総料理長たちの美食会「アスコット会」 le 11 Juillet 2021

FBプロデューサー日記

緊急事態宣言の直前に開催されたアスコット会。

会場は東京ステーションホテル ブラン ルージュです。

ノンアルコールビールで乾杯

石原雅弘総料理長はご自身で各地に赴き食材を厳選しています。夏の旬食材や、有名なフランス食材、そしてここで味わうことに意味のあるストーリーがお皿に込められていました。

◇こだわりトマトと夏野菜の冷製スープ がざ海老のソテ添え

ガスパチョをイメージしたスープです。

オクラ、きゅうり、とうもろこしをさいの目に切って入れ、トマトの味わいを楽しみながら、噛んでいるうちに、お野菜の味を楽しみ違う味に変わるスープです。ニンニクは効かさずに、夏野菜の素材の味・香りで頂くスープでした。

使っているのは2種類のトマトです。

北海道のシシリアンルージュ(トマト果肉の水分とオイル成分とが遊離せず、絡み合うので濃厚で官能的な味わいになる)と甘いの強い本田農園さんの小さなトマト(石川県で有名なトマト農家)を苦味が出ないように、皮付きのままミキサーでゆっくり回した後、粗めのザルで濾します。

レモンの皮を少し入れて、塩少々入れただけのトマトのスープ。

がざ海老のソテは、食感や甘みが素晴らしく、身が固くならないような最適な温度で加熱。柔らかい食感は職人技でした。バケットの上には、数種類のナッツがたっぷり、バジル、木苺のビネガーを合わせたコンディメントです。

◇デリスサラダ<グルマンディーズ>

最近のアスコットかいは、魚介類の生モノが多かったので、肉料理の前菜です。

・フォワグラの燻製(普通のフォアグラでも下処理や調理に手間がかかるのに、さらに燻製で)

・和牛の燻製は希少部位の「ざぶとん」をマリネしてから燻製にしてミディアムレアで、口の中にジューシーな香りと肉の甘みが広がります。

・フランスのブレス鶏の網焼

美食の国フランスにあって、ただ一つAOC(原産地統制呼称)を与えられたブレス産の地鶏。1羽につき10㎡の面積の放鶏場を持つなど、育て方にルールがあり、その証明書がなければ、販売はされません。

*「AOC」Apellation d’Origine Controlee:日本語で「原産地統制呼称」と呼ばれる制度は、固有の特徴をもつ産地のランキングの中で、トップ生産地の食材であることを意味します。

・イタリアの生ハム

・キッシュは4種類のチーズを合わせて、「タマネギ」ではなく「深谷ねぎ」のみを使っています。ホテルオリジナルのベーコンとソテーして、ほうれん草、トリュフの香りで焼き上げています。

さて、なぜ東京ステーションホテルのキッシュに「深谷ねぎ」が使われているのか?

キッシュに深谷ねぎ

次の新1万円紙幣の表面は深谷出身の渋沢栄一、裏面は渋沢が設立した日本煉瓦製造の赤レンガが使われたJR東京駅の丸の内駅舎(東京ステーションホテル)が描かれます。100年以上続いている深谷ネギと東京ステーションホテルの関係、ストーリーを知っていると、お料理も楽しくなります!

◇鱸(すずき)の網焼<メディテラネ(地中海風)>

大きな丸茄子を焼いてマリネした上に、三崎港から届いた鱸(すずき)を網焼きにして乗せ、地中海風のイメージで。

ソースにはケッパーやエシャレット

サフランの香り、ブロッコリーなど野菜のピューレソース

ジャスミンライス(タイ米)の上には、ホタテのソテー

かぼちゃや、パプリカなど、夏野菜の黄色がお皿を美しく彩ります。

◇プロヴァンス地方シストロンの仔羊鞍下肉のロティ 夏野菜添え

メインディッシュはプロバンス地方シストロンの仔羊。太陽がサンサンと降り注ぐフランスのプロヴァンス地方は羊飼育発祥の地といわれる羊の名産地。ちなみにその他フランスの羊と言えば、ノルマンディーのプレ・サレ、ポイヤックのアニョー・ド・レ(乳飲み仔羊)も有名です。

マッシュルーム、ドライトマト、オリーブ、エシャレットをソテーしたものを詰めてロースト。肉自体のしっかりした香りと味に、野菜の旨味が染み込んでいました。

鞍下肉(腰の部分)はフィレ・フィレミニョンを取り出した後、バラ肉がたくさん残ります。このお肉もフードロスにならないように調理。ホテルレストランのSDGsを考えたメニュー、仔羊のカレードリアです。

◇夏のスペシャルデザート

季節のメロン、ブルーベリーなど、フルーツたっぷりのふわふわショートケーキや、フランボワーズソースのアイスクリーム。

◇ノンアルコール スパークリング ワイン

デュック ド モンターニュ

スタッセン社はベルギーのシードル老舗メーカーで、シードルを造るときの酸味料などの調合ノウハウを用いて、ワイン本来の香りや味を再現しています。

白ワインを醸造した後、低温低圧状態で蒸留してアルコールを除くことで、ワインの香りや味を損なうことなく、お料理に合うノンアルコールワインを作っています。パレスホテル東京も同じものを使っています。

ヴィンテンス メルロー

ブドウジュース系は甘いのですが、甘みの無いものはワインを作ってからアルコールを飛ばし、風味を追加しています。

このノンアルコールワインは、品質の良いブドウを使用したフランス産ワインを、スタッセン社独自の低温低圧蒸留により本来の風味を損なうことなく、脱アルコールを実現。フルーティでコクがあり、ブルーベリーなど果実味を感じることができました。

下記URLで写真付きで詳しくご紹介しています。
https://ffcnippon.com/

石川 史子

石川 史子

東京都生まれ。立教女学院中学・高校を経て立教大学理学部化学科を卒業後、東京ガスに入社。炊飯器やピピッとコンロの技術評価や最適厨房研究会の運営等に携わり、2015年秋に東京ガスを退職。現在はフリーランスのコンサルタントとして活動をしています。リケジョとしての能力と、仕事を通じた調理機器メーカー、フランス料理界、居住地の埼玉県の農業と触れ合い、現在の厨房業界や農業、料理業界のPRに幅広く取り組んでいます。

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