weekly Food104 Magazine 2006年2月15日号

メルマガバックナンバー

● 米国レストランNEWS
● 食ビジネスニュースリリース
● 王利彰のレストランチェック

△▼△▼△▼△▼△▼△

● 米国レストランNEWS———————————————■□

■ シカゴ・トリビューン紙より チョコレート好きは料理にも使う!

2月14日は毎年恒例のバレンタインデーですが、今週のシカゴ・トリビューン
紙では、チョコレート大好きな方たちへ、ディナーコースの最初から最後まで
チョコレートを使った料理を紹介しています。カカオは通常デザートで甘さを
ひきたてますが、メキシコ料理で使われる、唐辛子とカカオから作られる「モ
レ」ソースのように、こくと質感を増します。チョコレートは通常、チリ、ジ
ンジャー、クローブ、スターアニス等のスパイスとよく合い、風味豊かで素朴
な味をかもしだします。またスパイスだけでなく、肉類とも相性は抜群です。
シカゴ市内のレストラン、Moto(モト)ではリブアイ・ステーキのソースとし
てメキシカン・チョコレート、シナモン、ココアパウダーと水のミックスを使
っています。

さて、コースの最初は、まずはウオッカとチョコレートリキュールのチョコレ
ート・マティーニからスタート。グラハム・クラッカーのかけらが、グラスの
へりに付いています。バーテンダーがドリンクを持ってくる際に、炙られたマ
シュマロの出す炎がムードをひきたてる、S’moretini(スモティーニ)。マシ
ュマロを炙ってグラハムクラッカーにチョコレートと一緒に挟んで食べるおや
つ、スモアのマティーニバージョンです。アペタイザーには、中近東のなすを
使った料理、ババ・ガヌーッシュをココア・パウダーとココア・ニブというカ
カオの豆をローストして砕いたものを加えてアレンジします。サラダには、カ
カオ・ニブでスパイスアップされたホタテとレタスのサラダ。メインコースに
は、バサと呼ばれるナマズに似た魚を使ったベトナム料理をアレンジして、ケ
ージャン・スパイスとカカオで味付けされています。また、チョコレートとギ
ネスビールで煮込まれたビーフシチュー。最後のデザートには、カルーア・リ
キュール入りのチョコレート・クリームブリュレです。

ぺニンシュラ・ホテル内の週末のチョコレート・ビュッフェはケーキ、クッキ
ー、タルト、ロリポップやチョコレートのスープまであり、チョコレート好き
にはたまらないバレンタイン・フェストです。

○シカゴ・トリビューン紙
http://www.chicagotribune.com/

■ ラスベガスの食べ放題バッフェ人気続く

ラスベガスと言えば、All-You-Can-Eatのビュッフェが有名です。最近は著名
なシェフ達が次々ラスベガスに高級なレストランを開店していますが、ビュッ
フェは約60年近く、ホテル・カジノの主要なビジネスとなっており、今もダウ
ンタウンエリアから中心街まで至る所にビュッフェ・レストランがあり、いま
だに根強い人気があります。

その中でもベラージオ・ホテルの内の寿司やタラバ蟹等が含まれた週末のディ
ナー・ビュッフェは$34.95で、年間の顧客数はなんと150万人です。その向か
いのバリーの毎週日曜日に提供される、ステアリング・ブランチは$65と高め
なものの、シャンペーンから始まり、キャビアやメイン州産のロブスター等と
豪華で大人気、予約が必要です。

ラスベガスで8店舗のビュッフェを経営する、ステーション・カジノは、最近1
店舗の大規模な改装工事を終え、9店舗目の新店舗を今年4月にリゾートホテル
内に展開する予定です。MGM・ミラージュもトレジャー・アイランド内に「Di
shes」(ディッシュ)を2004年にオープン後、すぐにミラージュ内に「Cravin
gs」(クレービング)をオープンしました。また、MGMグランド内のビュッフ
ェをアップグレードするために改装が予定されています。ブレックファスト、
ランチ、ディナーをカバーするブッフェはレストラン内に18時間客足が途絶え
ないということになります。ビュッフェがホテルの中にあることで、客をカジ
ノ・ホテル内に留まらせることができるので、ラスベガスでは強力なレストラ
ン業態としていまだに評価されています。

誰がビュッフェを考えたかわかりませんが、ずいぶん昔からその食べ方はあっ
たようです。フレンチが語源で1972年のオックスフォード辞典に初めて登場し
ました。ラスベガスにビュッフェは60年前、マクドナルドHerb McDonaldさん
(2002年死去)が偶然のきっかけで始めました。夜遅くまでカジノで過ごして
いたマクドナルドさんはシェフに冷たい肉料理とチーズを用意させ、カジノの
バーでそれを食べているときに、ギャンブルを楽しんでいる人から注目を浴び
ました。そこで、ギャンブルに忙しい人にも簡単に食事ができるのなら喜ぶだ
ろうと、営業許可を取りビュッフェのビジネスをスタートしたのでした。カウ
ボーイ・ビュッフェと名づけ、当時の料金は1ドルでした。その食べ放題の仕組
みは大ヒットしラスベガス名物として定着したのでした。

ビュッフェの語源はThe Food Timelineという online reference toolで検索
http://www.foodtimeline.org/

ラスベガスの地元紙が紹介するレストラン情報
http://www.reviewjournal.com/db/dining.results

(イリノイ州シカゴ在住 畑田ひろ子)

△▼△▼△▼△▼△▼△

● 食ビジネスニュースリリース —————————-■□

■ リンガーハットより「とんかつ浜勝100号店記念メニュー」期間限定発売

株式会社リンガーハットは、2月14日、創業43年になるとんかつ専門店「とん
かつ浜勝」100号店(福岡大名店)を出店しました。これを記念して、全国の
「とんかつ浜勝」で2月17日(金)より「とんかつ浜勝100号店記念メニュー」
を期間限定、感謝価格1,000円(税込)で発売します。
販売期間は3月12日(日)までを予定しています。
※JR御茶の水、イオン津田沼店では販売しません

「とんかつ浜勝100号店記念メニュー」は、「記念ミックスかつ定食」、「豪
華かつ丼」、「浜勝特選ロースかつ定食」の3種類となります。価格は3品とも
に感謝価格1,000円(税込)でのご提供です。

「記念ミックスかつ定食」は、ロース50g、ハーブチキン50g、エビフライ1本
のミックスプレートです。「豪華かつ丼」は、かつ丼(ロース80g)にエビフ
ライ1本をトッピングした、豪華でボリュームたっぷりのかつ丼です。「浜勝
特選ロースかつ定食」は、特選素材のハーブ豚ロース100gを使用し、通常1,344
○とんかつ浜勝ホームページ: http://www.hamakatsu.jp/

■ 株式会社インフォマートより新コンテンツ「食材甲子園」のお知らせ

株式会社インフォマートは、マイクロソフト株式会社と協力し、2006年2月6日
より共同で、国内地域食材産品の新企画として「食材甲子園」をスタートさせ
ました。「 食材甲子園」とは、インフォマートが1998年より運営しているフ
ード業界企業間取引プラットフォーム「 FOODS Info Mart」とマイクロソフト
が2002年より運営している、中堅・中小規模事業所向けのビジネスポータルサ
イト「経革広場」を組み合わせた新しいコンテンツとなります。

両社は、地域の自治体・有力団体・企業と協力のもと、地域活性化の一助とし
て、地場の食材業者に対し「食材甲子園」のサービスを提供します。この「食
材甲子園」を利用する、各地域の食材製造・販売業者及び生産者は、食材仕入
のある買い手企業とビジネスマッチングを実現しながら更なる地場企業との取
引強化や全国の新規取引先の開拓に繋げてもらう事が出来るしくみとなってい
ます。

また「食材甲子園」では、仕入(買い手)企業を募集し、会員化します。会員
となった企業は、無料でコンテンツを利用し、「食材甲子園」に参加する地域
産品を購入することが可能となります。企業間での商取引における商談から決
済までの各機能はインターネットを通じて利用することが出来るようになりま
す。

○「食材甲子園」のコンテンツについて
食材甲子園に参加する地域の食材販売ポータルサイトを開設
食材製造・販売業者及び生産者における取扱食材の企業間取引の促進
仕入(買い手)企業の募集・コンテンツ利用者としての無料会員化
販売・マッチング・商談・決済における商取引に関する各機能の提供

「食材甲子園」の活用を決定した岡山経革広場推進協議会と十八銀行において
2006年より本コンテンツを利用し、地域の食材販売を開始します。他にも準備
中もしくは検討中のエリアが複数あり、2006年中に20都道府県の新規参加を見
込んでいます。

○関連HP: http://www.infomart.co.jp

△▼△▼△▼△▼△▼△

● 王利彰のレストランチェック———————————–■□

■ マクドナルド50周年を記念の調理機器技術50年史 その9

フライドチキンプロジェクトが生んだ調理技術革命

シャープのヘルシオが家庭でのスチームレンジのブームをよんでいます。スチ
ームと温風を組み合わせたスチームコンベクションオーブン(以下SCOと省略)
はずいぶん以前から、業務用の調理機器として使われていました。元々はラシ
ョナルというドイツの専業メーカーが開発したもので、フランス料理などの高
級レストランで使われていました。私がSCOに注目したのは一旦料理して冷凍
した食材を再加熱する際に、元と同じ柔らかさに仕上がるという点です。電子
レンジなどで再加熱すると肉質が硬くなるのですが、SCOは劣化が少ないので
す。ここに注目し、検証を重ねたのです。

ただし、ベテランのシェフのいるレストランで使用するSCOと、アルバイトが
調理するファスト・フードでは使用条件が異なります。よりタフな仕様が要求
されます。また、洋食レストランでの調理の場合には生食材だし、肉を焼くこ
とが多いためあまり蒸気量は必要でありませんが、冷凍食品を使う場合にはよ
り多くの蒸気が必要になるのです。

ということで、市販のSCOをベースに以下のような改造を加えたのです。調理
機器を開発するときにどのような仕様を決めるのか、参考にしてみてください。

<スチームコンベクションオーブン(以下SCOと省略)とは>
SCOは30年ほど前にヨーロッパで考案された。コンベクションオーブン(以下C
Oと省略。熱風を循環させ加熱するオーブン)にスチームジェネレーター(以
下、蒸気発生器と省略)を付け加えたオーブンであり、3つの機能がある。1つ
は、COとして、2つ目はスチーマーとして蒸す機能、3つ目は、COとスチームの
組み合わせのコンビネーション(高温蒸気)である。

SCOの最大のメリットは、コンビネーションの状態での高温蒸気を利用した調
理である。ここで言う蒸気とは100℃以上に加熱された状態の蒸気である。水
1ccを加熱し1℃温度を上昇させるのに必要な熱エネルギーは1calである。1cc
の水を氷にするには80cal、1ccの水を蒸気にし蒸発させるには539cal必要であ
る。つまり蒸気発生には最も熱エネルギーが必要なのである。そして100℃以
上の状態の蒸気を乾燥蒸気と呼ぶ。180℃の温度の状態でコンビネーション加
熱をしているオーブンの内部を見ても蒸気は見えないのである。

乾燥蒸気は、庫内に100℃以下の調理食品が入った時そこに露結し水になる、
その時蒸発潜熱の大きなエネルギーが食品に集中して伝わるので調理が早いの
である。オーブン庫内のステンレス板は100℃以上に加熱されている為、蒸気
は露結せずに食品のみに集中して熱が伝わるのである。特に冷凍食品を調理す
る時にこの機能の効果が高く、電子レンジよりも大量に冷凍食品を加熱出来る
のである。

また、高温の蒸気で加熱する為、調理食品が乾燥せず歩留がよい。COの場合歩
留は75%位であるがSCOは95%位の歩留である。電子レンジで冷凍の状態から調
理したり、再加熱する時に加熱しすぎると、食品が乾燥し固くなると言う欠点
があるが、SCOは蒸気で加熱する為、乾燥しにくくまた調理時間の許容範囲が
広いというメリットを持っている。スチームを使用する為に、違ったものを同
時に調理しても臭いが移り難く、調理中の煙の発生が少なく、同時に複数の食
材を調理することが可能だ。普通のCOだと調理後の清掃が大変であるがSCOは
アルカリの洗剤を散布しスチームで蒸した後、水スプレーで簡単に洗い流せる
ので作業が楽であるという利点もある。

(SCOの基本構造)
SCOは蒸気発生器と、オーブン庫内、コントロール装置で構成されている。一
般的に蒸気発生器は独立したタイプであり、そこで100℃に加熱された蒸気を
発生し、それをオーブン庫内に導入する。100℃の蒸気で蒸す場合は連続での
加熱のみとなり、コントロールは時間のみとなる。真空調理などで使用する場
合は、40℃から95℃の範囲で任意に温度を設定し、蒸気発生器のON、OFFで温
度をコントロールする。100℃の蒸気と言ったが、機種により95~103℃に加熱
された蒸気になっている。100℃以上の蒸気だと蒸す時間が早く且つ蒸気の回
りが早いという利点がある。特に、中華饅頭などを蒸した時には表面のべたつ
きがなくきれいに蒸し上げる事が可能である。

コンベクション加熱の場合は、ファンにより庫内の空気が吸い込まれそれが熱
交換パイプの間を通り加熱され、庫内の食品に吹きつけ加熱する。高温の蒸気
とコンベクションでのコンビネーション加熱は、100℃の温度に加熱された蒸
気が、それ以上の温度のオーブン庫内に入り、熱交換パイプの間を通る事によ
り、加熱されることにより高温の乾燥蒸気となる。飽和蒸気量は温度が高くな
るに従いやや減少していく。その為、機種によっては庫内の温度が上昇すると
蒸気発生量を減少させていくタイプがある。

一般的にスチームのみで加熱している時よりは、コンビネーションで加熱して
いる時の発生蒸気量を減少させている機種が多い。これは、飽和蒸気量以上を
投入しても庫内の排気筒から余分な蒸気が逃げていく無駄を防ぐ為でもある。
ただし、これは室温や冷蔵状態の食品を調理する時に言える事であり冷凍状態
の食品を直接加熱し調理する時には、大量のエネルギーが必要であり理論以上
の蒸気が入った方が調理時間が短縮される。各冷凍食品メーカーで、電子レン
ジに変わる冷凍食品の大量調理機器として研究されている。

<スチームコンベクションオーブン仕様書>
一般的なスチームコンベクションオーブンはレストラン仕様であり、ファスト
フードなどのアルバイトが使用するように簡単にはなっていません。そこでア
ルバイトでも簡単に、安全に使用できるように以下の改造を加え、仕様書とし
たのです。

<1>メニュー数 の決定
フライドチキンだけでなく、ピザ、グラタン、その他将来予測されるメニュー
数に対応できるように設定する。メニュー数や次のモード数はメモリーの容量
に影響するので慎重に設定しなくてはいけない。

<2>モード
調理モードのステップの決定。モード数があまり多すぎても現場の対応ができ
ないが少ないと複雑な加工ができない。そこで最低限2ステージの加熱モード
を組み合わせるようにした。

<3>時間表示、温度表示 のディスプレー
セット温度、調理温度の表示と切り替え方法を明確に定めないと調理中の温度
確認ができなくなる。

<4>スチームジェネレーターの水の排出
水を排出する時間の管理。一般的なスチームコンベクションオーブンは一定時
間蒸気を使用すると、自動的に排水してしまい、調理ができなくなるので、閉
店時電源を切る時に排水するように変更。

<5>調理中の時間表示
各ステージの合計時間を表示し、カウントダウンで残り時間を表示する。その
時間を見ながら次の用意や段取りができる。

<6>調理時間
標準は99時間までであったが、そんな長い時間は必要ない。レストランではな
くファストフードだから、秒単位の表示が必要だ。

<7>排気の蒸気コントロール
オーブンからでる蒸気がダクトに入ると水漏れの原因となるので、普通はウォ
ーターミストを噴射するが、水を大量に消費するのでダクトフィルターの精度
を上げ、水の使用量を削減した。

<8>オーブン内部のガス配管
米国では全国天然ガスかプロパンガスで問題ないが、日本の場合は地区により
カロリーが低くガス圧の低い地区があるので、正規の出力がでるようにスチー
ムジェネレーターに行くパイプの径を変更する。メインのバーナーについても
検討する。

<9>ファンの前のフィルターはつけない。
通常はファンの前にフィルターをつけるが空気抵抗が増えるので、清掃の頻度
を頻繁に行うことによりフィルターを装着しない。

<10>オーブン下の足の高さは、10インチ、25.4mmとする。
清掃をし易くするために米国の衛生基準NSFよりも高くする。

<11>キャスターは取り付けない。
床が不安定であるのでキャスターをのぞく。

<12>スチームモードで温度コントロール出来るようにする。
従来の機種では60~95℃までコントロール出来るようになっているが、今後調
理品目が増加することを考え、40~95℃と105~300℃までコントロール出来る
ようにする。OVENモードでも現在は温度設定を90℃からしか出来ないが、それ
を40℃~300℃の範囲で出来るようにする。

<13>電圧対策。今回はトランスをつける。
米国の高い電圧に対応するモーターに変更するのは費用がかかるので、製造台
数が十分な数になるまでは別途トランスを装着して対応する。

<14>サイクルの対60とサイクル数が異なるとモーターの回転数に影響する。そ
うするとファンの風量が異なり、調理時間が影響するので、ファンとファンシ
ュラウドの径を変更を検討する。

<15>WAITライトの表示
温度が低い状態で調理をしないように設定温度よりある程度低いと点灯するよ
うにする。熱すぎる場合にもHOTライトを点灯させる。このあたりの警告灯の
仕様はアルバイトに調理させる場合に重要であり、すべての項目を詳細にチェ
ックする。

<16>表の表示盤にはメーカー名の表示をしない。
すべての調理機器の表示は自社の会社名のみである。

<17>トレイサイズ
標準より大型のメーカー開発の特殊サイズを利用する。テフロンはより耐久力
の高い、シルバーストーン加工する。ラックの足を10mmカットする。(トレイ
とトレイの間隔を狭くしてより多くのトレイを入れられるようにするため。)
トレイとラックはコストの安い米国で試作し日本に送りチェックする。

<18>清掃用の水スプレーを取り付けられるようにする。
閉店時に清掃を容易にするように水スプレーを標準で取り付ける。

<19>バーナーの改造
日本のガスに適合するように独自に改良を加える。

<20>スタートボタンを押した時に音が出るようにする。
デジタル式の操作盤はタッチが良くないので、音を出して、確認できるように
する。

<21>米国メーカーのサービスマニュアルの翻訳
店舗で簡単なメインテナンスや整備ができるように翻訳を急ぐ。

<22>コンビネーションモードの状態でフルスチームが出るようにする。
通常スチームコンベクションオーブンは高温で蒸気を入れて調理するコンビネ
ーションモードの状態では蒸気量を通常の1/5ほどに低下させるが、今回は冷
凍食品を使うために大量の蒸気が必要であり、フルスチームがでるように改良
する。しかし、蒸気が大量にでると無駄なエネルギーを消耗するので、特殊な
ソフトを考案し、蒸気が無駄にならないようにした。

<23>デミネライザーの取付について
スチームコンベクションオーブンの一番のメインテナンス上の問題点は、水を
沸騰させる時に発生する水分中のカルシウム分の堆積である。あまりたまりす
ぎると蒸気発生量が落ち最悪の場合、蒸気発生機であるスチームジェネレータ
ーを交換しなくてはならない。そのため、普通、カルシウム分を除去するデミ
ネライザーフィルターを取り付けるが、高価であるし、水圧が落ちて十分な水
を供給できない場合がある。この機種ではクリーンサイクルという酸性洗剤の
自動注入装置を取り付け、フィルターを不要にした。

<24>安全装置インターロックの取付
熱調理機器を使用する際には排気ダクトで燃焼空気と周囲の熱を排気するが、
ダクトを作動しないで加熱調理機器を点火し作動させると高温の燃焼空気がダ
クト内に入り、内部に堆積した油分に着火する危険がある。そのため、排気ダ
クトのスイッチを入れないと調理機器に電流が流れないようにする。ガス調理
機器も電気がないとコントロールボードが作動せず点火ができないので安全だ。

<25>クリーンサイクルに対する水圧の影響とその対策。
酸性の洗剤を自動的にジェネレーターに注入する機能がついているが、水圧が
低いと作動しない。現在のポンプはベンチュリータイプで負圧で吸い込むタイ
プであるが、これを小型の電動ポンプに変更する。

安全対策については以下の内容をチェックした。
<1>過熱防止安全装置ハイリミットコントロール
オーブンの本体に1つ、機械式のサーモスタットをオーブン庫内に取り付け。
600°Fで作動し自動復帰する。庫内温度の温度調節用のサーモスタットはハイ
リミットも兼ねており、600°F以上で作動するので2重の安全性がある。作動
時にはブザーが鳴りサービスライトが点灯し気がつくようにする。

<2>スチームジェネレーターのハイリミットコントロール
電気タイプの温度センサーを取り付け、温度が水の沸点以上の250°Fにあがる
とガスを消すようにする。

<3>スチームジェネレーターの空炊き防止
ローレベルとハイレベルの水位センサーを取り付ける。1つのプローブが壊れ
るともう1つのプローブに自動的に切り替わり、ローとハイレベルのコントロ
ールを1つのプローブでコントロールする、同時にサービスライトを点灯しト
ラブルを知らせる。2つ壊れるとオーブンの作動を止める。

<4>蒸気爆発の防止
スチームジェネレーターから水が溢れオーブン庫内に入ると熱交換機に大量の
水が当たり、蒸気が瞬間に大量に発生し爆発する事があるがその対策として、
蒸気の出口を熱交換機の下にして、水が直接当たらないようにした。

<5>ガスの立ち消え防止
自動復帰する。もし90秒間消えたままだと、オーブンは消えたままになり、サ
ービスライトが点灯する。

<6>電圧の変動時
電圧が25%下がると電源を切り正常になると自動復帰する。
雷などの事故によるコントロールボードの破損を防ぐために、2000Vの瞬間電
流に耐えられるようにし、時期モデルでは4000Vに対応する。

<7>ノイズ対策について
周囲の電気機器の作動時のノイズがコントロールボードに影響しないように
米国陸軍規格のMILスペックに準拠させる。

○小道具の開発
オーブンの開発では誰でも調理できるように色々な小道具の開発が必要でした。

<1>トレーとラックの開発
チキンを再加熱するには、トレーにラックを乗せその上に並べなくてはいけま
せん。トレーの上に直接並べて加熱すると鉄板に接したチキンの部分が、堅く
なってしまいます。そこでラックを使うことにしました。ラックの下部とトレ
ーの間に適当な隙間がないと加熱した空気が行き渡らないので、中心温度が上
がりませんが、あまり離れるとオーブンの調理能力が低下します。そこで最適
の間隔を見つける作業を行いました。

また、トレイには加熱調理後大量の油や滓がたまる。そのまま加熱を何回か繰
り返すとトレイに付着した油分が固形化しとれなくなるという清掃上の問題も
生じます。また、再加熱した鳥をラックから取り出す際に、ラックの網の部分
に衣が付着しはがれてしまいます。丁寧にやろうとすると時間がかかってしま
います。油で揚げる際には油がくっつくのを防ぐわけですが、焼く場合にはそ
うも行きません。そこでトレイとラックにテフロンコーティングをすることに
したのですが、ラックの網の部分のテフロンコーティングが長持ちしないと言
う問題を抱えました。劣化したら再度コーティングをすればよいのですが、コ
スト的に見合いません。そこで、苦労してテフロン素材を取り付ける手法を開
発し、耐久力を持たせることに成功しました。

次に問題になったのは鳥の部位の大きさが異なり、オーブンの風が均等に当た
らないので、温度ムラがでるという問題点でした。そこで試行錯誤しながら部
位による並べ方を作り上げたのです。

オーブンで加熱したトレイを取り出す際には熱いので、断熱のグローブをはめ
るのですが、家庭用などの布製では、油や水で濡れると、断熱効果がなくなり
火傷をしてしまいます。そこで、溶鉱炉などで使われる工業用の300℃まで耐
えられるシリコンゴムの高価なグローブを探し出しました。

<2>清掃
新型の調理機械を導入するに当たっては内部の清掃も簡単にできないといけま
せん。従来のオーブンクリーナーでは十分でないので、独自に安全性の高いク
リーナーと仕組みを考案しました。スチームジェネレーターのカルシウムスケ
ールの除去には独自に酸性の洗剤を開発したのです。

<3>マニュアル
新メニューであるので社員用とアルバイト用の詳細なマニュアルと、店舗導入
に当たってのチェックリストも作成しました。

<4>メインテナンス
調理機器は必ず壊れる物であり、店舗の社員が簡単に修理できるようにメンテ
ナンスマニュアルを作成すると同時に、全国での業者によるメンテナンス体制
とパーツの供給システムの構築を行いました。

○結果
SCOを使ったフライドチキンプロジェクトの完成と実験には2年間を費やしまし
た。結果はK社の新鮮な雛鳥を入手できず、また、美味しい米国の鳥を使う時
間も無いという品質上の問題と、さらにはマーケティング上の混乱と言う、2
つの問題から販売実績としては失敗に終わってしまいました。

しかし、工場におけるフライドチキンのライン化とSCOを使う調理方法は色々
な分野で新商品を生み出すことに成功しています。この工場で加熱処理をした
鳥は今でも食品スーパーやピザの宅配で使われているのです。東南アジアのマ
クドナルドでは工場で加熱処理をしたフライドチキンを真空パックし、店舗で
そのまま解凍加熱する手法を考案し実用化しました。

基礎研究から真剣に行うと色々幅広いデーターを蓄積でき、それを他の食材に
応用することにより調理技術の合理化に役立つのだという貴重な原理原則を学
べたのは幸いでした。

この実験は実は世界の調理技術家から注目を浴びました。マクドナルドのよう
に3万店舗を超えるような企業では店舗の調理は最終製品の品質のバラつきを
発生させるので、工場で精密加工した食品を店舗で再加熱する手法が最終ゴー
ルです。そのためには工場の加工から店舗での加工まで精密に組み立てる必要
があるのです。その最初の取り組みがこれだったのです。私の開発した手法は
マクドナルド本社だけでなく、競争相手であったターゲット商品を扱っている
世界最大手のフライドチキンチェーンのK社にも注目されたのでした。

関連記事

メールマガジン会員募集

食のオンラインサロン

ランキング

  1. 1

    「ダンキンドーナツ撤退が意味するもの–何が原因だったのか、そこから何を学ぶべきか」(オフィス2020 AIM)

  2. 2

    マックのマニュアル 07

  3. 3

    マクドナルド 調理機器技術50年史<前編>

アーカイブ

食のオンラインサロン

TOP