キッチンスタディー 冷却機器の種類(柴田書店 月刊食堂1993年11月号)

キッチンの能力を高める最新機器の知識

キッチンスタディー第十一回

冷却機器 その2

すいません図及び、写真が入っておりません。紙面をご参照下さい。

炭酸飲料ディスペンサー
<1>全体の構造
図1で大型のリモート機器に基づいて説明をする。原材料は、シロップ、炭酸ガス、水である。水道管から入ってきた水はまず、ウオーターフィルターで不純物と塩素臭を取り去る。
次にカーボネーターポンプにより、炭酸ガスの充満したカーボネータータンクに噴射され炭酸水になる。炭酸水は冷却水タンクに送られ冷却される。そしてディスペンサータワーに送られ、シロップと混合され完成品となる。

ボンベに詰められたシロップは、炭酸ガスボンベからの、圧力により圧送され、冷却水タンクを通り冷却され、ディスペンサータワーに送られる。

余り売れない時には、炭酸水は循環ポンプにより、冷却タンクに戻り再冷却され循環し、シロップなどを十分冷却した状態に保つ。

<2>ウオーターフィルター
フイルターはカーボンフィルターであり、一定の水をろ過した後は交換しなければならない。ろ過された水はカボネーターポンプで加圧され、カーボネータータンクに噴射される。写真1このカーボネーターポンプは、1時間当たりの送水量により分かれ、30、60、100ガロンの3種類ある。
ウオーターフィルターを交換しないで使用していると水が十分に送られない為、カーボネーターポンプが空回りして焼き切れるのである。定期的にフィルターの交換をすることに注意して戴きたい。

<3>カーボネータータンク
炭酸ガスは1次レギュレーターから2次レギュレーターに送られ、そこで2種類の圧に減圧される。シロップタンクのシロップの圧送と、カーボネータータンクでの炭酸水の製造である。シロップの圧送の圧力は、距離によってやや異なるが一般的に50~60psiである。ダイエット飲料等の場合、さらに減圧しないと、泡が立ちすぎるので注意されたい。カーボネータータンクヘの圧力は80~90psiである。
この圧力に保たれたカーボネータータンクに水が噴射される事により、炭酸水が作られるのである。メーカーでは、瓶のガスボリュームは3.7、缶は3.5、ポストミックスは3.3であると言っている。ガスボリュームで3.5というのは、液体の量の3.5倍の量の炭酸ガスが溶け込んでいると言う事であり、数値が多い方が炭酸ガスが多く溶け込んでいるのである。

カーボネーターのタイプには2種類ある。ドライタイプと言ってタンクが室温の状態におかれている物と、ウエットタイプと言って冷却水の中で冷却されている物である。水温が低いほど炭酸ガスの溶け込みは多くなるので、品質を考えるとウエットタイプのカーボネーターの方が良い。ドライタイプのカーボネーターを使用する場合でも、カーボネータータンクに水を噴射する前に、冷却水内で事前に予冷する事により炭酸ガスのガスボリュームを上げる事が可能である。

カーボネータータンク内には、水の他は炭酸ガスが充満しているわけであるが、水に空気の泡として含まれている窒素ガスなどが、代わりにタンク内に充満する事がある。窒素ガスは水に解け込みにくいので、余り溜まると炭酸ガスの量が少なくなりガスボリュームが少なくなる。時々、タンク内のガスを放出し、いつも炭酸ガスが充満するようにする必要がある。

<4>冷却タンク
炭酸水と、シロップは冷却タンク内を通り、冷却されるのである。冷却タンク内にはエバポレーターがコイル状で周囲を取り囲んでおり、内部に貯められた水を冷却し、アイスバンクを作る。写真2。コンプレッサーはアイスバンクの厚みにより作動し氷をいつも一定の厚みを保つようにする。昼間のピーク時には大量の飲料が出るが、その氷と、コンプレッサーの作動により十分に冷却される。内部の水の温度を一定に保つために、アジテーターが付いており冷却水をかき回している。アイスバンクの氷の厚さの検知は、微電流を流し、氷と水の電気抵抗の差で感知する。センサーに水垢が付くと感知しなくなり、氷が厚くなり過冷却する。最悪の場合には、コンプレッサーを破壊する恐れがある。その為、1カ月に1回冷却水を交換しなければないない。機種によっては、少しづつ水を補充する為に、6カ月に一回の交換で済む。なお、水の交換の際には、アジテーターポンプに水をかけたり、水を入れすぎてはならない。アジテーターポンプが焼き付き冷却しなくなるのである。また水位が低く、シロップや炭酸水の冷却チューブが空気中に露出していると、十分に冷却できなくなる。
冷却タンク内の氷が十分にあるのに、飲物が十分に冷却されない場合があるが、それは、循環ポンプが焼け付いている場合などが考えられる。循環ポンプのチェックは、カーボネータータンクの電源を切った状態で飲料を出し、炭酸水ラインに気泡を発生させ、気泡が循環しているか目で見てチェックする。なお、循環ポンプはカーボネーターポンプと同じ形状をしているが、ステンレス製である。

なお、冷却水タンクからディスペンサータワーまでの距離があり、かつ売上が高いときには、機械が正常に作動しても冷却が十分でない事がある。その場合には、ディスペンサータワー内部に、コールドプレートを装着し、氷で冷却する。冷却が十分でないからと言って、コンプレッサーを大型にしても効果は少ない。なお、小型のタイプでは、冷却タンクの代わりにコールドプレートを使用する。コールドプレートとはアルミのプレート内に冷却チューブを鋳込んである物である。このプレートをディスペンサータワー下部のアイスビンに入れ、その上に氷を置き冷却チューブを通るシロップと炭酸水を冷却する。冷却能力はかなり高く良いが、プレートの上に置かれた氷が、解けブリッジ状の空間が出来、冷却されない事がある。その為、常時氷を崩し冷却が旨く行くように注意しなければならない。最初の設備投資は安いが、氷の消費量が多いので、毎日使用する店舗では余り向いていない。遊園地のように日曜祭日のみに使用するタイプに向いている。

<5>ディスペンサータワー
ドライブスルー等ではサービングタイムは重要である。特に飲物の抽出時間は重要であり、現在日本で使用されているタイプの2倍のスピードの物がある。この場合、泡立ちの問題があるので、冷却能力の優れた物でなければならない。
カウンター置きの一体型のディスペンサーの場合には能力は低いが、最初の一杯目から、安定した温度で抽出できる。リモートタイプの大型の場合、連続能力は優れているが、最初の1~2杯目の温度が高い場合がある。これは機種により異なり、断熱材と循環能力により差がつくのである。

なお、サービングタイムを短縮するために、カップを置きボタンを押すと氷が出て、一定量の飲物が出るような全自動化のディスペンサーも出てきている。さらに進んだタイプの物は,POSでオーダーを取った際に、自動的にカップを出し、氷をいれ、炭酸飲料を抽出する。

今後、セルフのフリードリンクサービスに対応し、製氷機内蔵型や、貯氷庫内蔵型などの導入が考えられる。

<6>サニテーション
シロップには砂糖が多く含まれている為、イースト菌や大腸菌が繁殖し易いのである。イースト菌は体に有害ではないが、糖分を分解し、味を変化させるという問題がある。特にノズルのところでは、大腸菌などが発生し易いので、閉店後取り外し、洗浄殺菌する必要がある。また、シロップタンクを交換する際には、ラインのコネクターを殺菌する事が望ましい。
1カ月に一回~6カ月に一回はシロップラインの洗浄殺菌が必要である。一般的にはボトラーズが実施する。店舗で実施する場合には、簡単に洗浄殺菌出きるキットの取付が必要である。

<7>カリブレーション
炭酸飲料の品質は、温度、ガスボリューム、シロップの混合比で決まる。シロップの混合比は、糖度(ブリックス)で表し、糖度計で計測する。糖度計と混合シロップの温度を同じにしないと計測誤差が出るので、温度補正の付いた糖度計を使用する事が望ましい。混合シロップの糖度を計測する上で問題になるのは、原液の糖度が経時変化するという事である。その為保存期間により、数値に補正を加えるのである。店舗で計測する場合には、抽出する炭酸水とシロップの量で計測する方が誤差が出ずに良いと思われる。 シロップは涼暗所で保管し、なるべく早く使い切る事。
ビールディスペンサー
9月号で簡単に説明したが、新型機種が出来たので紹介する。リモート式の大型ディスペンサーにとって大きな問題は、ビールの圧送方式である。炭酸ガスで圧送していると、夜間等長く使用しない間に、炭酸ガスがビールの中に融け込み、泡が多すぎる原因となる。現在ビールメーカーでは、炭酸ガスと、ビールに融け込まない窒素を組み合わせたシステムを開発中であるが、窒素ガスの供給が面倒である事と、高価である為普及が遅れている。写真3はNAFEMで新しく発表された、炭酸ガスと窒素ガスの混合装置である。窒素ガスをボンベから供給するのでなく、特殊なフィルターを使用し、空気中の酸素を分離し、窒素のみを取り出すようにしたシステムである。今後かなり普及していく物と思われる。

製氷機
<1>製氷機のタイプ
氷を作る製氷皿はエバポレーターであり、冷たいフレオンガスが流れ、水を冷却し、氷を作るのである。この製氷皿の形状により幾つかのタイプに分かれる。
(A)下向き製氷皿
製氷皿が下を向き、下から製氷水を噴射し製氷するタイプ。最も古くからあるタイプであり、製氷に時間がかかるが、氷がクリアーで固く、品質が良い。バー等の比較的に高級な飲物を出すのに適している。
欠点は、できた氷を取り出す時に製氷皿が下の方に大きく開くが、その可動部分のトラブルが発生し易い事である。余り氷の形状を大きくするとそのトラブルを発生し易いので注意されたい。また、クリヤーな氷を作るために製氷用の水を多く使用するので、水の使用量が多く電気代も多い。

(B)垂直型の製氷皿
製氷皿が写真4のように垂直になっている物で、上から水を流し製氷する。可動部分が少なくトラブルが少ないのが大きな特徴であり、米国の飲食店で多く使用されている。水の使用量は(A)と同じくらいであるが、最近では毎回製氷の水を捨てないタイプが出ており、水の使用量、電気代共に良くなっている。
欠点は、(A)に比べ、氷の透明度が少ない事である。どちらかと言うと、ファーストフードやファミリーレストランに向いているタイプである。

(C)フレーク、セクターアイスマシン
製氷皿を使用せず、写真5のように円筒系の筒の中にフレオンガスの冷媒を通し、そこに上部から水を流し込む。水は直ちに凍るのでその氷を、スクレーパーブレードで削り取り上から排出する。氷の削りクズがフレーク状になっている物が古くからあったが、飲物をいれるとすぐに融け水っぽくなるという事で、最近ではそのフレークを圧縮し、小さなキューブ状にするようになった。この場合、飲物に入れても融けかたは従来の製氷機のキューブタイプと余り変わらない。
このタイプのメリットは水の使用量が最も少ないという事である。また、製氷機自体がコンパクトであり、ディスペンサーと一体型の物を作る事が出来、セルフサービスに向いている。また、大きさの割に製氷能力が高いので、ファーストフード等のように、狭い店舗に適している。

欠点は、氷が濁っており余り高級感がしないという事と、食べた時の食感が悪いという事である。全ての水を氷にするため、水分に含まれる塩素臭や、異物も氷になるため、必ずカーボンフィルターを使用しなければならない。また、構造が複雑な為、壊れた時の修理代は比較的高い。

<2>冷却機の種類
空冷の場合には、設置場所の温度と、空気の循環の良い場所を選ぶ事が重要である。また、定期的にコンデンサーのフィルターを清掃する事を忘れてはならない。
水冷の場合には、性能は安定しているが、水の使用量が多い。一般的にエバポレーターの低圧の変化を利用する節水弁で冷却水の量を自動調整するようになっている。これは時々正しく作動しているかチェックしないと水を垂れ流しにする事がある。また、夏場などに製氷能力を上げようと、節水弁のバルブを多めに開く事があるが、返って逆効果なのでしてはならない。

水冷でもリモートのクーリングタワーを使用する事があるが、冷却水のメインテナンスが大変なので、ビルなどの集中管理等がない限り余り一般的ではない。

<3>製氷時間
製氷皿を使用するタイプは、製氷時間のコントロールと、氷の出来上がり後に氷皿から取り出す方法がメーカーにより異なる。
最初に開発された方法は、貯水漕に溜まった水が、製氷皿に氷として出来てくるに従い減っていく事に注目し、重量で製氷時間をコントロールする方法である。

初期の日本ではタイマーで製氷時間をコントロールした。この方法は夏場と冬場では、水温、室温が異なるため、ユーザーが氷の状態を判断しながら時間の調整をせざるを得ず、機械のトラブルが多かった。現在では、その解決策として、水温がある温度に冷却されてから、一定の時間で製氷時間をコントロールするようにしたり、エバポレーターの水温や、フレオンガスの温度で製氷時間をコントロールしている。また、貯水量を重量ではなく、水位でコントロールするタイプもある。

色々なタイプがあるが、温度センサーを使用するタイプは、時々清掃しないとセンサーが汚れ、温度の感知が悪くなるので注意されたい。

氷皿から取り出す方法については、製氷時間終了後、ホットガスを逆流させ氷皿の温度を上昇させ、氷を剥離する物である。この時間が余り長すぎると氷が融けすぎるし、短いと氷が十分に落ちず、製氷能力が落としたり、コンプレッサーを痛める原因になる。

<4>品質管理
良い氷を作るには、氷皿の清掃が必要である。水の硬質分が製氷皿についたりして、氷の生成がうまく行かない時がある。時々、酸性の洗剤で洗浄する必要がある。
普通、消毒のため水道水には塩素分が含まれ、雑菌が繁殖しないようになっているが、氷には塩素分が含まれない為に、製氷機庫内を時々洗浄殺菌する必要がある。

<5>省エネルギー
水冷の機種の場合、節水弁が正しく働いているか、時々チェックする必要がある。機械の作動を止めたとき水が垂れ流していないかで作動しているかどうかわかる。また、貯氷庫の氷の量をその時期の必要使用量に併せて減らせば、無駄に融けてしまう事がない。
機種により貯氷量をコントロール出来るので検討されたい。もし付いていない場合は、後でタイマーを取り付け製氷時間をコントロールすれば良い。

電気の節約は、コンデンサーの汚れを定期的にチェックし、必要なら清掃する事が必要である。そうする事により、電気が節約できるばかりか、製氷機の寿命も大幅に延びるのである。

アイスクリームフリーザー
<1>冷却原理
エバポレーターに当たるところがフリージングチャンバーであり、ステンレスの筒になっている。そこに冷媒のフレオンガスが通り、入ってきたミックスを氷結させる。ミックスはポンプにより、空気を混合され、フリージングチャンバーに圧送される。氷結したミックスはスクレーパーブレードにより削り取られ、混合され抽出口にいく。そこでシロップと混合されカップに注がれる。
<2>品質コントロール
ミックスの温度コントロールが重要である。温度またはミックスの粘度でコントロールする。温度でコントロールすると、温度センサーの感知が遅く、粘度の変化が大きく品質に悪影響があるので、最近では正確な粘度センサーを使用され出している。調整は温度で行うのであるが、2杯目で温度を計測しないと正確でない。また精度の高い温度計を使用する必要がある。
機種により製造能力は定まっているが、製造能力以内の販売数なのに能力が不足する場合には、まず、コンデンサーが汚れていないかチェックする。次に、スクレーパーブレードが基準の幅であるかチェックする。幅が不足すると氷結したミックスを削り取る事が出来ず、基準の能力を発揮できないのである。次に、コンプレーサーの高圧、低圧が基準値であるかチェックする。この場合、基準の量のシェイクを出しながら、負荷を与えて実施する。特に重要なのは、低圧値が基準どおりかで、ミックスの温度、アイスクリスタルの状態に大きく影響する。水冷の場合は同時に、節水弁から排出される水温が基準値であるかチェックする。水温は、高すぎても低すぎてもいけない。

温度以上に重要なのは、オーバーラン(空気の混合率)である。空気の混合率が低いと、味がしつこくなり、コストも余計にかかるのである。オーバーランのコントロール方法は機種により異なるが、ポンプなどで使用するゴム製のパッキンの装着方法とメインテナンスにより左右される。

ノズルのところでのシロップの混合は、シロップの温度が変化すると粘度が変わり混合比が変わるので時々調整する必要がある。また、ミックスの粘度が負荷により変わると混合比も変化するので、機械は基準値以上の負荷をかけてはいけない。

<3>衛生管理
アイスクリームフリーザーで最も注意しなければならないのは、衛生管理である。特に完成品からは大腸菌が検出されてはならないし、一般生菌数も基準以下でなくてなならない。
その為に、朝晩の分解清掃と、洗浄殺菌を丁寧にしなければならない。一般的に中性洗剤で洗浄後、次亜塩素酸ナトリウム溶液で殺菌するが、ミルクには脂肪分が多く、また、カルシウムマグネシウム等の硬質分が多いので、中性洗剤では汚れが落ちない事がある。乳製品専用の洗浄殺菌洗剤を使用する事が望ましい。

最近では、閉店後フリージングチャンバー内のミックスの温度を60~70℃に上げ、一定時間放置し、殺菌し直ちに再冷却する方法が出てきた。熱殺菌法と言い、機械の分解清掃は2週間に1回くらいで良くなるので、人件費、材料費が節約でき、かつ排水処理の問題がなくなるので今後普及する物と思われる。チェーンによるが、年間50~100万円程節約できるので、現在の機種から交換しても十分メリットがあると思われる。

冷凍機器全体のメインテナンス
コンデンサー、エバポレーターを常時清掃し綺麗に保つ事が基本である。また、冷却用のファンに動力を伝えるファンベルトの交換、冷却水の交換、水冷の場合は節水弁の点検等、必要な点検、部品交換をすれば機器は常に正常に作動し、コストも安く上がる。また、同時に商品の品質も向上し、厨房の環境も良好に保たれるのである。

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