米国レストランピリ辛情報 「中華のPeiwai」(綜合ユニコム 月刊レジャー産業資料2004年1月号 NO.447)
アメリカ外食の新潮流Fast-Casualの動向 その
2002年4月号「サンフランシスコベイエリアの中華料理」で紹介した1993年に創業のP. F. Chang’s China Bistro http://www.pfchangs.com/
がファースト・カジュアル業態のPei Wei Asian Diners を2000年7月にアリゾナに開店し、現在までに4つの州に20店を展開している。http://www.peiwei.com/
China Bistroはフルサービスの重装備のレストランであり、一つの町に1店舗以上開店すると自社内競合を引き起こす。そこで、China Bistroの周囲にカジュアル業態のPei Weiを衛星店として配置しようと言う考え方だ。
China Bistroは店内の内装のコンセプトは古代中国で、入り口には遺跡から発掘したかのように石造りの馬や兵士像が飾られている重厚な作りだが、Pei Weiの内外装はよりカジュアルな雰囲気で、店内にはいるとファースト・フードのようにレジが並んでいる。レジの横にはメニューボードがあり、それを見ながら注文をする。レジは2台あり1台は店内飲食用、もう一台は持ち帰り用だ。
ファースト・フードとの違いを認識させるのはレジ横に置かれたワインとビールだ。米国はキリスト教の影響から酒類販売に対する規制は厳しく、審査が必要なリカーライセンスを取得しなくてはいけない。また、酒類を提供するレストランで働く従業員の年齢制限がある場合がある。そのため、ファースト・フードやファミリー・レストランでは朝昼の需要が中心のため、お酒をおいていない。それに対して、ファースト・カジュアルの業態のほとんどは基準の緩いワインとビールを提供しディナー需要にも対応できるようにしている。
会計を終えてから数名の調理人が中華鍋で調理するキッチンの前を通り客席に案内される。キッチンを見せて、「あなたの料理をこれからここで作りますよ」と調理しているのをアッピールする仕組みになっているのだ。
China Bistroでは人気メニューの細切りチキンのレタス包み(本当の中華では鳩胸肉を使う)は6.50ドル、春巻きは2本で3.50に対して、Pei Weiでは5.95ドルと3.45ドルとほんの少し安いだけだ。メインディッシュは個人客の多いPei Weiでは2ドルほど安く設定し、ランチ対応として中華どんぶりや麺も6~7ドルで提供しているのが大きな違いだ。
そのため、ランチで軽く食事とアルコールを頼んでも12ドルほどになってしまう。決して安くない価格だ。そのため客席は年齢の高い身なりのキチンとした人が多い。今年度は15~17店のBistrosと 13~15のPei Weiを開店する予定だが、来年度はファースト・カジュアル業態のPei Weiの出店速度を加速するものと思われる。
P. F. Chang’s China Bistro 社がPei Weiを開発するに当たって参考にしたと思われるのがPick Up Stix社だ。http://www.pickupstix.com/Home.html
1990年に中国人移民のCharles Zhang氏がカリフォルニアに1号店を開いたのが同社の始まりで現在までに85店舗をカリフォルニアに開いている。同社の成功はP. F. Chang’s China Bistro と同様にアメリカ人の味覚に合うように油の使用量を減らし、代わりにワインを加えるという工夫をしたことだ。
同社は2001年春にCarlson Restaurants Worldwide Inc.に買収された。同社は56ヶ国にカジュアルレストランのT.G.I. Friday’s等を展開している(日本ではワタミフードサービスが提携し展開中)。
さて、Pick Up Stixの店舗を訪問したが、店舗は薄汚れ従業員の動きは緩慢だった。店舗デザインもカウンターを中心とした安っぽい作りであり、料理はテイクアウト対応の為か全て使い捨てのペーパー容器で提供される。味も労働者向けのような濃い味付けだった。
Pei Weiはファースト・カジュアルの主要顧客である18才~34才の年齢層で平均的な年収が75000ドルと言う裕福な顧客を獲得するために、比較的裕福な住宅地に隣接した小型のショッピングモールに立地しているが、Pick Up Stixの立地はテイクアウトという面から労働者階級の来るような安い立地を選定し、そのためファースト・カジュアルと言うコンセプトとはややはずれた店舗形態となっているようだ。
中華ファースト・カジュアル業態にはシカゴのLettuce Entertain You Enterprises, INC. http://www.leye.com が開発し、カジュアル・レストラン・チェーンの最大手Brinker International社 http://www.brinker.com/ に売却し展開を加速しているBig Bowl http://www.bigbowl.com/ もあり、今後の競争に注目される。