コンビニ秋冬 コンビニ強盗防犯対策(商業界 食品商業1996年11月号別冊)
深夜の闇の中のそびえ立つ不夜城のようなコンビニは1,000ルックスを越える明るさで、あたかも誘蛾灯のように通りがかりの客を引き込む魅力を秘めている。そんな魅力に引き込まれるのは顧客だけではない、金に困った強盗も思わず引き込んでしまうのだ。コンビニは強盗にとっても24時間営業している便利な金庫だ。顧客にとっても便利なコンビニの宿命か強盗とは切ても切れない中のようだ。そこで、コンビニの強盗の被害の実態とその対策を見てみよう。
95年1月号と95年秋冬別冊でCVSの安全の状況と対策を見てみた。そのデーターを元に94、95年度と本年10月18日間での時点の状況はどうか、年度別比較をしながら傾向を見ていこう。
データーの説明
94年度のデーターは朝日、毎日、読売、日刊スポーツの記事データーベースより強盗とコンビニのキーワードで検索し、合計の検索件数は142件であった。後の警察の発表によると193件の発生件数である。つまり新聞データーベースによる発生件数のカバー率は約70%である。そのうち朝日新聞によるカバー数は96件であり、実際の事件の約50%をカバーする。94、95、96のコンビニ強盗事件を朝日新聞のデーターにより比較することにした。 チェーン別の発生件数、被害金もその朝日新聞をベースに算出しているので、実際の数字と若干の誤差があることをご承知置きいただき、傾向値として考えていただきたい。
1.事件の傾向
94年
90年頃から94年にかけてはバブル後の景気の悪化と失業率の上昇を反映したためかコンビニの強盗のレコードを作り94年は193件の強盗事件が発生している。
東京都内だけで見てみると86年65件、87年71件、88年43件、89年29件、90年61件、91年93件、92年約40件とピークは91年であることが分かる。
95年
95年は94年の強盗の増加から業界、警察が真剣に対応したためか発生件数の面では減少しており、115件の発生件数であった。しかしながら、8月に八王子のスーパーでアルバイトが殺された事件のように事件の内容が危険になっている。中野のパチンコ屋から集金途中の銀行員が銃撃され売上金が強奪されると言う事件があるなど、拳銃の使用が増加している。拳銃を使用する場合には犯行は連続して行われる傾向がある。また、暴力団新法のため金に困った暴力団関係者が短銃を使用し、犯行におよぶ事件も増加している。外人による犯行も相変わらず減少していない。
96年
警察発表データーによると、5月末で68件の発生と一旦は現象に転じた強盗事件の件数が増加に転じているようだ。
朝日新聞のデーターベースによるコンビニの強盗発生件数は94年が96件、95年が75件、96年10月18日までが63件。95年の10月18日までは60件であるから、本年は昨年を上回るペースで発生しているようだ。
2.犯行状況を分析した表とグラフから見る事件の状態
尚、上のグラフは、アクロバットファイルになっています。
1.地域別の被害状況(P―6)
地域別の被害状況を見ると、従来最も発生件数の多い関東地区とその次に発生件数の多い九州地区では年々減少しているが、関西地区で発生件数が増加し、本年はすでに14件にも登り年度末までには20件を上回るのではないかと思われる。これは関西地区に於けるコンビニの増加に比例しているためだろう。強盗事件は関東、特に東京都内の事件の発生件数の経緯を見ると、コンビニの店舗数の増加と共に強盗事件が増加し、しばらくするとそれが減少に向かった。これは、強盗事件の発生に伴いコンビニ各店舗が強盗対策に真剣に対応するという学習効果と地区の警察の警備強化による物であるようだ。そのため、店舗数の増加する関西地区はまだ学習が十分でないためか、強盗事件が増大しているようだ。今後の事件の増加を抑えるにはコンビニの拡大する地域でのコンビニ強盗対策の啓蒙が必要だろう。
2.月別被害件数(P―7)
月別の被害は1、2月が最も高く、その後は年度により異なるが5、6月が高い。一般的には金に困る年末が高いように思われるが、年末の警備が厳しいためか、年明けの1、2月の事件発生件数が高いようだ。しかしながら、11、12月は10月より増加傾向にあり注意が必要だ。
3.被害金額(P―3)
被害金額の総平均は10万円をやや下回ったくらいであり、総平均を見ると本年は昨年よりやや下回っている。しかしながら、大手チェーンで言うとローソン、ファミリーマートは昨年をやや上回っている。強盗の被害を少なくするには被害金額を成る可く少なくして、コンビニ強盗は割に合わないと思わせることが重要で、そのためには、レジの釣り銭、売り上げを最小限にすることが基本の対策である。大手チェーンはその点、被害金額がすくないが、その他の店舗は金額が大きく注意が必要だ。
4.チェーン別被害件数(P―4)
チェーン別被害件数では大手チェーンは94年より年々被害件数の減少が見られる。特にセブンイレブンの被害件数がドラスチックに減少している。これは大手チェーンが真剣に強盗対策をしていることを裏付ける物だ。
5.時間帯別被害状況(P―5)
時間帯ではグラフのように深夜2時台から5時台が多いのが分かるだろう。やはり通行量や客の少ない時間帯を狙うようだ。しかしながら午後6時から0時までの間でも発生しており、通行量や店内の客のいない時間帯が狙われるのだろう。店舗の場所の人通りが少なく、レジの位置が物陰に隠れて外から見えない、店員が一人というのが最も被害に逢い易い店舗なので注意が必要だ。
6.犯人像
侵入者の60%以上がヘルメットやマスク、目出し帽などで覆面をしている。服装は黒系統の目だたない色が多い。凶器の殆どはナイフ包丁などの手軽な凶器である。場合によってはタイヤレンチやゴルフクラブなども使用されている。徒歩が殆どであるが、自転車、車がその次にくる。
年齢的にはばらついているが、40―50代が多くその次に20―30代が続いている。50代以上の高齢者ほど衝動的な犯行に及び、すぐに逮捕されているのが多い。過去には女性による犯行が3件ほどあり、強盗の世界でも性差別はなくなりつつあるようだ。94年には外人による連続犯行が目についたが、最近ではやや減少している。
7.犯行パターン
同一の店舗で同じ犯人と思われる人間に何回も襲われた店舗が多くなっている。強盗に襲われやすい店舗があるようだ。また、一晩に数件を襲ったり、連続して襲ったりしている傾向が多くなってきた。今まではコンビニ強盗は思いつきが多かったが、最近は連続の強盗が多くなり、専門職化しつつあるので注意する必要があるだろう。同一犯人が20件以上も襲ったと見られる犯行や、中には元警察官による3件の強盗事件もある。
8.逮捕状況
新聞発表からの逮捕状況は50%位だが、警察発表では80ー90%の逮捕状況だとのことだ。逮捕率が100%でないのは、店舗での犯人像を明確に掴んでいないためだ。各店舗とも防犯カメラの備え付けはあるのだが、テープを入れていなかったり、作動させていなかったりするようだ。場合によっては犯人がテープを持ち去った例もある。 コンビニにたいする刑事罰は厳しくなる傾向にあり、被害金額が低いにも関わらず、懲役7年以上の刑罰となり、重罰により犯行を押さえようとしている。
以上の現状からコンビニに於ける強盗対策を考えてみよう。
3.必要な対策「ハードウエアー」
1.釣り銭を最小限にする。
被害金額を見るとチェーンにより異なる。大手チェーンの被害金額が少なく、その他のコンビには被害金額が多いが、これは大手チェーンの対策がしっかりしているからだ。
被害金額を少なくするには1万円札などをレジに入れず、従業員が開けられない金庫などに入れ口をつくりそこに小間目に保管することである。最近ではレジの下に固定出来る1万円札格納庫が4万円前後で発売されているので便利だ。紙幣格納庫を無理に脱着しようとすると警報装置がなるようにも出来る。
米国の強盗対策は1時間ごとに釣り銭以外の売上を封筒にいれ、金庫の内金庫に入れる。内金庫の鍵は店長と集金人の2人の鍵がないと開かないようにしてある。また、当然のことながら金庫は持って行けないような重量で、床に固定してある。日本の大手チェーンでは床下に金庫を埋め込んで隠蔽している場合もある。
2.入り口のチャイム
従業員が強盗に襲われるのはレジカウンター内に居るときでなく、陳列棚の整理や補充を一人で整理しているときに刃物を突きつけられるのが多い。犯行の多い時間に1人で勤務するときには、陳列棚の整理は最小限にし、入り口のチャイムを取付、人が入ってきたときに分かるようにする必要がある。
3.防犯カメラ
従来は単なる白黒の感度の悪いカメラであったが、カラーカメラの方が良い。犯人に服装特に色が明確であるからだ。また、VTRの精度も問題がある。一般的には120分間のテープで24時間記録するのだが、これでは1秒間5コマしかとれない。一般の映画フィルムは1秒間に24枚なのだが。そしてカメラを4台くらい同時に記録するので、同時に4画面写すと画質が荒くなり犯人像が明確でないし、1コマづつ表示するようにすると1秒間に1枚しか写らないことになり、犯罪捜査のデーターとしては不十分である。最近では、1秒間に20コマ撮れるカメラも出ているので必要なら交換するべきであろう。覆面をしていてもコンピュータグラフィックスを利用し犯人の素顔を割り出す手法があるので有効な犯人割り出しの手段だろう。
カメラの位置も重要だ。犯人の多くはヘルメットをかぶったり、つばのある野球帽をかぶっているので、カメラの位置が天井にあると顔がよく写らないことがある。そのため、レジの前のカメラは位置をやや下げ顔がよく写るようにするべきである。カメラの位置を低くし、犯人の身長も計測し易いのだ。従業員の証言を見ると動揺しているためか、身長が実際とかなり異なっていることが多いようだ。
犯人は事前に店舗を視察にくるので、1週間分のテープを分けて記録すると良い。7本のテープを用意し各曜日を記入し、曜日別に記録すれば最低1週間の記録は出来る。また、犯人がテープを取り去ったり、従業員が止めたり出来ないような安全装置のついたVTRを使用しなければならない。最近ではレジの周囲でなく別の安全な場所に置き、鍵をかける例もあるようだ。経営者は毎日テープをきちんとチェックするべきであろう。
また、あるチェーンでは非常ベルが鳴ると自動的にカメラが作動しその映像をISDN電話回線を通じて、離れたチェーン本部へ送り、犯人がVTRのテープを抜き取っても犯人像を記録するようにしている。被害が多発する危険な地区の店舗では検討しても良い手段だろう。
4.警報装置
強盗に襲われたときに、非常ベルなどを鳴らせるようにする。スイッチをレジのそばの目だたないところに置き、従業員によくトレーニングする。陳列棚などの整理中に襲われる場合の為に最近では、リモートスイッチを押せば、4カ所に自動的に電話がいくシステムがあるので危険な店舗では備え付けるべきだろう。
また、非常警報装置のスイッチを押すことにより、外の赤い回転ランプが回転し外の通りかかりの人に連絡してもらうシステムもある。
5.ドアーと鍵
カウンター内部に入る扉に鍵をつけ外から簡単に入れないようにすると良い。犯人の多くはナイフ等の凶器を使用するので、距離があれば逃げられるからだ。必要なら、カウンター周囲にガラススクリーンなど必要だろう。物理的な距離があれば襲いにくいからだ。
なお、鍵を信頼しすぎてもダメだ。市販している一般的な鍵はマスターキーの入手が容易であり、犯罪のプロは持っているものと思わなければならない。市販の鍵ではダメでコピーの作りにくい特殊な鍵を2重につける必要がある。鍵を2種類つけてあるとプロは警戒し忍び込まなくなるからだ。防犯用の鍵は警察に聞くと紹介してくれる。
また、できれば非常口などがあった方が避難できて良いだろう。レジカウンターは外からよく見える方がよいが、レジの後ろに窓がある場合はブラインドなどを置き、どのくらいお金が入っているか、非常ベルがあるか等見えないようにする必要がある。
事務所の扉は自動ロックにし外から簡単に入れないようにする。仲から外が見えるように覗き窓を設置したり、VTRのディスプレーを置いておく。裏口のドアーも同様に常時ロックして置く。24時間営業でないときには閉店時開店時に裏口で襲われるのが多いからだ。裏口には照明をつけ明るくして置くこと。裏口や玄関には邪魔物を置かないですっきりし、犯人が隠れる場所をつくらないことが必要だ。
6.その他
襲われた後に犯人を捕まえることが重要だ。犯人の特徴を覚えるのが捕まえる大きな手がかりとなるが、その中でも犯人の身長を正確に覚える必要がある。ある警察では入り口の側に張る防犯ポスターの裏に、犯人の背の高さを割り出せるような印をわかりやすいように色刷りをしている。費用が安価なのでやるべきだろう。
犯人の多くは徒歩で逃走するので周囲の捜索で捕まることが多いが、最近金融機関の防犯用に使用されるカラーボールも使用も良いだろう。犯人が逃げるときに投げつけ着色液が付着し犯人が分かるようにするのだ。金融機関の強盗犯がカラーボールで数件逮捕されており、有効だろう。ただしこれを使用するのは、犯人に危害を与えられないと判断した時だけである。
レジの周囲に凶器になる包丁やはさみ等の刃物を置いては行けない。ある店舗では護身用の木刀をレジの中に置いてあったために、犯人にその木刀で殴られた例もあるので注意されたい。
4.必要な対策「ソフトウエアー」
強盗を防ぐためには上記の設備の対策が必要だがそれだけでは防ぐことは出来ない。日常の心構えが重要なのだ。
1.勤務体制
まず、深夜の一人勤務をなくすことだ。犯罪例を見てみても圧倒的に従業員が一人の時をねらっているので、深夜営業時はなるべく2人勤務が望ましい。しかし、2人勤務であっても襲われている例がかなりあり安心してはいけない。
2.店内を外から見やすくする。
レジカウンターが外から見やすいように窓ガラスにポスターをベタベタ貼らないこと。レジが外から見えないと襲い易いのだ。棚の陳列も高くしないで店内の見晴らしを良くするべきだ。強盗だけでなく万引きにも有効だ。
3.交番の警官巡回
入り口に警察官巡回店舗のポスターが貼ってあるが、警官を見たことがないのでは有効ではない。警察官も人の子だから顔見知りではない店舗の中に入りにくいのだ。なるべく近所の交番と仲良くして、顔なじみになり店の中に気軽に入ってもらい、雑談をする仲にまでなるべきだ。私が環境の悪い新宿の店長をやっていた時には定期的に交番に差し入れにいき、しょっちゅう店舗の見回りにきて貰ったものだ。余り仲良くなり警官が移動の時には挨拶まで来られた物だった。店にきて貰ったらコーヒーの一杯でも出してゆっくりして貰うべきだろう。警察官と仲の良い店だという評判がたてば強盗も襲いにくいのだ。
4.挨拶をする
防犯とは関係ないように思えるかも知れないが、サービスを向上するべきだろう。特に店舗に客が入ってきたときには、いらっしゃいませと目を見ながらきちんと声をかけるべきだ。顔見知りだったら雑談をしても良いのだ。もし強盗をしようとして店に入ったときににっこりといらっしゃいませと声をかけられ、目をあわせたら犯行には及びにくい物なのだ。
犯人は客が他に居ない時間を見計らって犯行に及ぶわけだから、繁盛していつも客がいる店は安全な理屈だ。サービスを良くしてお客と顔馴染みになるのが最も効果的で、一石二鳥だ。コンビニのアルバイトの場合人数が少ない為か、十分なトレーニングをしていないようだ。特に深夜店舗を訪問すると無愛想なのだ。しっかりとしたトレーニングが必要だろう。
5.情報の入手
強盗犯は連続して近隣の店舗を襲う例が多いので、近隣の店舗警察と協力し、犯行があったら連絡し注意をする必要がある。最近では地区のスーパー、コンビニ、警察が防犯協会などの連絡組織を作ったり、警察が緊急情報をファックスで流す等の対策があるので地区により活用するべきだろう。そのような組織や情報入手手段がなくても普段からなるべく警察と仲良くして情報を早くもらえるようにしよう。
6.銀行納金時の注意
売上金を納金するのは店長や経営者が昼間やるのだが、納金に注意する必要がある。時々異なった経路を使用したり、時間を替えたほうが安全だ。道を曲がるときにも強盗が隠れているかも知れないので、大回りをして安全を確認する。スーパーの管理者が売上を納金するときに車で当てられ、降りたら金ごと誘拐された例もある。これは暴力団が絡んだ事件であるが十分に注意されたい。
5.強盗に襲われたとき
以上のように注意していても運悪く強盗に襲われたときの対処の方法をしっかりトレーニングして置く必要がある。
1.ヒーローになるな
決して強盗に立ち向かってはならない。幾ら武術の有段者であっても立ち向かってはならない。お金は働けば戻ってくるが命は戻ってはこないのだ。今後、銃器の使用も予想され十分な注意が必要だ。時々、店舗の人や通行人が犯人を逮捕して、警察が表彰しているが大きなまちがいである。米国のチェーンでは犯人を従業員が逮捕したら処罰するくらいだ。86年にはコンビニに入った強盗を追いかけた大学生が、92年5月にはローソンの従業員がナイフで殺されているのだ。決してヒーローになろうと思ってはいけない。本年の10月に起きた強盗事件でもアルバイトが強盗ともみ合いになり首にナイフで1cmの傷を付けら、もう少しで大惨事になるところであった。
2.冷静になれ
レジの内部に必要な釣り銭だけ入れて置けば被害額は5~6万円ですむのだ。重要なのは、冷静になって犯人の顔の特徴。鼻、目、耳の形、ほくろの位置、小指などがかけていないか、服装、なまり、年齢、身長、靴など正確に覚えて置くことだ。この特徴を正確に警察に伝えることにより犯人の逮捕が早くなる。また、逃走した場合、逃走方向、逃走手段、車を使用するのなら、ナンバー、車の色、メーカー名などをすぐにメモし警察に連絡することが重要だ。また、凶器の種類、サイズも重要な証拠になるので覚えるとよい。
特に重要なのは犯人の身長だ。身長を正確に計測するには入り口のドアーへの目印や棚の高さとの比較などの訓練が有効だ。
犯人の観察にはトレーニングがいる。米国では強盗が店舗を襲うVTRを見せてトレーニングする。一回見せて「犯人の特徴を言って下さい」と言うのだが、ほとんどの人が正確に言えない。しかし、テープを何回も見せることにより、犯人の特徴を正確に記憶し、表現することが可能になってくる。テープがなくても普段からゲーム感覚でのトレーニングをすることが有効だろう。
3.連絡
非常ベルがあるのなら、普段から押す練習をさせよう。犯人に分からないように押すことが重要であり、普段から練習していないと、慌てて押すことができないのだ。警報装置を押し、時間を5~6分稼げば警官が到着するので冷静な対応が必要だ。
非常ベルを押せなくても犯人が立ち去ったら、逃走用の車、自転車、逃走方向を確信したら、必要なことをすぐにメモし、110番をする。次に最寄りの交番、警察、経営者、店長、チェーン本部など必要なところへの連絡を忘れないようにする。
慌てると、電話番号がわからなくなるので、緊急用の電話一覧表を電話器のそばにおいておく必要がある。場合によっては犯人が電話を壊していく場合もあるので、最寄りの公衆電話の位置を確認し、電話用の10円玉などを用意しておくことが必要だ。
4.現場の保管
犯行後は直ちに店舗を閉め、犯行現場を保存する。犯人の指紋や、靴跡など証拠を他の客に荒らされないようにすることが重要だ。
6.最後に
コンビニの強盗事件を防ぐ鍵は新規出店エリアでの防犯対策だろう
コンビニのチェーンが新規エリアに出店しようと言うときには県単位ではなくテレビエリアという広域の単位での出店になる。チェーン本部として出店の際にはまず売り上を上げるというのが使命であるし、実際の店舗運営に当たる加盟店のオーナーも店舗の運営で手一杯で、防犯などと言う守りの姿勢に入ることが出来ない。
コンビニはその名の通り便利な場所にある。特に地方出店の場合には道路沿いの車客を狙っており、強盗にとっても連続的に襲い、逃走するのに便利な場所にあるわけだ。
連続のコンビニ強盗を防ぐにはコンビニ各店と警察との密なコミュニケーションが必要になるが、新規出店エリアでは競争状態にあるコンビニ同士が連絡を取ることもないし、警察とのつながりもない。本来はチェーン本部が連絡体制の主体になるべきだが、加盟店主体の店舗運営方式ではそれもままならない。そんなコミュニケーションの確立していない状態をねらい打ちするかのように強盗は連続犯行を重ねるというのが現状のだろう。
また、犯罪の防止を警察だけに頼ってはいけない。警察の組織は明治時代に行われた廃藩置県の際に決めたテリトリーをそのまま受け継いでいる。その当時の藩や県の地域の設定は徒歩を前提としており、今日のような車による高速の移動によるエリアの広域化を想定していないわけだ。そのため県単位の捜査組織では広域犯罪に対処できないのが現状だ。防犯対策を見てみると地域の警察単位であり、広域の情報を網羅していないので対策が遅れがちな傾向がある。
そのような現状の中で、警察が防犯対策で強調するのはハードウエアーの用意と従業員2人対策だ。しかしこれには費用が必要だし、かけた費用の効果が十分にでるかどうかは保証の限りではない。
一番効果的な対策はトレーニングだ。防犯対策のトレーニングや襲われたときのトレーニングも大事だけれど、最も必要なのは接客トレーニングだろう。従業員が感じが良く、地元の支持を受けていれば、店舗も忙しいし襲う暇がなくなるのだ。また、犯人の多くは店舗の近くに居住しており、過去に利用した経験があることが多いのだ。利用したときに感じがよい店舗であれば、襲い難くなるのが人間の犯罪心理だ。もし応対がぶっきらぼうで機械的な応対をされたら、襲う方も良心の仮借なく犯行に及べるのだ。
なお、この記事及びデーターは当社のホームぺージに掲載するので参考にしていただきたい。防犯関連の機器を販売されている会社の製品も紹介するので各社は、写真と資料を送付頂ければ幸いだ。