天高く馬肥ゆる秋、今日も雲ひとつない秋晴れの空が広がるヴァッレ・ディートリアです。
昨日は塩漬けオリーヴ用のベッラ・ディチェリニョーラ種を収穫し渋抜き作業を始めました。
オリーヴはイタリア国内で栽培されている種類だけでも400以上あると言われています。
イタリア随一のオリーヴの生産地、プーリアでも各地特産の品種というのがあります。大粒で熟しても鮮やかな緑色が特徴のベッラ・ディチェリニョーラ種はその名の通りプーリア北部のチェリニョーラという町周辺が有名な産地ですが、我が家にも数本植えております。
食感と独特の旨みのある味は数多いオリーヴの中でも一際特別な品種です。
渋抜きの方法は苛性ソーダを溶かした水に漬け何度か水を替えながら数日置いておくというもの。飽和食塩水の中に半年ほど漬けておくというやり方もありますが、ベッラ・ディチェリニョーラ種の場合はコリっとした食感も残したいのでうちでは苛性ソーダを使います。
日本国内産のオリーヴの浅漬け(新漬け)という商品もありますね。そのほとんどは緑色をしていますが、熟す前の若いうちに収穫したものと思われます。漬物文化のある日本では浅漬けと言えば若い緑色の実で食感も硬いものの方が好まれるからだと思いますが、熟して黒紫色の実はまた違った美味しさがあるものです。
日本国内でオリーヴの栽培が増えていますが、十分な食用オイルが取れるようになるには年月がかかるため、国内産のオリーヴはほとんどこのように実のままの商品か、化粧品に少量配合されるといった使われ方が多い様です。国内の名産地として知られる小豆島でも栽培が始まってからまだ100年ちょっととのことですから、樹齢数百年以上の大木が樹海の様に広がるプーリアの我が家周辺とは収穫量にしてもオリーヴと人の関わりにしても比べものになりません。
日本でも100年後を見越して今から大規模にオリーヴを植えるといった計画は壮大すぎるでしょうか?数百年前の人々が植えたオリーヴの木から採れるオイルを私たちは今食しているんだと考えると感謝しかありません。100年後の未来も変わらず同じ木から採れるオイルを食べることは可能です。だとしたら、今からでもオリーヴを植林するのは遅くないと思います。
平和の象徴としても知られるオリーヴの原産地とも言われる中東地域で戦争が続いているのは、なんとも悲しいことです。彼の地ではどれほどオリーヴの大木が戦火に焼かれてしまったのでしょうか。
プーリアの我が家周辺では今年もオイル用オリーヴの収穫がそろそろ始まる時期になっています。夏の間雨が少なかったので収穫前にもう一雨降ってくれないものかと皆願っています。そんな日常がいかに貴重なことかとも思えます。