初夏から始めるSMのクレンリネス&サニテーション「3のポイント」(商業界 食品商業2004年6月号)

SMで長年調理に従事していたベテランほど、衛生管理なんて今までと同じように注意していればよいのだと思いがちです。しかし、食中毒予防には従来の知識では間に合わなくなっています。
10年以上前に保健所の衛生管理責任者の資格取っているベテランの方に、魚介類を食べて食中毒になる原因菌は何ですか?と聞くと、腸炎ビブリオだと答えるでしょう。しかし、現在はノロウイルスというウイルスが魚介類の食中毒の大きな原因となっています。冬場は安全であった生牡蠣がノロウイルスと言う新型の食中毒原因のウイルスに汚染され、食中毒を多発し、2003年の食中毒原因のトップとなっています。
SMの目玉の持ち帰り惣菜は調理後、顧客が口に入れるまで時間がかかるので、大変衛生管理に気を遣わなければならないのです。大手惣菜弁当チェーンのA社はその危険を熟知して厳格な衛生管理をしておりましたが、2003年3月11日に販売するおにぎりがノロウイルスに汚染され、47名の食中毒患者を発生させてしまいました。A社は生ガキなどを販売していないのにノロウイルスによる食中毒を発生したのです。ノロウイルスは生ガキなどが原因でしたが、その他の魚介類等からも発生するようになり、ノロウイルスの保菌者がいるのではないかと言われています。この事件はSMに取って対岸の火事ではありません。常に食中毒の傾向を把握し、対策として従業員教育を怠らないようにしなければいけないと言う教訓なのです。

1)食中毒の傾向を常に把握しよう
では、食中毒の動向を見てみましょう。食中毒関連の本では食品衛生事故の実状を把握するには間に合いません。インターネットの情報を常に把握しましょう。
まず、労働厚生省のHPを見てみましょう。(食中毒の発生件数)
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/jokyo/nenji.html
これによると平成7年までは減少気味であった食中毒感染者が8年の堺市の集団給食による大規模な食中毒発生以来、増加現象に転じているのが分かります。発生件数をグラフにしているのが、http://www1.odn.ne.jp/‾cak40870/poison.html です。
食中毒が増加している原因は、新型の食中毒菌の出現と、従来の食中毒菌のパワーアップです。例えば、食中毒とは食中毒菌に起因する物を言うのですが、最近はウイルス性の食中毒も仲間入りしました。従来は温度の低い冬の間、生牡蠣は安全な食べ物でしたが、最近はノロウイルス(小型球形ウイルス)に汚染された牡蠣による食中毒が増加しています。食中毒の分類が始まったのは平成10年からと言うニューフェイスですが、平成14年には食中毒患者数のトップとなり、平成15年度も引き続き食中毒原因としてトップになっているようです。
平成14年度 http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/02hassei/xls/02hassei.xls
平成15年度速報 http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/03hassei/xls/data.xls
新型菌だけではありません。日本人は魚が好きで、海水中に存在する腸炎ビブリオ菌により食中毒が多いことは知られています。そのため衛生責任者の講習会では魚の取り扱いに気を付けるように教えています。腸炎ビブリオによる食中毒は平成4年には99件まで減少していたのですがそれ以後増加して、平成10年には839件となっています。その大きな原因は新型の腸炎ビブリオ菌によるものだと言われています。従来の腸炎ビブリオ菌は7℃以下で保管すれば菌が増えないと言われていましたが、新型菌は4℃以下に保管しないと菌が増殖するようになりました。つまり、昔の知識の7℃で保管していると危険だと言うことです。
愛知県衛生研究所のHPでは4℃以下に保存するように述べています。
http://www.pref.aichi.jp/eisei/tudkbiseibutu.html
サルモネラ菌も同様で、従来、卵の外側だけが汚染されており、内部は大丈夫だと言われ、冷蔵庫で保存しないで生食していました。しかし、新型菌のサルモネラ・エンテリデュス菌は卵の中を汚染し、冷蔵保存をしないと食中毒菌が繁殖し加熱して食べないと危険と言われるようになり、常温保管でなく冷蔵保管の食品となりました。
食中毒菌の種類については社団法人食品衛生協会の以下のHPを参考にしてください。。
http://www.n-shokuei.jp/
食中毒の発生が多い状況で、日本医師協会もHPで注意を呼びかけ、最新の食中毒情報を発信しています。
http://www.med.or.jp/kansen/index.html

2)具体的な従業員教育をしましょう。
食中毒の状況を把握した次は、従業員に対する具体的な衛生教育の実施です。食品スーパーの従業員の方はパートアルバイトが多いのでHACCPなどと言う横文字を使うと抵抗を感じる方が多いようです。HACCPを簡単に説明すると従来の衛生管理である、「食中毒原因菌などを、つけない、増やさない、殺す」と言う考え方に「具体的な温度と時間管理」を加味したものです。そのHACCPの考え方を元に、難しい表現を使わない簡単なチェック項目を以下のようにまとめてみました。一度、店舗の衛生状態をチェックし、従業員の教育に使ってみることをお勧めします。

3) 衛生管理の3つのチェックポイント、つけない、増やさない、殺す。
(1)つけない

<1>手洗いがつけない基本
<手洗い>
先ず手に着いた汚れや菌を落とし、次に殺菌剤で手を殺菌します。手洗いの殺菌剤というと従来は塩化ベンザルコニウムなどの逆性石鹸を使用します。
最近は洗剤自体の洗浄力が強く洗浄と殺菌を同時に行え、手荒れがし難いこと等の条件を満たした、化粧品などに使われるイルガサンDP300と言う薬品を使う優れた洗剤もあります。手洗い洗剤を購入する際には先ず、自分の手を洗って、汚れ落ちがよいか、手荒れがしにくいか,効果のある殺菌剤を使っているか確認しましょう。
<手拭き>
殺菌した手を手ぬぐいや前掛けで拭いては台無しです。かえって細菌を付着させるのです。手拭きは厨房であれば使い捨てのペーパータオルを使用し、客席やトイレでは温風乾燥機を使用しましょう。
<手洗いの頻度>
朝,お店にはいるときに一回だけしか洗わないのでは効果がありません。手を洗った後何もしないでも30分ほどすると細菌を発見することがあります。30分に一回の手洗いは必要です。また、トイレに行った後、汚れた物にさわった後,肩より上に手を挙げたら(ブドウ球菌のいる顔や髪の毛にさわる可能性があるから)、必ず手を洗う習慣を身につけましょう。
<衛生手袋>
サラダや刺身など火を通さない食品や,お弁当等の喫食まで時間がかかる料理に手で直接触れるのは危険です。少量のブドウ球菌などが繁殖するからです。なるべく、使い捨ての衛生手袋を使用しましょう。
<手の身だしなみ>
指輪や、時計をして調理をしてはいけません、指輪や時計と手の間には汗や垢が溜まり,細菌にとって住み心地の良い住処となります。最悪なのは爪を伸ばし、色の濃いマニュキアを塗ることです。細菌を居着かせ、発見しにくくするからです。
手荒れやあかぎれを起こすと,そこにブドウ球菌がいる危険があります。手荒れをしないように,洗い場ではゴム手袋を使用し、水仕事の後は手荒れ止めのクリームを塗る等のケアーをしましょう。

<2>食品の交差汚染を防ぐ
食肉のうち、牛はサルモネラ、病原性大腸菌、豚はサルモネラ、鳥はサルモネラ、カンピロバクター、などの食中毒菌を持っています。魚介類は、海水中に普通に存在する腸炎ビブリオに汚染されています。人間は髪の毛,ふけ,傷口にブドウ球菌を持っています。
安全そうに見える野菜も,土中菌である、ボツリヌス、ウエルシュ、セレウスなどの菌を持っています。
汚染されている牛肉もしっかり火を通して食べれば恐ろしいo-157も死滅します。しかし、サラダなどの野菜、生ジュース、生水、鮨ねたなどは火を通すことがないので、細菌汚染があると食中毒を起こしやすいのです。特に日本の食生活は生魚や生野菜,生水を摂取する機会が多く、欧米に比べより危険だといえます。
交差汚染を防ぐには食材ごとに手,包丁,まな板,調理機器を洗浄殺菌してそれぞれの食材に固有の菌が他の食材に移らないようにしなくてはいけません。特に火を通さない食材の取り扱いには細心の注意を払いましょう。

<3>信頼のおける仕入先
仕入れをする際には値段だけで決定するのではなく、衛生管理がしっかりしていることを確認し、配送業者の食品の取り扱いまで丁寧な業者を選びましょう。

<4>受け取りの確認と正しい保管
どんなに良い食材メーカーや問屋であっても資材を受け取る際には正しいチェックが必要となります。品物の破損や損傷のチェックだけでなく、冷凍品はマイナス18ー22℃,冷蔵はプラス1ー5℃と言う温度で搬入されていなくては行けません。勿論、搬送中に扉の開け閉めで温度が上昇しますので、それぞれ受け入れ可能な温度を細菌管理と品質維持の両方の観点から決めておきます。
従来は生卵などは常温保管でした。卵の外側にサルモネラ菌が付着しても、外側を洗浄殺菌すれば大丈夫だから、常温保管で大丈夫だと言われてきました。しかし、最近はサルモネラ菌が卵内部を汚染している場合があり,卵といえども冷蔵保管が必要になってきました。時々基準の見直しをしましょう。
さて、常温保管の穀物や缶詰であるからと言って,炎天下のプレハブ倉庫の30℃以上もあるような場所においては、味が劣化したり、場合によっては腐敗する場合がないとも限りません。常温というのは少なくても20℃前後であると思ってください。なお,倉庫内の場合、ネズミやゴキブリが進入しやすい場合があるので、定期的な殺虫殺鼠を心がけてください。

(2)増やさない。
細菌が繁殖する温度は5℃から60℃の間です。この温度帯に食品を4時間以上おかないと言うのが原則です。
ですから、生ものは冷凍庫、または、冷蔵庫にしまう。材料の下拵えは手早く行い、下拵えの終わった生食材は,また、冷蔵庫などにしまう。
調理後の食材は60℃以上で2時間以内の保管が可能。冷却して翌日使用する場合には2時間以内に5℃以下に下げます。そして翌日再加熱して使う場合には75℃まできちんと再加熱します。

<1>冷蔵庫冷凍庫の温度管理をしっかり行う。
冷蔵庫の温度は1-5℃、冷凍庫はマイナス18℃ーマイナス22℃の温度帯です。

温度計はついているでしょうか?
温度計は正しく作動しますか?

定期的に正確な温度計を用意して冷蔵冷凍庫の温度計が正しく作動するか確認をしましょう。

<2>庫内に余裕があり冷気が循環するか
冷蔵冷凍庫の設定温度で安心してはいけません、保管中の食品の中心温度がその温度になっていなくてはいけないのです。冷蔵庫や冷凍庫に食品を保管する場合にでも冷蔵庫冷凍庫の設定温度ではなく、保管中の食品の中心温度が冷凍や冷蔵の温度帯になっていなければ細菌の繁殖を防ぐことはできません。
最近の冷蔵冷凍庫は庫内を冷風が循環して食品を冷却するようになっているので、庫内スペースの50%くらいの余裕を持って食材を保管するようにしましょう。

<3>冷蔵冷凍庫の環境と手入れ
蔵庫は風通しが良く、室温が高過ぎない場所に設置し無ければなりません。コンデンサーを冷却する空気の温度が高ければ十分に冷媒を冷却できないので,庫内の冷却を十分に行えません。冷蔵冷凍庫の能力の基本設計は30℃以下がほとんどなので,それ以上高い場合には冷却が不充分な場合が出てきます。庫内が冷えないだけでなく、オーバーヒートしてコンプレッサーが止まったり、焼ききれたりする危険があります。営業中だけ出なく,夜間に排気ダクトやエアコンの作動を止めた際に室温が上がり過ぎないかどうかもチェックしてください。
コンデンサーに油分やごみが詰まると、風通しが悪くなり冷却能力が落ちます。フィルターがついている場合は定期的にフィルターを清掃するか、コンデンサーを直接洗浄して汚れを落とします。
冷凍庫の庫内温度は非常に低いので、冷風を発生するエバポレーターに霜が付着します。付着した霜が厚くなり氷のようになると熱の伝達が不充分になり、冷風の風量も減り、冷却能力が落ちてきます。自動的に霜取りをするようにタイマー形式で霜取りをしたり、自動的に霜取りをする装置がついています。タイマー形式の場合には開け閉めをしない夜間や暇な時間帯に設定します。霜取り装置は壊れることもあるので定期的にエバポレーターの状態を目で確認する必要があります。

<4>保温管理
食材は食材別に決められた温度まで加熱をするようになっていますが、調理後の保温は60℃以上で2時間までが安全な保温時間です。中途半端な温度で保管しないで60℃以上か、冷却して5℃以下で保管するようにしましょう。温度は保温庫や機器の設定温度ではなく、保温している食材の中心温度のことです。保管している場合には途中で温度が正しいかどうか、時々温度計で計測して確認しましょう。

<5>調理後冷却してから冷蔵保管
調理済みのカレーやシチュウなどを翌日に使うので、大量に造り、すぐに冷蔵庫に保管し、翌日食中毒を発生させる例を多く見ます。カレーやシチュウなどはぐらぐら煮て完全に殺菌し直ちに冷蔵庫に保管しているのに食中毒が発生します。
100℃,1分間加熱しても死滅しない食中毒菌がいます。カレーやシチュウ、煮物で使う野菜には泥がついています。この泥にすんでいる食中毒菌でセレウス菌やウエルシュ菌という芽胞菌が存在します。この菌は酸素が嫌いで土の中に潜んでいます。ジャガイモや人参、米,食肉類,などに泥と一緒に混入します。100℃に加熱しても芽胞という固い鎧に包まれており死滅しません。しかし、温度が下がり60℃以下5℃以上になると芽を出して、積極的に繁殖を始めます。そして、翌日のお昼頃には食中毒を起こすのに十分な量に増殖します。
これを防ぐには調理温度を75℃まで十分に加熱し、味がしみこんだ状態から、寸胴をシンクなどに冷水を張り,その中に寸胴をつけ攪拌しながら流水で急速に温度を10℃以下まで冷却し、それから冷蔵庫に入れます。夏場などはアラ熱をとった寸胴をさらに氷を入れたシンクで十分冷却をします。
翌日再加熱をして提供する場合には寸胴を攪拌しながら全体の温度が75℃になるまできちんと再加熱をしましょう。冷蔵庫の中で繁殖した菌も再加熱をきちんとすることにより死滅し安全に食べることができます。

(3)殺す
<1>加熱調理
平成9年3月17日に「大規模食中毒等対策についての食品衛生調査会食中毒部会検討結果等について」が発表されその中で 「集団給食施設等においては、衛生管理体制を確立し、これらの重要管理事項について、点検・記録を行うとともに、必要な改善措置を講じる必要がある。また、これを遵守するため、更なる衛生知識の普及啓発に努める必要がある。なお、本マニュアルは同一メニューを1回300食以上又は1日750食以上を提供する調理施設に適用する。」「加熱調理食品の加熱温度管理 加熱調理食品は、別添2に従い、中心部温度計を用いるなどにより、中心部が75℃で1分間以上又はこれと同等以上まで加熱されていることを確認するとともに、温度と時間の記録を行うこと。」
この基準は一般には適用されないのですが、それに準じた温度で安全に調理することは心がけなくてはいけないでしょう。
http://www1.mhlw.go.jp/houdou/0903/h0317-3.html

<2>調理機器を過信するな

(a)温度を一定に保つサーモスタット付きの調理機器
サーモスタットの温度計の設定が正しいと言って安心してはいけません。温度計の設定と調理機器の温度が同じか確認が必要なのです。機械ですから使っているうちに狂いがでてきます。毎日、正確なデジタル温度計でサーモスタットの設定温度と実際の温度が合っているか確認する作業をしましょう。

(b)温度の安定性
サーモスタットが付いている調理機器でも、サーモスタットの温度関知センサーの位置、感度により温度のばらつきや、応答性が悪いと一定の時間がたっても食材の温度が上がらず、食中毒の危険があります。各調理機器の特性を理解しましょう。

(c)調理機器能力と食材量のバランス
いくら性能の良い調理機器を購入しても、調理能力以上の食材を投入したら温度が下がりすぎて、一定の時間内に規定の温度まで上がりません。

(d)温度の回復力
生食用と冷凍食用では調理機器に要求される火力が異なります。元々の火力が弱い生食用の調理機器で大量の調理を連続したり、冷凍食品を調理すると温度が下がってしまいます。売り上げや食材に適した調理機器を使いましょう。調理機器は電気でもガスでも長く使っていくうちに熱交換機にカーボンが付着し、熱を伝達しなくなります。定期的にそのカーボンを洗い落とす等の手入れが必要です。

<3>水質の安全性
普通の水道水は浄水場でろ過殺菌をされていますから安全なはずですが、それでも年に1回の水質検査が必要です。安全なはずの水道水でも、屋上の高架水槽や受水槽に水を貯めてから配水する場合は、そのタンク内で汚染が進む可能性があります。タンクにひび割れが入っていたり、動物が侵入したり、点検口が開いていたりすると食中毒菌が混入する恐れがあるのです。

<4>殺菌剤
包丁、まな板、調理機器、テーブル�などの機器類は食缶洗浄機などで(鍋釜等の調理機器専用の自動洗浄機、鍋釜に合わせて内部の高さが高い)洗浄し、高温でリンスすることにより殺菌ができますが、そのような自動洗浄機が無い場合には温度をかけて殺菌することができません。その場合には中性洗剤などで汚れを洗い流し、その後に殺菌をします。
次亜塩素酸ナトリウム溶液を厨房の殺菌剤として一般的に使用します。市販されている次亜塩素酸ナトリウム溶液は濃度が5~6%のものが多いようです。使用する際にはそれを水で希釈し、塩素濃度が100-200PPMになるようにして使用します。濃度が6%のものでしたら、300倍の水で希釈して200PPM、600倍の水で希釈して100PPMとなります。試用する際には濃度をキチンと守って試用しなくてはなりません。あまり高い濃度の希釈倍率にすると手荒れなどを引き起こしますので�規定の濃度を守って使用しましょう。使用する際には容器についている使用説明書をよく読んでください。
次亜塩素酸ナトリウム溶液は水で希釈してバケツやシンクなどに貯めておくことがありますが、希釈してから2時間以上経過すると効力が低下します。また、次亜塩素酸ナトリウム溶液は購入後時間が経過したり、高温で保管したり、容器の蓋を開けっ放しにすると殺菌効果が低下するので、取り扱いには注意をしましょう。
調理台や冷蔵庫の棚、など浸漬できないものは、規定の倍率で希釈した殺菌溶液に浸したタオルやダスターなどでふきあげていきます。もちろん�その前に汚れを落とすことを忘れてはいけません。

4)衛生管理の基礎となるクレンリネスのチェックリスト

衛生管理の基礎となるのは、汚さない、汚れたらすぐ清掃する、汚れがたまらないように定期的に清掃する、と言うクレンリネス(店舗清掃)です。店舗のクレンリネスは大きく分けると、お客様に目が触れる箇所と、従業員が目に触れる箇所,どちらからも見えない機械の内部などと3カ所に分かれます。
当たり前のことですが、顧客から見て衛生的でなかったり、汚かったら売上に影響するので、毎日綺麗にピカピカになるようにしなければいけません。従業員しか目が触れない場所とは厨房や倉庫などで、衛生的な見地での清掃殺菌が重要で、機械内部の清掃の場合はエアコンディショナーのフィルターのように清掃をしないと冷却能力が低下し、壊れたり、冷えなかったりする事を言います。
汚れがたまってから清掃すると時間がかかって大変だし、汚れが充分に落ちないだけでなく、場合によっては修理が必要になります。また、お客様の目に触れると印象を悪くし売上を低下させます。でも、毎日大掃除をする必要はないのです。毎日しなければいけない清掃、1週間に1回の清掃、1月に1回の清掃、年に数回の清掃、年に1回の清掃、と言うようにチェックリストを作り、無駄なく、忘れないように実施しましょう。

(1)お客様の目の触れる箇所の清掃
お客様になったつもりで見ていきましょう。売り場前を通りかかって(当然、カンバン、外観、ガラス窓、入り口周辺、ショーケース、)売り場に入り通路、天井、ガラス窓、桟の上,客から見える厨房や裏の倉庫、床のゴミ、従業員の制服の汚れ、ダスターや清掃用具のよごれ、等の細かい点を特に神経質な女性の立場で毎日チェックしましょう。
特にお客様のとおる通路からショーケースの下など、肩から下の汚れはつきやすいので必ず毎日清掃が必要です。肩より上の清掃は目で見て汚れがひどくなる前にだいたい1週間から1ヶ月に一回清掃しましょう。

(2)従業員が目に触れる箇所の清掃
主として、厨房や倉庫の清掃です。この箇所は単に綺麗にすると言うよりも,洗浄殺菌などの衛生対策がもっと重要ですね。特に食品が直接触れる調理機器や作業台は汚れたら直ちに清掃殺菌しましょう。開店前と閉店後も洗浄殺菌をして、乾燥させます。
冷蔵冷凍庫などの内部や製氷器内部も温度が低いから放置するのではなく、定期的に(1ヶ月に1回)洗浄殺菌してください。
当然の事ながら身だしなみとしてユニフォームの定期的な交換や最低30分間に一回の手の洗浄殺菌は欠かしてはいけません。

(3)どちらからも見えない機械
エアコンや冷凍冷蔵庫の室外機、冷却機器のコンデンサー、その他機械の内部の定期的な清掃は機械の取扱説明書を元に後は定期的に汚れの度合いを見て決めます。いくら機械の外観がピカピカでも内部が綺麗でないと正しく作動せず、従業員の生産性が低下し、顧客の居心地を悪くするだけでなく、機械が壊れ、最悪の場合食品が腐敗したり、食中毒の原因となるのです。
また、ガス機器,電気機器や、エアコンの室内機のエバポレーター、ダクトファンとダクト内部などの業者による清掃は定期的に行わないと火災などを発生するので注意が必要をしてください。

(4)清掃箇所と頻度

<毎日の清掃箇所>
<1>店舗外部
□植栽
□犬走り
□駐車場
□近 隣
□窓のガラス、桟
□ゴミ置場
□看 板
□建物の外壁
□外部照明
□ゴミ箱

<2>客席(イートインスペースやフードコートがある場合)
□椅子,テーブル
□床
□窓と桟
□ドアの枠と取っ手
□ゴミ箱
□照明

<3>トイレ
□床
□手洗器
□便 器
□鏡
□ハンドドライヤーまたはペーパー容器
□洗剤の補充
□トイレットペーパー,タウパーディスペンサーのチェツク
□においのチェツク
□ゴミ箱

<4>厨房と倉庫
□床
□ゴミ箱
□ダスター
□モップとモップシンク
□整理状況
□ダンボール類の片付け
□掃 除
□排気フード,グリドル、フライヤ一,オーブン、冷蔵冷凍庫
□グリルと冷凍冷蔵エリアの資材舗充

<1週間に一回の清掃チェック箇所>
<1>外部
□雑草の処理
□植栽の刈込み
□吸排気の外部出口周辺
□グリース排気ダクトからのグリース

<2>客 席(イートインスペースやフードコートがある場合)
□生花、造花、装飾品
□照 明
□内 装
□案内板など

<3>厨房
□フライヤー全体の清掃
□冷凍庫冷蔵庫のコンデンサーフイルター清掃
□グリル全体の清掃
□オーブン全体の清掃

<月に一回の清掃>
<1>外部
□駐車場
□看 板
□ゴミ箱
□建物壁
□照明
□駐車場線引き

<2>客 席(イートインスペースやフードコートがある場合)
□壁
□通気口
□天井、照明

<3>トイレ
□壁
□換気扇
□床タイル
□水漏れ

<4>厨房と倉庫
□調理機器の排気フード
□エアコン類のフイルター
□外気取り入れ口
□コンデンサーの汚れ
□排気ファン
□排気フード内部
□換気口
□照 明
□冷凍・冷蔵庫内外の清掃
□換気扇
□壁
□倉 庫内部の棚、床、休憩室
□湯沸器
□調理機器の下部
□床排水管
□天井
□棚
□冷却ユニットのコンデンサー
□ビールディスペンサーシステム
□製氷器
□床

<年に1回の清掃と修理項目チェック>
<1>外部
□駐車場のガム取り
□外部金属部分の錆取り,曇り取り
□ペイント
□駐車場境界フェンスの補修
□舗道
□駐車場の線引き塗装
□どぶの清掃
□ゴミ置き場の清掃と塗装
□壁の清掃
□外部看板の補修と照明交換
□外灯の清掃,交換、柱部分の錆止めペイント
□外部の錆のチェックとペイント
□ドアの鍵の作動確認(防犯のため)
□屋根の埃清掃と雨樋の補修,ペイント

<2>客 席(イートインスペースやフードコートがある場合)
□天井の汚れや壁紙の補修
□床壁の状態はよいか
□椅子に破れはないか
□椅子の木部などのウレタン塗装仕上げ

<3>トイレ
□化粧室の木製品のペイント
□壊れたタイルの交換(壁、天井)
□壁,天井の塗装

<4>厨房と倉庫
□外部業者による排気ダクト清掃
□排気ファンの清掃,補修,ファンベルトのチェック(外部業者により)
□調理機器、照明,配電盤、等が加熱していないか,漏電していないか
□製氷器の水漏れ
□冷却ユニットのエバポレーターとコンデンサーの作動状態
□グリドル、フライヤー、オーブン、等の定期点検

以上

<詳細な資料>

なお、厳格なHACCPに基づいた管理手法については筆者の執筆した、「有害微生物管理技術 第2巻 製造・流通環境におけるエンジニアリングとHACCP」第6章 ホテル・レストランの衛生管理システムの実像 共著 (2000年 株式会社フジ・テクノシステム)を参考にしてください。
また、食関連の危機管理と人材教育については 「給食マネジメント論」 共著(2004年第一出版)を参考にしてください。

<食関連の事故に関しては以下のHPを参考にしてください。>
厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/topics/#iyaku
国立医薬品食品衛生研究所
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/index.html
日本食品衛生協会
http://www.n-shokuei.jp/
日本医師会の感染病情報
http://www.med.or.jp/
感染症情報センター
http://idsc.nih.go.jp/
米国の中央疾病予防センター
http://www.cdc.gov/

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