回は、「衛生管理が徹底されてい
る企業」、「新食品・食材など付加価値の高い食品を保有している企業」を中
心に招聘・出展するとともに、商談会出展企業の優良な食材を活用した「キッ
チンデモンストレーション」を実施し、各国の食材活用方法や食に関する安全
等に関する様々な情報発信を行います。

○日 時:平成18年3月20日(月)10時~18時
場 所:ソラリア西鉄ホテル8階大宴会場「彩雲」(福岡市中央区天神)
主 催:福岡アジアビジネス支援協議会(福岡市、福岡商工会議所、
(社)福岡貿易会、JETRO福岡)
○共 催:カナダ領事館福岡、江蘇省中小企業日本代表処、タイ国政府貿易セ
ンター福岡、大連市政府経済合作局、台湾貿易センター福岡、青島
市政府経済合作局、九州商工会議所連合会
○後 援:九州経済産業局、(社)九州・山口経済連合会、イタリア貿易振興会

○テーマ:安全・安心・安価!ヘルシー食材活用事例
○出 展:イタリア(2社)、カナダ(5社)、韓国(1社)、シンガポール
(1社)、タイ(5社)、台湾(9社)、中国(江蘇省(11社)、大連
(12社)、青島(1社))※7カ国地域より47社が出展。

○内 容:九州・沖縄の百貨店、スーパー等流通業や飲食業の買付担当者など
と海外食料品製造業との商談会 ※事前申込による商談予約制
○特 記:世界衛生基準取得企業より、九州にあまり入って来ていない優良な
食材が多数出品されます

○申 込:福岡商工会議所ホームページよりお申し込み頂けます。

○問合せ事務局:福岡商工会議所国際センター(田中)
TEL: 092-441-1117、FAX: 092-474-3200

○関連HP: http://www.fukunet.or.jp/event2/detail.cgi?eid=478

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● 王利彰のレストランチェック———————————–■□

■ マクドナルド50周年を記念の調理機器技術50年史 その10

マクドナルドの調理技術の歴史

現在のマクドナルド・コーポレーションはシカゴでレイ・クロック氏が創業しま
した。レイ・クロック氏はマクドナルド・コーポレーションを創業する前は、シ
ェイクのミキサーを販売していました。ロサンゼルス郊外のサンベルナルドと
いう町から大量のシェイクの注文があったので、興味を持ったクロック氏がお
店を視察しに行って出会ったのがマクドナルド兄弟の作ったハンバーガーショ
ップだったのです。そして、感激したクロック氏はマクドナルド兄弟のハンバ
ーガーショップのフランチャイジーになり、シカゴ郊外に1号店を開店し、後
に兄弟からマクドナルドハンバーガーのノウハウと商標を買い取ったのです。
その1号店は現在でも博物館として保存されて公開されています。

クロック氏は東欧出身のボヘミアンで、元々はピアノの演奏家でした。シカゴ
は古い町でヨーロッパからの移民が多く居住し、それぞれの出身国の人たちで
コミュニティーを作っていました。いまだにボヘミア料理の店が多いのもシカ
ゴの特徴です。ボヘミア料理で有名なのはソーセージで、その影響か、シカゴ
には有名なシカゴ・スタイル・ホットドックがあります。ニューヨークのホッ
トドックはグリルで焼き上げますが、シカゴスタイルは蒸しあげるのが特徴で
す。JTが以前提携して日本で数店舗出店した、ポチュロというホットドック屋
がシカゴで最大のホットドックチェーンです。
http://www.portillos.com/

さて、クロック氏はマクドナルド創業後、シェイクのミキサーを製造していた
会社を買い取り経営者になり、マクドナルドの調理機器を供給するようになっ
たのです。このシリーズの第一回目でご説明しましたが、マルチミキサー(Mu
ltimixer)を製造していたプリンス・キャッスル社です。後にその会社は独占
禁止法を考慮し経営権を手放しましたが、調理機器の会社を経営した経緯から
氏は調理機器の開発に大変興味を持っていました。

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マクドナルド兄弟はテニスコートに機械のレイアウトを書き、作業導線の研究
をして作り上げた店舗はデニーズなどのコーヒーショップの厨房に良く似てい
ます。異なるのはコーヒーショップの厨房は調理場で調理するコックはカウン
ターにいる客に背を向けて調理をしていることです。コーヒーショップでは客
が店舗に入ってから、ウエイトレスに注文を告げ、ウエイトレスがその注文を
コックに伝え注文伝票をカウンターの上のクリップに止めます。コックはその
注文を背中越しに聞き、時々カウンター上の伝票を確認します。

マクドナルド兄弟は、若い女性ウエイトレスを目当てにくる若いティーンエイ
ジャーを排除して、健全なハンバーガーショップに仕立て上げようと、従業員
全員が男性のセルフサービス店舗を作り上げたのです。マクドナルド兄弟の最
大の功績はセルフサービスのハンバーガーショップに仕立て上げたことです。
通常のコーヒーショップの売り上げは客席のキャパシティで決まります。注文
してから作り出すと調理に15分ほど必要です。そして客席にのんびりと座って
連れとお喋りをしながら食べるとあっという間に1時間経過します。客席が100
席あれば、一時間に最大100個のハンバーガーしか売れません。そこでマクド
ナルド兄弟は、ハンバーガーを売り上げ予測に基づいて製造しておき、紙ペー
パーに包んで保温し、客が注文をしたら直ちにサービスする仕組みを作り上げ
ました。この仕組みにより客席に縛られない大きな売り上げを得ることが可能
になったのです。

この仕組みの最大のポイントは客の来店を予測して、忙しくなったらあらかじ
めハンバーガーを調理して包装しておくことです。通常のコーヒーショップの
ように客に背を向けて調理していては迅速な対応ができません。そこで、コッ
クが客が入ってくる入り口に向いて調理をできるようにしたのです。そのため
にはハンバーガーパティを焼き上げるグリドルの向きを変える必要があります。
それを実現するために特別な低い排気フードを開発したのです。実はマクドナ
ルド兄弟が開発した最大のポイントはコックが客を見ながら調理できるように
することでした。

日本ではマクドナルドは何か特殊な規格を持っているように思われますが、マ
クドナルドで使用している食材はごく普通のものです。たとえば通常のハンバ
ーガーのミートパティの重さは約45gで、バンズの直径は約10cmです。これは
マクドナルドが開発した規格ではなく、米国の一般的な食材規格なのです。
45gというのは1/10ポンドのことで、1ポンドのひき肉から10枚のハンバーガー
パティを作ることから決まりました。バンズの直径は4インチという一般のバ
ンズ規格そのままなのです。今でも米国の食品スーパーに行くとマクドナルド
で使っているのと同じサイズのバンズやミートパティを買うことができるので
す。

マクドナルドで使っていたグリドルやフライヤー、シェイクマシンも当初は通
常の市販品を使っていたのです。しかし、マクドナルドのハンバーガーの人気
が高まるにつれ、売り上げはどんどんあがってきました。客席にサイズに縛ら
れないテイクアウトのセルフサービスのお店はものすごい売り上げを記録する
ようになったのです。

そこで、すべての調理機器とレイアウトの見直しをすることにしました。そこ
で、クロック氏の同郷の天才エンジニアーがジム・シンドラー氏をマクドナル
ドの機器開発部の責任者に任命したのです。シンドラー氏が調理機器や厨房の
レイアウトで果たした実績は大変なものでした。このシリーズ第2回目でも述
べましたが、現在マクドナルドで使用しているクラムシェルグリルは元々シン
ドラー氏が開発した自動調理器の開発が原点です。シンドラー氏の目標は調理
機器は自動化し、レイアウトは交差導線をなくすことでした。その点で、マク
ドナルドのライバルのバーガーキングの厨房の方がはるかに優れており、シン
ドラー氏はそれらの仕組みを詳細に分析し、マクドナルドでどのように取り入
れるか研究をしていったのです。

では、ハンバーガーの調理方法をちょっと見てみましょう。
ハンバーガーの調理にはグリドルと、バンズトースター、作業テーブル、ホー
ルディングビンと言う調理機器を使用します。その他、フライヤー、飲物のシ
ェイクマシン、コークディスペンサー、コーヒーマシンなどです。

ミートパティの調理方法は2種類あります。鉄板タイプのグリドルを使用する
のが、マクドナルド、ウエンディーズ、ハーディーズ等のハンバーガーチェー
ンです。グリドルは簡単で、朝食メニュー等の卵料理などを調理でき、汎用性
が高いので最も一般的に使用されています。また、厚さの異なるミートを焼く
場合でも、時間を長くすれば良いのでメニューの多角化には向いているのです。
しかし、グリドルの場合は片側を焼いた後ひっくり返す必要があり、重労働で
調理時間が長いという問題があります。

もう一つのミートパティの調理方法は伝統的なバーベキュー直火タイプです。
米国で春になり天候が良くなると公園や家の庭でバーベキューグリルに炭をい
れ、食品スーパーでパンズとミートパティを買ってきて、焼きたてのハンバー
ガーを楽しみます。米国で本格的なハンバーガーというと炭火焼のことになり
ます。

この伝統的なバーベキュースタイルの調理方法を取り入れたのが、ハンバーガ
ー業界第2位のバーガーキングです。炭は温度が安定しないのでガスグリルで
焼き上げることにしました。でも通常のガスグリルのチャーブロイラーはグリ
ドルと一緒でコックが片面が焼けたらひっくり返さなくてはいけません。そこ
でバーガーキングはガスグリルにコンベアーを組み合わせて、上下から自動的
に焼くシステムを考案しました。このコンベアーグリドルを使用するのは、バ
ーガーキングとカールスジュニアーです。米国人は本格的な炭火焼のバーガー
キングの味を高く評価するようになりました。

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もう一つの違いはハンバーガーの提供の仕方です。マクドナルドは来客数を予
測して、あらかじめハンバーガーを焼き上げて包装しておきます。しかし、10
分を過ぎても売れないと廃棄処分にして、常に焼きたての熱々のハンバーガー
を提供できるようにしました。この仕組みはホールディングシステムといい大
変良い仕組みですが、ピクルスやオニオンが嫌いだから抜いてくれという客の
要望に応えることはできません。また、マクドナルドの当初はハンバーガーと
チーズバーガーの2種類で、作り置きをしておいても廃棄のハンバーガーはあ
まり出なかったのですが、ビックマック、フィレオフィッシュ、大型のクオー
ターパウンダー、などの追加により、予測生産がうまくいかず、廃棄処分が多
くなるか、客を待たせるという問題にぶつかりました。

バーガーキングはあらかじめバンズとミートパティを焼き上げておき、それを
別々にスチーマーという蒸気保温庫に保管することにしました。そして客の注
文に基づいて、バンズとミートパティを組み立て、客の要望するピクルスやケ
チャップ、オニオンを加えるようにしました。そして包装したハンバーガーを
軽く電子レンジで数秒過熱して熱々の状態で提供することにしました。このフ
レキシブルな仕組みは大成功し、バーガーキングはマクドナルドの売り上げに
肉薄してきました。

それに対抗するためにシンドラー氏はミートパティの自動調理機器を開発し、
それが後にミートパティを上下から挟んで同時に焼くという、クラムシェルグ
リドルの開発につながったのです。次にバーガーキング方式のスチーマーに対
抗するためにより高性能なステージングシステムを開発したのでした。
(続く)

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