米国レストランピリ辛情報 「ニューヨークのデリ」(綜合ユニコム 月刊レジャー産業資料2002年12月号 NO.434)

ニューヨークの老舗デリ
先月紹介した、プレタマンジェやディーンアンドデルーカ等のファッショナブルなお店だけがマンハッタンの主役ではない。港町のニューヨークは古くから移民の町として知られ、彼らが持ち込んだ豊富な食生活を楽しむことが出来る。

今回はニューヨーク名物デリの元祖、Katz’s Delicatessenを紹介しよう。1888年にロシアから移民の一家がマンハッタンで開店して以来、ニューヨークナンバーワンのデリカテッセンとして君臨しているデリだ。

デリカテッセンDELICATESSENと言う言葉はドイツ語を語源としており、手軽に食卓に出せる料理済みの肉�チーズ�サラダを販売する店舗を意味する。ドイツや東欧から移民をしてきた人たちは、ソーセージやコーンビーフなどの美味しい食肉加工技術を持ち込むと同時に、製造した食肉類を販売するデリカテッセンもニューヨークに広めていった。今では調理済み食材を持ち帰りできる小型の食品スーパーまでデリと言うようになっているが、Katz’sデリカテッセンはイートイン主体のお店だ。

East Houston Streetの角にある古いお店の入り口をくぐり抜けると、チケット伝票をもらう。店内は百数十席の古いビアホールのような大型のお店で、客席に面して大きなオープンキッチンのカウンターが並んでいる。入り口に近いカウンターではニューヨーク子の大好物のホットドックとビールを売っている。ニューヨークのホットドックはドックバンズにグリルしたソーセージとサワークラフトを挟む。勿論マスタードだけの味付けだ。その次のカウンターでは、サンドイッチを作ってくれる。売り物はパストラミとコーンビーフをライブレッドにたっぷりと挟んだサンドイッチだ。30日以上もかけて熟成させた昔ながらの製造にこだわっているパストラミやコーンビーフだ。添え物はフレンチフライとどでかいピックルスだ。ピックルスも生の胡瓜を漬けた、ぱりぱりとした歯ごたえの浅漬お新香のように新鮮だ。古いくたびれきったお店だが、客席の壁に貼られた顧客の写真、ニューヨーク市長、クリントン大統領、ウイル・スミス等の映画俳優達が、ニューヨークデリ元祖を保証しているかのようだ。パストラミサンドイッチ、コンビーフサンドイッチはそれぞれ9.35ドルもする高級店だ。

もう一つ見逃してはならないのがZebra’sだ。持ち帰り総菜と食材のデリだ。Dean & Delucaは高級すぎてなかなか買えない価格帯だが、Zebra’sは庶民にも買える値段帯で夕方時には日本のデパ地下も顔負けの混雑ぶりだ。しかも品数が豊富だ。スモークサーモンやニシンの売り場だけで5台ほどのショーケースを占めている。職人が大きな俎板の前に立って、磨き込んで細くなった鋭い包丁でサーモンを丁寧に薄くスライスしていく。脂ののりきったスモークサーモンを眺めると、思わず注文しようとするのだが、ここはマンハッタン、買う際には必ず試食をするのが流儀だ。どんな味か店員に質問すると、高級な食材でも薄くスライスして試食させてくれる。味を確認しないと店員に怒られてしまうような気前の良さがこのお店の売り物だ。豊富なチーズ売り場も、どんなチーズを食べたいか聞かれ、希望の味を言うと目の前ショーケースに並んだチーズを取り出し、包装をはずしスライスしてくれ試食させてくれ、美味しければそのチーズを買うようになっている。包装したチーズから切り取っても量り売りだから問題ないし、客は味を確認して買うから間違えないと言う仕組みだ。

今、日本ではデパ地下総菜のブームで、食品スーパーの顧客がデパ地下に取られている。その原因の一つが対面販売をしない無味乾燥な食品スーパーのサービスにある。目が肥えた現代の客は、生産性を高めるため食品加工センターでパック詰めした食品を販売する食品スーパーから、目の前で調理をする活気のあふれるデパ地下に流れ込んでいるのだ。ニューヨークのデリから学ぶのは豊富な商品の品揃えだけではなく、サービス精神に富んだ客との応対ではないだろうか。

<Katz’s Delicatessen>
205 East Houston Street
TEL 212-254-2246
http://www.homedelivery.com/katz.html

<Zabar’s>
2245 Broadway(bet 80th & 81th Sts.)
TEL 212-787-2000
http://www.zabars.com

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