プーリアのオリーヴの木

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我が家の今年のオリーヴの生育は例年より若干早いように思われます。収穫は2ヶ月程先になりますが、それまでの天候によって変わってきます。突然雹が降って実に傷がつくこともあるし、実の中に卵を産むオリーヴミバエの大量発生の可能性も油断できません。

手を入れるのは草刈りと2年に一度の剪定作業のみ、あとは自然に任せて恵を頂戴するというスタンスでオリーヴと付き合っています。プロのオリーヴ生産者ではなくあくまでも代々受け継がれてきた木を守るという感覚です。プーリアの我が家周辺の人々は皆同じような感覚を持っているように思います。

数年前からプーリア南部に発生したピアス病(エクシレッラ菌病 Xylella Fastidiosa)の被害は甚大で多くの木が伐採されてきましたが、虫が媒介するこの細菌は北上しており我が家の近くにも発生例が報告されていました。

先日は友人のオリーヴも感染して強制的に伐採されたと聞きました。「今年は暖炉の薪には困らないな」と言う声がなんとも寂しそうでした。

Olive Oil Times というオリーヴ業界専門メディアの最近の記事にプーリアのオストゥーニを中心に活動している環境保全教育、Millenari di Puglia (ミッレナーリ ディ プーリア=プーリアの千年)という団体のことが紹介されていました。https://www.oliveoiltimes.com/world/safeguarding-italys-millenary-trees/110907

イタリアには各地に樹齢1000年を超えるオリーヴの巨木があってそれぞれ名前が付けられ保護されています。イタリアで一番古いオリーヴとして認定されているのはサルデーニア州の樹齢4000年と言われ「自然の太祖 The patriarch of Nature」と名づけられた木とのこと。日本的に言えば御神木と言ったところでしょうか。

プーリア州の公式サイトには巨木認定された木が35万本以上登録されているとのこと。プーリア中央部の我が家周辺は特に巨木が多く壮大な樹海と言える風景が広がっています。

イタリアでは自然へのリスペクトや畏怖はあっても御神木という概念はないですが、私的には御神木の海とも捉えております。

この風景を世界自然遺産に登録する動きが、随分前からあるものの実現しないのはこれらの巨木が今でもオリーヴオイルを生産する農業資源でもあるからと考えられます。農業資源と観光資源の両立は所有者の利害関係が発生するので難しい問題です。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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