米国レストランピリ辛情報 「日本人経営者のイタリアンチェーン」(綜合ユニコム 月刊レジャー産業資料2005年4月号 NO.463)

昨年から今年にかけ、日本の外食企業がニューヨークに続々と進出している。日本の外食チェーンも米国でチェーン展開をしようと虎視眈々と狙っているが、成功例は少ない。それは日本と言う特殊な文化圏で作られた業態が米国には特殊すぎるからではないかと言われている。米国でチェーン展開をしている有名企業は少なく、一番有名なのはロッキー青木氏が1964年にニューヨークに鉄板焼きステーキのベニハナを開店しチェーン展開をした例だ。氏は家族の経営していた日本の紅花とは全く異なる、米国人の好きな牛肉のステーキを日本的な雰囲気サービスで提供し大成功した。現在ベニハナはマイアミを拠点として、57の鉄板焼店舗、ドーラク・スシを1店舗、ハル・スシを5店舗、RAスシ・バーを8店舗、その他22店舗のライセンス店舗を展開している。ロッキー青木氏の大成功のあとしばらく日本人経営者は現れなかったが、現在400店のチェーン造りに成功しつつある日本人経営者がいる。
フィッシュ・アンド・チップスのロング・ジョン・シルバーに加盟していたフランチャイジーのジェリコという会社が、1988年にケンタッキー州のレキシントンにグラッチGratziと言うファスト・フード・イタリアン・レストランを開店した。1989年には店名をファゾーリFazoliと変更し、4店舗を展開した。
1990年に現在のファゾーリの親会社である、シード・レストラン・グループが設立され、ジェリコ社からファゾーリを買い取った。そのシード社を率いるのがToyoda氏だ。Toyoda氏はゼネラルミルズ社やジェリコ社での経験後、日本のダスキン社の投資によりシード社を設立したのだ。日本企業の出資による日本人によるチェーン展開が開始されたのだ。同社はケンタッキー州などの中西部を中心に展開を開始したので、西海岸や東海岸にしか視察旅行をしない日本人には注目を浴びていなかったが、2004年7月のR&I誌発表の外食ランキングで73位、395店舗、1店舗平均年間売上105万ドルと急成長している。同社の特徴はCEOのToyoda氏が40%、ダスキン社が25%の株を所有し、残りの35%を従業員が保有していると言うことで、従業員に対するモチベーションに配慮した経営として有名だ。
2002年にやっと西海岸に進出した同社の最新店舗を拝見したが、その洗練されたオペレーションと店舗造りに感銘を受けた。
ファゾーリは当初ファスト・フードとしてサービス速度に注目しながら開発されたが、健康的な商品の特徴やHPによる栄養価の積極的な公表などにより、後にファスト・カジュアルという業態に分類されるようになった。ファスト・カジュアルという業態は急成長しているが、企業の財務体質が貧弱で100店舗を越えようとする場合には大手チェーンの傘下に入らざるを得ない。先月号で紹介したイタリアンのパスタポモドーレはウエンディーズの傘下に入ったが、ファゾーリはまだ単独で400店舗までのチェーン展開に成功している。同じイタリアンなのに何が異なるかというとオペレーションの完成度の高さだ。パスタポモドーレは有名なシェフの開発した業態であり、調理にはある程度の熟練を要求する。それが人気の元であるが、同時にチェーン展開の速度が遅くなる理由である。ファゾーリは食材の品質にこだわりながらも、素早いサービスを実現しており、そのため、持ち帰りだけでなく、ドライブスルーサービスを実現している。ドライブスルーのサービスを実現するにはファスト・フードと同じサービス時間を実現しなくてはならず、調理機器やシステムを高度に洗練させる必要があり、そのために多くのファスト・カジュアルはドライブスルーサービスを提供することが不可能なのだ。
もう一つの成功の理由は積極的な商品開発と既存商品のレベルアップだ。素早いサービスを実現しながら新商品を開発するのは至難の業であるが、それを実現し、さらに、ファスト・カジュアル業態としては客単価4.5ドルと低いのが消費者に広く指示されている理由だろう。
イタリアン風の明るい綺麗な外装の店舗に入りファスト・フードのように、カウンターで注文する。カウンターの真ん中にはサラダバーが鎮座して思わず注文したくなるように工夫を凝らしている。カウンターの背後には煉瓦状の壁があり、その後ろにコンパクトなキッチンがある。

料理は
パスタが12種類で3.59ドル~6.99ドル
ラザニアなどの焼き物が9種類で4.79~5.99ドル
ピザは16インチで11.99~12.99ドル
スライスピザは2種類で2.79~4.19ドル
サラダは9種類で1.69~4.99ドル
子供メニューは3種類で2.99~3.49ドル
ブレッドスティックは2本で99セント、1ダースで2.99ドル

最近、開発された新商品はパニーニとサブマリンサンドイッチで
パニーニは5種類で4.29~4.99ドル
サブマリンサンドイッチは5種類で4.99~10.69ドル

と豊富だ。綺麗に手入れのされた店舗と良くトレーニングされた従業員、そして、豊富な美味しいメニューとバランスの良いイタリアンチェーンで、このまま日本に持ってきても成功するのではないかと思われる業態だ。最近はLA近辺に出店を開始しているので、ぜひ見学をして欲しいチェーンだ。

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