システム調理のマネジメント学(柴田書店 月刊食堂1995年2月号)
米国の事例に学ぶシステム調理のマネジメント学
<USMFF主催 第2回ホテル・レストランビジネスシンポジウム>
米国食肉輸出連合会(USMFFジャパンディレクター原田晋氏)が、このほど札幌の札幌グランドホテルで“米国の事例に学ぶシステム調理のマネジメント学”をテーマにした「第2回ホテル・レストランビジネスシンポジウム」を開催した。
USMFFはすでに一昨年東京と大阪で第1回目のビジネスシンポジウムを開催し、甚大な反響をものにしているが、同シンポジウムはホテルのシェフや外食産業の商品開発担当者を対象としてアメリカンビーフの普及・啓蒙活動の一環として企画されたものだ。
シンポジウムの具体的な内容は、講演(主に牛肉を軸とした時代対応型の提言)と料理講習会(牛肉を活用したメニュー提案)とで構成している。
そして今回も、講演では(有)清晃の王利彰氏による「米国の事例に学ぶシステム調理のマネジメント学」、料理講習会はハイアット・リージェシー・ワグナー氏が「システム発想からの新ビーフメニューの提案」をコンセプトに捉えた料理デモンストレーションを実施した。
シンポジウムの冒頭では原田晋ディレクターが「昨今の激しい価格競争の中で顧客の値頃感をどう見いだし、低価格でおいしいメニューを提供して満足してもらうかがポイントだ。そのひとつには低価格の部位を活用して利益を確保できるメニューの開発や調理オペレーションのコスト低減が必要になっている。本日のシンポジウムをその対策を探るチャンスにしてほしい」と参加した100名のシェフ達に開催の趣旨を説明した。
さて、王氏は日本の外食動向に触れながら、米国の最新のフードサービスの現況をリアルにリポートしていった。特にトップ100社のビーフ主体の企業のシェアが約11%に達し、目立ったチェーン企業として「アウトバックステーキハウス」が6位にランクされ、利益率の伸びでも「ローンスターステーキハウス」が上位に飛躍するなど、牛肉の消費が伸びないといわれる米国でも、ビーフ主体の外食チェーンの躍進ぶりが顕著だと指摘。
また、ホテル部門では力強い前進をし続けているマリオットホテルの戦略分析を進め、特にマリオットの調理部門の合理化に触れ、今後のホテル業界では調理技術の革新が不可欠として真空調理、ことにクックチルの活用策、メリットを力説し、「クックチルは食品の品質向上、安全・衛生面の向上、計画管理、調理歩留まりが高いなどの経済性、そしてエネルギーの節約といった長所があり、このシステムを使いこなすことで新しい価値観を訴求できるはずだ」と講演を締めくった。
王氏の提言を受けて、ワグナー総料理長は、ロイン系以外の部位を活用したメニュー提案と料理実演を進め、「タイビーフサラダ」(使用部位フランクステーキ)「牛肉のショートリブ・パイナップルサラサ」(真空調理を活用)「牛肉の串刺し・ブロッコリーとフェターチーズ煮込み(トップサーロインバット使用)の3メニューを実演調理。さらに、ショルダークロッドを使った「牛肉とポテト・人参のキャベツ包みトリフ風味のポトフ仕立て」など3品目をレシピー提案した。
ワグナー氏は、価格意識に敏感な時代におけるローコスト調理、計数管理の必然性を説きながら、牛肉の新しい部位による華麗なメニュー開発をプレゼンテーションし、新しい時代のあるべき新しい調理人像を示唆していった。
USMFFでは第1回、2回の成功をもとに今年の早い時期に福岡で本シンポジウムの第3回目を開催する予定だ。