価格競争時代に打ち勝つ連載 第3回(商業界 飲食店経営1994年6月号)

水道光熱費の削減

コストダウン入門編 。店長は機器の原理を理解して水道光熱費削減にチャレンジせよ

水道光熱費の削減水道光熱費は売上高の3%から7%を占める経費である。飲食業では経費の節減というと、人件費や食原材料のコスト削減をいっているが、それらはうまくコントロールしないとQSCの基準を下げ、かえって売上げを下げる原因となりかねない。ところが水道光熱費は経費の低減とQSCの向上を両立させられ、しかも誰でも簡単に実施できるので挑戦してもらいたい。

水道光熱費を節約するには、まず使用量を把握する必要がある。月末にメーターを読み込んで使用量を計算し、それに単価をかけ計上する。次に調理機器の作動原理を知らなくてはならない。といっても、厨房にあるような機械には、難しいものは何もない。機械の説明書を読めば理解できるものだ。ただし、電気の基本的な原理、ガスの原理、エアコンディションの冷却原理は理解しておく必要がある。そして水道光熱費チェックリストで常時点検し、機械の清掃と、定期メインテナンスによる、省エネルギーと能力アップを図ることにより、水道光熱費の金額を最低でも10%節約することが可能である。

515店の店舗の場合は各店の機械の種類と数が異なるので、各店舗別の標準水道光熱費を作り管理目標とすると良い。全国チェーンの場合は、まず店舗の標準化と厨房の標準化と使用機器の指定をし、店舗ごとのバラツキをなくす必要がある。

<冷却機器の作動原理>

空調機を含めた冷却機器の清掃及びコントロールが水道光熱費の削減でもっとも大きな割合を占める。冷却機器の作動原理を理解し、正しく使用する方法を学んでおこう。

図1の冷却原理をみてみよう。

コンプレーサーでフレオンガスを圧縮する。圧縮されるとガスは高温高圧になり、コンデンサーに送られる。コンデンサーで冷却されると低温で高圧の液体になる。次にドライヤーで水分などの不純物がろ過され、エキスパンションバルブ(蒸発弁)に送られる。ここで、液体は気化し、低温低圧のガスになる。そのガスがエバポレーターを通り、そこに存在する熱を奪い、中温低圧のガスになる。それから再びコンプレーサーで圧縮され次のサイクルが始まるのである。

フレオンガスの低圧の圧力は蒸発圧力と言い、温度に影響する。高圧はコンプレッサーで圧縮されたガスの圧力であり、設定以上の負荷をかけた時とか、コンデンサーが目詰まりを起こし、冷却が十分にされていない場合に圧力が高くなり、場合によってはコンプレッサーが焼ききれる事がある。

例えば筆者の経験では、コンデンサーが清掃され、目ずまりのないとき、1�5坪のウオークイン冷凍庫がー10℃のとき約10分でー20℃になる。ところがコンデンサーが50%の目ずまりを起こしていると、同じ温度を下げるのに倍の20分間もかかった。コンデンサーの汚れのため10分間余分な電力を消耗するわけである。冷凍庫の規定温度を保つため30分ごとに冷却システムが作動するとすると1日24回動くわけであるから、ウオークイン冷凍庫の定格電力が2Kw/hrとすれば単価が28円/Kwなので 10分÷60分×2Kw×24回×28円×365日=81、760円

年間に無駄に使用する。従業員が無造作にドアーを開け放すと、10℃位すぐ温度上昇をおこし、作動回数は増加し、さらに電気代を浪費する。

エバポレーターに霜がついていないよう定期的に霜取りを行う必要がある。エバポレーターについた霜は断熱材と同じで庫内が十分に冷却しない原因なり、フレオンガスは熱交換されないので、気化せず液体のままコンプレッサーに戻り、コンプレッサーを壊す原因になる。

<空調機器>

空調機は室外機と室内機で構成されている。図1のコンデンサーに当たる部分が室外機である。現在では空冷ヒートポンプタイプが主力である。ヒートポンプとはコンデンサーの部分が夏場には放熱し、エバポレーター部分が冷却され、そこに空気を循環させ室内を冷却する。冬場にはガスの流れを代えコンデンサー部分で冷風を外に出し、エバポレーター部分で温風を出し暖房する仕組みである。ヒートポンプ式は一般的に電気で作動するが最近ガスヒートポンプ方式が出てきた。これは室外機の部分のコンプレッサーの駆動を電気モーターでなく、ガス燃焼エンジンで行う方式である。電気容量が少ないため、変圧器を取り付けなくてもすみ、電気代とメインテナンスコストが下がるので、現在チェーンレストランで低コスト店舗に採用され始めている。

空冷式の室外機を複数置く時には、風通しを良くし冷却が十分に行えるようにしなければならない。この設計上のチェックをしないと電気代がかかるが空調が十分に効かないと言う問題が発生する。また、コンデンサーの清掃を定期的に実施しないと電気代を大幅にロスする原因となる。

図2は最近使用されようになってきた天井隠ぺい型室内機 のタイプである。コンプレッサーは室外機に内蔵される。室内機はファンとエバポレーターのみの構造であり、冷却されたフレオンガスは室外機から送られてくる。このタイプはスペースを節約出来るので良いが、メインテナンス性は最悪である。特にファンベルトの交換は悪夢のような事態となる。また、大きな室内機と、新鮮空気と供給空気などのダクトが天井内で交錯し、エバポレーターの清掃は難儀である。設計の際注意しないと、エバポレーターの清掃用の作業穴を開けていなかったり、天井の点検穴を開けていない場合があり、清掃作業が出来ないことがある。一般的にコンデンサーの清掃は気をつけても、エバポレーターの清掃をしない場合が多いが、コンプレッサーの故障の原因になるので注意が必要である。

図3は天井カセット型室内機であり、天井隠ぺい型と似ているが、違いは室内機の下部のリターンエアーの吸い込み口が露出している点である。この図で分かるように、一般的に新鮮空気の供給は行われない。新鮮空気を供給する場合でも、風量を充分にとることは出来ない。新鮮空気を導入するときには、一般的に新鮮空気を別に取り入れる場合が多い。

このタイプの室内機は元々事務所用に設計されたため、フィルターは簡単な塵を取るような目の荒い物であり、厨房の調理の時に発生するオイルミストを除去出来ず、エバポレーターに汚れが付着することが多い。オイルミストを良く取れるタイプのフィルターに代えても、機械自体のファンの静圧が不足し、かえって風量が減って、機械に負担をかけるのでしてはならない。エバポレーターの清掃性はかなり悪く、場合によってはファンモーターを外さないと、清掃できない機種もあるが、最低、年に1回の清掃は必要である。清掃を定期的にすることにより電気代は間違いなく10%は減少する。

<排気ファンの風量>

ファンモーターの定格電力が3KW/hrであるとする。調理機器にあわせ、不要な時間は消し、それが3時間だとすると3KW×3hr×@28円=252円
1年で252×365=91、980円の節約になる。

また、ガス燃焼の調理機器は常時動いているわけではない、実際は50%位の稼働率である。そこで、ガス燃焼機器の稼働に併せて排気ファンを稼働すると、50%であると、ファンの電気使用量は抵抗が減少し、1/2以下の1/3にまで減少する。3kwのファンであると、1日の営業時間が12時間であると、年間245、280円もの節約になるのである。これはファンの稼働の電気代の節約であり、実際には、排気にともなう空調負荷も節約できるのでそのコストは年間100万円を越える場合がある。

<加熱調理機器の使用状況による使用量>

グリドル、フライヤーは使用していないときでも鉄板や油の温度を一定に保つように時々燃焼してガスを使用しており、規格能力の15%くらいは調理しなくても消費している。

仮にグリドルの規格能力が25、000kcalを1台,フライヤーが22、000kcalを2台使用していると、調理していなくても、1時間に10、350kcalのガスを消費するのである。現在、天然ガス1立方メートルは110円なので、103円を1時間に必要とするのである。仮に1日に3時間消すと、年間では103円×3時間×365日=112、785円節約できるのことになる。フライヤーの場合は、使用しないときに蓋をし熱が逃げないようにすると、30%の節約になる。1日12時間使用し、調理しない時間が4時間あり、その30%が節約できると、

44、000kcal×20%×30%×4時間×365日÷11、000kcal×110円=38、544円となる

面倒くさいから、朝きたらすぐに全部の調理機器に点火しがちだが、それを1時間短くするだけで、ガス代で年間37、595円節約できる。パートタイマーのスケジュール表を使用し、点火時間と消す時間をスケジュール化すればこの無駄を節約できる。

口火のガス使用量は一般的に150kcal/1時間であるから、口火をつける時間を朝30分間遅くするだけで使用量は大きく異なる。みなさんの店の口火の数で計算してみよう。

フライヤーを毎日使用していると、半年くらいで油槽内部にカーボンがたまり、熱効率を20%は低下させる。だから定期的にフライヤーを専用洗剤で清掃する必要がある。

これにより、年間115、632円の節約になり、フライヤーの熱効率が上がり、調理の時間が短縮し、品質も向上するのである。

<電気の加熱調理機器>

電気の加熱調理機器もガス器具と同じくスケジュール化し、使用しないときには、消すか、蓋をし放熱を防ぐ必要がある。一般的に調理していなくても10FKP20%の電気使用量がある。各機械でどのくらい使用するか計測すると良い。計測するには、調理しないでどのくらいヒーターが通電しているか、サーモスタットランプの点灯時間で計測する。サーモスタットランプがない場合には、クランプメーターを使って計測する。

<排水栓のパッキンの摩耗>

パッキンが摩耗して1秒間に1滴のしずくがしたたると1月で約1トンの量になる。東京都の上下水道料金は1トン750円であるから、1年間で9000円の浪費になる。

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