先進�サミットストア王子店のキッチンシステムを斬る(商業界 食品商業1994年11月号)
外食業のキッチンプロの目に、SMの総菜バックヤードはどう映ったか
1.最初に
筆者は、サミット中野島店が出来たときから良く利用している。中野島店はキッチンサービスコーナーを作った3号店であり、同時にFFのコーナーを設置している。当時からたいへん興味をもってオペレーションを拝見していた。数年前に導入したレイバースケージューリングを見るとファーストフードの影響が大きい様だ。
ファーストフードの現在の最大の競合は、飲食業ではなくコンビニエンスストアーである。ファーストフードでは必ず年に1度、ベンチマークサーベイという自社の総合的な位置づけと、競合、消費者動向を調査するが、6年ほど前より、最大の競合はCVSである。現実に飲食チェーンの最大の売上のマクドナルド社の年間売上は現在2100億円位であるが、セブンイレブンのファーストフード部門の売上は2500億円といわれている。
更に、最近ではSMとの競合が発生している。これはSMの営業時間の延長と、お惣菜の強化が大きく影響しているようだ。この影響により最近話題のガストが誕生したのだといわれれている。そういう観点から、筆者はここ数年SMのバックヤードの調理システムを観察してきた。今回は外部からみたSMの惣菜部門への感想を述べされていただく。
2.筆者の略歴
まず、筆者のバックグラウンドを簡単に述べされていただく。筆者はファーストフードの世界に22年ほどおり、元々店舗のオペレーションを担当しており、現場の店長からスーパーバイザー、教育担当、統括スーパーバイザー、運営部長、全国運営統括部長、をつとめてきた。しかし、その業務とは別に長年、開発業務を手がけてきた。マニュアル作成、キッチンシステム、商品開発、クレンリネスシステム、洗剤、などである。
何故かというと、25年前にファーストフード業界に入ったのであるが、当時の米国から輸入した調理機器で苦しめられた。当時は売上が高く、ピーク時になるとポテトを揚げていたフライヤーの温度が下がり、指を入れられるようになるくらいであった。原因は当時の日本は都市ガスというカロリーが低く、ガスの圧力が低いガスを使用していたためだ。昼時になると各家庭がガスを使用するためガスの圧力が下がり、火力が下がってしまったのだ。
厨房業界の多くは板金業からスタートとしており、調理機器、特にガス燃焼の知識は全くなかった。そのため、国産の調理機器などおもちゃみたいな物でとっても使える代物ではなかった。当時の東京ガスなどでも飲食業に対する理解は全くなく、独学で輸入機器を改善をせざるを得なかった。本来は建設部や機器開発部が改善するはずであったが新店舗開店業務に追われ、文句をいっていた筆者に「そんなに文句を言うんだったらお前が改善しろ」と言うことで、昼間は営業の仕事、夜は機械の改善と言う2足のわらじを履くことになった。15年ほどそんなことをやっている内にとうとう機器開発部長の仕事も兼任させられた。最後には事業開発担当部長まで仰せつかった。これが筆者が調理システムに深く関わるきっかけである。
調理機器の開発と言うと専門家がやった方が良いと思われるが、実は営業の経験がある方が効率がよいのである。調理上の問題点が発生すると、よく調理機器の問題にされることがあるが、実は温度や時間を守っていないという、作業者のオペレーションに問題があったりするのだ。また、どんなによい機械でも使用した後、正しく清掃していないと性能が下がり、調理の性能を落とすことになる。また、機械の清掃に間違った洗剤を使用すると、機械を壊すことにもなるし、衛生上の問題が発生する。また、各調理機器は正しく温度調整されなければならないが、その温度を定期的にチェック、調整する必要がある。どんなに良い機械でも使っている内に狂いがでる。そのためにデジタル温度計とストップウオッチによる科学的な定期的が必要なのだ。
筆者はエンジニアではないが、以上の経験から総合的にハードウエアー、ソフトウエアーを評価させていただく。
3.キッチンサービスコーナーの概要と説明
今回はサミットの最新型の店舗である王子店のキッチンサービスコーナーと惣菜のキッチンシステムを元に説明をうけた。
王子店のレイアウトは従来と異なり、お惣菜とキッチンサービスコーナーを鮮魚と精肉の間に持ってきている。従来は鮮魚、精肉、の後の最後に位置づけしていた。そしてキッチンサービスコーナーとサービスカウンターを一緒にしてレジの外側に置いていた。場合によってはダイナー91などのフードコート配置している。このメリットはレイアウト上サービスカウンターと一緒で生産性がよいようだが、お客様からみると問題がある。
筆者の家内は家で油で揚げるのを大変嫌うので好物のトンカツを作ってくれない。それにパン粉や卵の使用を考えると、揚げてもらった方が安いので、キッチンサービスコーナーは筆者にとっては大変貴重な存在なのだ。先日も中野島店の精肉売り場で黒豚を購入し揚げたもらった。但し、買い物を済ませてから調理時間に10‾15分かかるという問題がある。買い物を済ませてから15分も待つのでは時間を持て余せてしまう。そこででてきたのが鮮魚と精肉の間にキッチンサービスコーナーを置くという考えだ。こうすればまず鮮魚と精肉の売り場で買い物をして、それをキッチンサービスコーナーで加工してもらう間に、その他の買い物を済ませることが出来るのだ。これにより惣菜とキッチンサービスコーナーの利用度が高まり多店と差別化できるという良いアイディアだ。
但し、王子のように住宅街立地でお客様がゆっくり買い物をする場合は、キッチンサービスコーナーが間にある方が利用度が高く良いが、駅前立地の場合惣菜だけサッっと買っていけるレジに近い方が良いようだ。立地によりレイアウトは変わるとのことだ。
王子店の場合、ダイナー91などのフードコートをキッチンサービスコーナーのそばに設置できないと言う問題がある。しかし、ダイナー91の生産性は低く、また、商品の品質を考えると差別化にまだ問題があると言うことで、レジの外にダンブラウンという直営のインストアーベーカリーに併設した形で「私の喫茶室」を設置している。ここではダイナー91に比べ調理品目を大幅に落とし、ダンブラウンのパンと、カレーライス、ソフトドリンクを販売しているだけである。しかし、惣菜コーナーで購入した商品をここで食べれられるように、自動給茶と電子レンジ、コイン飲料ディスペンサー設置している。結果的にFFより生産性が高まるようである。FFは面積が広く必要であり、生産性も低く経費がかかるので、現在は展開をストップしているとのことだ。
ではキッチンサービスコーナーを見てみよう。まず設計に当たった担当の店舗開発部/企画設計グループマネージャーの青木氏と、惣菜部門の担当者の営業本部/惣菜部マネージャーの工藤氏にサミットのキッチンサービスコーナーのコンセプトの説明を伺った。両氏によると
1.キッチンのレイアウト
惣菜、魚、寿司の3つのキッチンに分けて構成する。惣菜と、魚、寿司の部門では室温のコントロールを代えている。惣菜のキッチンではすべて熱処理するために、室温は22度Cまでの温度コントロールであるが、魚、寿司は生物なので、特別な冷却機器を使用して温度を18度Cまで下げて管理している。これにより、細菌の繁殖を抑えられる。
2.商品の品質
サミットの惣菜部門は後発であるので、美味しい食材、品質の良い油とその劣化管理などに気をつけている。従来お惣菜というと、鮮魚や精肉部門の古くなった商品をフライにしたり、挽き肉にしたりしていたが、ここではすべて専用の原材料を使用し、品質管理に気を使っている。
油に関しては、コーン油を50%、パーム油を40%、菜種油を10%という品質の良い物を使用している。てんぷらは毎日油を交換し、コロッケ、唐揚げの順番で使用する。もちろん最後まで使いきるのでなく途中で劣化したら廃棄する。油の劣化の管理を外観だけでなく、劣化テスター用紙を使用し、酸化度2.0以上にならないように科学的にしっかり管理している。(持ち帰り惣菜の酸化度の基準は2.5である)もちろん酸化度だけでなく外観の色でも判断し、色とか濁りが基準を越えたら交換する。
3.作業環境の整備
生産性の高いレイアウト、衛生的なキッチン、良い作業環境の整備をする。そのために、床、壁、天井、設備、調理機器の選定で細かい注意を払っている。
1)床の排水処理
水が床にたまると不衛生なので、1/100の勾配をつけて、排水口に流れるようにしている。排水口は特殊な形状の(写真?)会所マスを使用し、スクリーンでゴミが流れ込まないようにし、その下にトラップを置いて臭いと虫の発生が無いようにしている。。更に、キッチンの中にグリーストラップを設置しないで、臭いが発生しないようにしている。
2)床の材質と施工
フライヤーなど油を多く使用するので、油をこぼしたときのことを考えて、床の材質を滑り止め効果があり、熱に強い、アトム8000に滑り止めの砂を混ぜ3mmの厚さで塗布している。又、床に水がたまらないように、モルタルの段階と施工後で平面度を正確に出すようにしている。
3)壁材
タイル仕上げにして、水洗いが出来るようにしている。更に、床との幅木の部分にアールをつけて、水がたまらないようにしている。
4)天井材
プラスターボードでは耐水性がないので、耐水性の高い軽カル板を使用している。
5)キッチンの臭い対策
排気フードのフィルターにアクアフィルターを使用し、水で油分を取り去っている。また、作業場の油臭さを消すためにオゾン発生装置を置き、夜間にキッチンに噴霧して消臭と殺菌をする。
6)調理機器
フライヤー
電気シーズヒーターフライヤーを使用している。電磁フライヤーと比較したが、効率は余り変わらず、コスト的なことを考えて電気シーズヒーターにした。ガスと電気フライヤーでは温度回復力が変わらない。揚げる種類により温度が異なるので、電気フライヤーを5台入れている。揚げ物の需要が多くもっと能力が必要である。
使いやすさを考えて、フライヤーのフードを特注の形状にして、タイマースイッチなどのコントロール部分を埋め込んだ。これにより、油がスイッチ部分にかから無いので清掃が簡単だ。さらにしゃがむこともなく作業性が向上した。また、フライヤーの下部にフィルタリングマシンを設置し油のろ過を自動的に出来るようにしている。
ベーカリー部門でガスを使用しているので、電化キッチンとしている。また、安全性の観点から電化キッチンが望ましいとのことだ。
寿司ロボット
当初は寿司ロボットを採用したが、コストが高くわりにスピードが遅いので半自動に切り替え、コストダウンをはかっている。 省力機器
皿や茶碗、などの食器を使用していないが食器洗浄機を置き、調理器具の洗浄をしている。これにより、人件比率が下がり、嫌な作業をする必要もなくなる。
スチームコンベクションオーブン
王子店からスチームコンベクションオーブンを導入して、焼き鳥、焼き魚、鳥などの焼き物。おこわ、炊き込みご飯、シュウマイ、トーモロコシ、ふかしいも、などの蒸し物。カツどん玉子どんなどの調理。と幅広く活用している。
蒸し物、焼き物のなど多くの食材を調理できるが、特に鳥の調理に向いており、魚なども柔らかく焼き上がる。温度のコントロールが出来るので品質が良く、調理速度も早く便利だ。オーブンと言うと清掃が大変だったが、スチームコンベクションオーブンは清掃がとっても簡単でよい。
そのほかの機器
餃子焼き機と魚焼き機が入っている。餃子焼き機の場合やはりメーカーにより調理時間が異なるので、比較し調理速度の早い物を入れている。
レイアウト
テーブルの幅は600mm、通路は1200mmとるようにし、動きやすく生産性が高いように気を配っている。
安全性
すべて電気調理機器を使用し、火災などの安全性に備えている。また、各機器のそばにブレーカー(電源スイッチ)を置き、何か事故が発生したときに遮断できるようにしている。
7)衛生、清掃、洗剤関係
手洗い器の水栓は自動で衛生的にしている。手洗いは洗浄殺菌洗剤のシャボネット(サラヤ)であらい、その後アルコールのアルペットで殺菌する。一般的な殺菌は次亜塩素酸ナトリウム(ピューラックス)を使用している。そのほかに、中性洗剤と、油汚れ用の強力洗剤ブレークアップ、スーパーフォームを使用している。キッチンの清掃は夜間専任の担当者が清掃する。
また、寿司など生物の調理はプラスチックの使い捨ての手袋を使用し衛生に気を使っている。
4.サミットのキッチンコーナーの評価
上記の説明でもわかるとおり、サミットのキッチンの設計はたいへん合理的で理詰めに行われており、素晴らしい物がある。筆者も数多くのSMのキッチンを見たが最も素晴らしい物の一つだ。サミットのキッチンの設計のコンセプトはファーストフードに大変近い物を感じる。ファーストフード、特にハンバーガーチェーンのキッチンの能力は大変高いのでその調理機器及びレイアウトはファミリーレストランと大幅に異なっている。ファミリーレストランでは1時間に20万円を売れば良いのだが、ハンバーガーチェーンでは1時間に50万円を売れるように標準設計している。売れる店舗であると1時間に150万円を売り上げるのは可能なのだ。サミットの場合も1日の売上が120万円もあり、ファーストフードの1日当たりの売上に匹敵する。(ファーストフードの売上の半分は飲料だし、原価率の相違を考えると時間あたりの能力は同等だろう。)
ファーストフードから影響を受けたと思われる、数多くのアイディアをキッチンに見ることが出来る。フライヤーのフードや、自動洗浄器などである。では、ファーストフードのキッチンと比べ何が改善できるか考えてみよう。
1.キッチンの環境
照度
FFのキッチンの原則
ファーストフードのキッチンの照度は600ルック以上と普通のファミリーレストランの場合の300ルックスより格段に明るくしている。明るくないと生産性が低くなるし、クレンリネスが向上しないからだ。
サミットの場合
従来のSMではキッチンや厨房という言葉はなかく、バックヤードといっていた。そのため薄暗く、穴蔵で仕事をしているようで暗い雰囲気で、クレンリネスも十分でなかった。しかし、サミットではファーストフードと同様に売り場と同じく十分に明るくとっている。そのため作業し易く、クレンリネスにも十分気を使っており素晴らしい。
内装の材質と衛生
FFのキッチンの原則
ファーストフードのキッチンの設計で最も気を使うのは衛生である。衛生で最も重要なのは空調が十分働くか、特に夏場にキッチンの温度が24度Cまで下がるか、空調器のエバポレーター、コンデンサーの清掃性のしやすさと定期清掃である。
次に、キッチン内部の内装材はすべて洗浄できるか、水拭き出来る材質にしなければならない。壁はタイル、天井は塗装でなく、プラスチックラミネート加工をするなど気を配らなくてはならない。天井の蛍光灯や配管はむき出しでなく必ず埋め込みとする。ゴミが溜まると落下し細菌を繁殖させるのだ。同様にエアコンディションのフイルターは定期的に洗浄しなければならない。
床は、ノンスリップのタイルを各調理機器の前、通路に貼り作業の安全性を向上する。タイルはすべて金太郎飴の用になっており、摩耗しても色が変わらないようにする。キッチンの床材を変更するのは多額の金と時間がかかるので、最も注意する。
キッチンの床で最も重要なことはドライキッチンであることだ。ドライキッチンと言うのは清掃時に水をジャブジャブ流して清掃しないということだ。水を流すと水の処理のために、排水溝や、排水ますが必要になる。排水溝を設けるとそこから臭いや、虫が発生する原因となる。ドライキッチンにするには、まず作業中に水をこぼさない工夫が必要だ。シンクでも日本で一般的に使用する縁が平になっている物では水が外にこぼれるので、特殊な形状で水が絶対に床にこぼれないようにする。作業台に水をこぼしても縁に必ず盛り上がりを設けて水が床にこぼれないようにする。清掃はモップに専用の洗剤を使用し定期的に拭くだけだ。クリーン�アズ�ユー�ゴーと言って、汚れたときにすぐに清掃し汚れが溜まらないようにするのだ。
サミットの場合
床、壁、天井の材質にも気を配っており、大変良い。また、魚と寿司のキッチンの温度管理を18度Cまでコントロールできるのは素晴らしい。しかし少しオーバースペックではないかと思われる。衛生に気を使っているのは理解できるが衛生はバランスが重要だ。
例えば天井の蛍光灯はむき出しでカバーがない。たまったゴミが落下し細菌汚染の可能性があるので、蛍光灯は天井内に埋め込みにし、カバーをかけるべきだろう。また、蛍光灯がむき出しだと何か物が当たったときガラスが割れ、食品に混入する危険があるのだ。
壁にタイルを使用しているのは大変良いがす、柱部分のコーナーにカートなどが当たると割れて不衛生になるので、コーナーにはステンレスなどのカバーをつけた方がよい。中野島店では、すでにコーナーのタイルが割れ始めている。もう一つの問題点は、キッチン内部は十分広く通路幅に気をつけているようだが、出入り口の開口が狭いのだ。そのため物がぶつかり易くタイルを破損しているのだ。
床材はここまで気を配るのなら、ノンスリップのタイルを使用した方がよいのではないか。タイルの場合は部分補修が可能だし、耐久力は20年はある。また、油や、酸性の洗剤、アルカリ性の洗剤にも耐えるので良いと思う。
また、会所マスなど苦労しているようだが、ここまで投資するのなら、ドライキッチンにするべきだろう。キッチンの清掃に水を撒くというのは、旧式の清掃方法だ。閉店時に水を撒いて清掃し、エアコンディションを切って帰ると、キッチンの内部の湿度が上昇し、温度と合いまって細菌が発生し易くなるのだ。オゾンを噴霧して殺菌するのは良いアイディアだが、まず細菌が発生しにくい環境を作るべきだろう。ドライキッチンにして、排水マスを無くすことにより、臭いと、虫の発生は完全になくなるのだ。もちろん床の清掃にはモップなどでの清掃は必要だが、その際に効果的な専用の洗浄殺菌洗剤を使用すれば床の臭いもなくなり、衛生的なのだ。
手洗いをする際に、洗浄殺菌効果のある手洗い洗剤で手を洗った後、アルコールで手を殺菌している。気をつけて頂きたいのは余りアルコールで頻繁に手を殺菌すると手荒れを発生するということだ。手が荒れるとどうなるかというと、手にあかぎれなどが発生し、ぶどう球菌の住処になるということだ。手はどんなに殺菌しても30分もすると手の内部から菌が発生するのだ。そのため頻繁に手洗いが必要なのだ。手洗い洗剤の選定の際には、手荒れのしにくい洗剤を選び、アルコール消毒を余り頻繁にしない方がよいだろう。いずれにせよ、寿司や魚などの生物をいじるときにはプラスチックの手袋着用しているので、その上からアルコール消毒をする方が安全だ。
また、閉店時、まな板を洗浄殺菌した後、使い捨ての布をかぶせその上からアルコール液を撒いている。そのため、完全に乾燥状態になっていないようだ。まな板は洗浄殺菌後アルコールを噴霧し、たてて置き、乾燥させた方が細菌の繁殖が抑えられるので改善が必要だ。
2.電化キッチンの安全性とコストのバランス
FFのキッチンの原則
電化キッチンは一般的でなく、地下街などの消防の規制がある場合のみだ。米国やヨーロッパでは電化キッチンを見かけるが、その国の電気代がガス代よりコストが低い場合である。ファーストフードで使うガスフライヤーの入力は一般的に20�000kcal‾24�000kcalで熱効率70%位であるが、それと同等の能力を得るためには電気入力は14kw‾17kw必要である。もしそのフライヤーを3台導入するとしたら42kw‾51kwもの電気能力が必要になるわけであり、受電設備のトランスの交換が必要でありコスト的に大変高い物となる。勿論ガスフライヤーは熱効率の良いフライヤーでも80%位であり、電気の95%の方が良いというの正しい。しかし、日本での発電の34%は天然ガス、21%は石油である。そして発電所段階での熱効率は38%であり、送電ロスは2%あるといわれている。つまり電気の石油燃料からの熱効率は36%にすぎず、効率の悪いガスフライヤーよりも劣っている。これは、当然コストに反映し、水道光熱費は高くなるのである。筆者の最近の経験では完全電化キッチンのランニングコストはガスの場合の30%以上高いのだ。
ファーストフードや、ファミリーレストランではなるべく電気を使用しないで、空調機器もガスヒートポンプ(一般的な空調機器は電気モーターでコンプレッサーを作動させ、冷却サイクル作動させる。ガスヒートポンプは車のエンジンを動力として使用する)のエアコンディションを導入し、受電設備を無くそうというローコスト店舗の実験をしているのだ。
電化調理機器の方がガスより安全性が高いと思われているが、電化調理機器でも火災などの発生度合いは同じなのだ。ガスフライヤーはガス漏れの危険があるが、電気フライヤーは電気容量が大きいため、温度調節器のマグネットが溶着しやすい。それを防ぐために加熱防止器のマグネットが別にないと加熱による火事の危険がある。数年前にコンビニエンスストアーで使用している電気フライヤーでの火災の発生が相次ぐという問題があった。原因は、温度調節器と加熱防止器が同じマグネットを使用していたからであった。電気調理器を使用する際には加熱防止装置の構造と、マグネットの品質に充分注意されたい。
また、ガスであっても最近はガス漏れ警報機と、ガス遮断弁を、自動消化器の組み合わせた物があり電気と同等な安全性を期待できる。
サミットの場合
電化キッチンを採用しているようだが、コストを考えるとガス機器の検討をしても良いのではないだろうか。ランニングコストは30%以上下がるので検討に値する。 安全性の面では、電化キッチンであっても自動消化装置を採用するべきであろう。電気フライヤーなどは排気ガスから火事を発生することはないが、油などが加熱し火災が発生する可能性はあるのだ。
3.フライヤーの能力
FFのキッチンの原則
ファーストフードが調理機器を選定する場合まず機械の性能を考えるのは当たり前だ。その次に重視するのがその機械の当初の性能をどうやって維持するのかということである。つまり、定期的な清掃と、調整、壊れる前のプリベンティブメインテナンスである。 機械の能力
フライヤーの場合、アイドル状態の温度の精度、食品を投入したときのサーモスタットの感知の速さ、温度回復時に温度が上がりすぎない、等が重要である。温度の精度とサーモスタットの感知速度は、センサーの種類、取付位置、フライコンピューターの設計、により変わってくる。これはメーカーにより大きく異なるので注意が必要だ。
揚げる物の量が多いと油の温度が下がり入れすぎれば、同じ調理時間であると生揚げになってしまう。ファーストフードではフライコンピューターを使用し温度が下がれば自動的にフライ時間をのばす用にしている。フライコンピューターをフライヤーに組み込み、時間の制御のみでなく、温度の制御や、メニューにより温度時間を自動設定する物もある。
また、油槽に食品を投入したときのフライヤーの反応も大事であり、油の温度が下がらない内に点火される必要がある。食品を投入してから何秒で点火し、どの位で温度が下がるのが止まるかが大事である。これは、燃焼方法、熱交換効率、センサーの種類、センサーの位置、ホットゾーンとコールドゾーンの油量、等によって変わる。
コールドゾーンはフライ油の品質維持に大事である。揚げかすが油槽にたまり加熱されると炭化し、フライ油を傷めるので、ヒーター下部の加熱しない部分(コールドゾーン)に揚げかすを溜め、ピーク後や閉店後に清掃する。コールドゾーンの大きさは調理物により変わる。コールドゾーンがあまり大きいと、油を大量に使用する事になり、温度の回復が遅くなる。
フライヤーの熱効率が高い方がよいのは、省エネルギーの観点もあるが、温度の回復の速さに関係してくる。フライ油の温度は食品を入れると下がり、フライの仕上がりの時には回復しているのが望ましい。品質も良くなるし、連続の調理が可能になるのである。これは、熱効率が良い事、充分なガス電気の入力、温度センサーの感知が速い、温度の立ち上がりが速い、等の条件に左右される。熱効率で大事なのは、フライヤー自体の熱効率が良い事と、それを維持する事が必要である。
サミットの場合
フライヤーの数は5台もあり、忙しいFFの店舗に引けをとらない。現在使用のフライヤーの油の量が少ないようだ。油の量が十分で熱効率が高ければもっとフライする能力が高くなるのだ。また、フライコンピューターを導入することにより、品質も安定するのではないだろうか。FFで使用している能力の高いフライヤーを検討しても良いだろう。
4.フライヤーの構造とメイテナンス
FFのキッチンの原則
日常のチェックとプリベンティブメインテナンス
フライヤーを毎日使用していると、半年くらいで油槽内部にカーボンがたまり、熱効率を40%も低下させことがあるる。だから定期的にフライヤーを専用洗剤で清掃する必要 がある。それを調べるため、定期的に一定の温度の間の温度の回復の時間(リカバリータイム)を計測し、問題があれば清掃や、電気ガス入力のチェックをする事が能力を保つ上で大切である。そのためには定期的な温度チェックと温度調整が必要であり、温度を計測する正確なデジタル温度計は必要不可欠なのだ。
FFでは厨房機器定期点検表作成を作成し、自分達で調理機器をチェックし必要なら整備までする。基本的に店舗での作業は清掃とネジ締めである。定期点検の基本は厨房機器の状態を保つことであり、最低限度の部品交換は自分でやるとベストコンディションをいつも保てるし、修理代も安く済む。
また、店舗点検作業指示書という機械の体力測定を行う。点検を行うと忙しいときの商品の品質が低下をふせげる。定期的に行うことにより機械の性能が落ちてきたことがわかり、清掃、部品交換しても問題があればそろそろ交換時期ではないかということが判断できる。
サミットの場合
サミットの場合機械を選定する際には大変慎重に選んでいるのだが、機械の調整とメインテナンスに改善の余地がある。適切な清掃のマニュアル化とテイキメインテナンスシステムの導入が必要だろう。最低限、デジタル温度計とストップウオッチを店舗に備え付けるべきだろう。温度計は商品開発の際にも必要だ。フライ物やグリル物は火を通すから安全だと言うのは誤解だ。食品の加熱温度が適正でなければ、有害な細菌は死滅せずかえって繁殖し易いのだ。定期的に食品の中心温度を計測する必要がある。
現在使用しているM社のフライヤーは丸型のシーズヒーターに軽合金の(アルミと思われる)放熱材を巻き付けて熱効率を向上させている。ヒーターが細いためフライヤーの底まで清掃が可能で便利であるとのことだ。しかし、良くみてみると放熱材の色が黒くなっていた。これはカーボンが付着している物と思われる。時々フライヤー内部に中性洗剤と水を入れ洗浄しているようだが、カーボンはそれでは落ちないのだ。一般的には半年に一回くらい、水と専用のフライヤー洗浄用のアルカリ洗剤を入れ、95度C位で30分間くらい洗浄して、カーボンを落とすのだ。アルカリ洗剤を使用するため、アルミや軽金属の使用は避けなければならないのだ。また、油の酸化を促すのは金属類であり、基本的にフライヤー内部にはステンレス以外の金属を使用してはならないのだ。
電気ヒーターの場合には基本的にボイルアウトをする必要がないのだ。ヒーターを油面から上げて、通電して加熱すると付着しているカーボンが焼ききれる。ある程度加熱すると加熱防止器が働き、ストップする。冷却してからダスターなどで拭き取るとカーボンは簡単に落ちるのだ。電気フライヤーを使用するのならそのような便利なタイプにするべきだろう。
5.商品の品質
FFのキッチンの原則
調理しているところを客に見せて、安心感を持たせることが必要である。元々ファーストフードのキッチンはオープンキッチンであり客から全て見ることが出来た。しかし、店舗が大型化し内装が豪華になるとキッチンが見えなくなってきた。その結果品質に対する信頼感、新鮮さにたいするが低下しているのだ。
先日あるハンバーガーチェーンのトンカツバーガーの食べ比べを実施した。まず、モスバーガーにいった。目の前でロースかつを揚げる間に、バンズを焼いて切り口に辛子を塗る。揚げ立てのロースかつをソースに両面丁寧につける。バンズの上に乗せ、その上にこぼれんばかりにたっぷりのキャベツを乗せてできあがりだ。目の前で作ってくれるからもう美味しそうで、よだれがでそうだ。あつあつのロースかつバーガーにかぶりつく。キャベツたっぷりの味が口に広がる。ところが、肉が堅くて噛みちぎれない。苦闘していたらづるっと肉だけ衣から離れて口の中にはいってしまった。手の中に残ったのは衣バーガーの残骸だった。
トンカツバーガーで品質が良かったのはファーストキッチンでその次が僅差でロッテリアだった。現実の品質は最初のイメージと異なり、モスバーガーの品質が最下位であった。モスバーガーでは原材料のミートパティ、フライポーション、フライドチキンなど、バンズと野菜、ソースを除いて冷凍食材を使用している。他社も同じ様に冷凍食材を使用している。それなのにモスバーガーは手作りの品質が良いイメージを打ち立ててしまっているのだ。それは何故かと言うと、一品ごとに注文を受けてから調理をし、出来上がるのを待っている間に調理をしているところを見えるからだ。
つまり、どんな良い食材を使用しても調理しているところを見せないと手作りの良い品質イメージを確立することは出来ないのだ。
米国のSMでも惣菜部門を強化する動きがある。先日も米国大手SMのバイヤーと話をしたのだが、米国で最もホットな惣菜はローティサリーチキンだということだ。ローティサリーチキンとは丸ごとの鳥を、回転式のオーブンにいれお客の目の前でじっくりと焼く方式だ。これにより手作り感とシズル感がでて売上が高いのだ。現在米国で最も急成長している、ローティサリーチキンのチェーンのボストンチキンの成功の秘訣は、手作りのイメージだ。キッチン全体を客が見えるようになっているのだ。
ファミリーマートがモデルとしているシカゴのCVSのチェーンのホワイト�ヘン�パントリーは目の前でサンドイッチを調理してくれるので有名だ。好きなハムや、ローストビーフ、チーズ、野菜、調味料を組み合わせられるので大好評だ。FFで同じコンセプトで急成長しているのが、サブウエイだ。どちらもサンドイッチの具材や、ブレッドを向上から運び込んでいるのに、客の目の前で作っているため手作りのイメージを出すことに成功して繁盛しているのだ。
サミットの場合
原材料の選定、油の品質など大変注意を払っているのは良くわかった。しかし問題はそれがお客様に伝わっているかということだ。筆者の家内はサミットに週に3回位行くヘビーユーザーである。近隣の競合店はダイエー、いなげやであるが、最も行く店舗はサミットである。理由は駐車場があり、歩かなくても済むからというのが最大の理由だ。惣菜を購入するのは海苔巻きだけである。残念ながらサミットの品質の良さが伝わっていなかったようだ。
サミットの場合、レイアウト上、寿司と魚のキッチンしか客から見えないのだ。また、それすらも壁の位置が高いために調理しているところがあまり見えないのだ。店舗によっては、魚のキッチンを見せるようにしているが、いかんせん注文が少ないので見せ場にならない。常時調理しているのはフライ物であり、そのフライ調理を客から良く見えるようにしたほうがもっと効果的ではないだろうか。単純な作業でも見れるのは安心だし、楽しいのではないだろうか。
6.特徴的のある品質の良い商品を出すための提案
FFのキッチンの原則
FFの調理機器は全て特別注文か、最も能力の高い物を使用する。また、単に能力が高いだけでなく、客からみてデザインが優れていなくてはならない。ある米国大手FFの初代のマニュアルにはステンレスは全て高価な304を使用するように決まっていた。その最大の理由は、430ではステンレス板の色が青みがかかりキッチンが暗く見えるからだった。そのくらいキッチンに置ける調理機器はデザインとして優れた物でなければならないのだ。また、アルバイトや従業員にとっても優れた調理機器を使用することにより調理の信頼感が生まれてくるのだ。決して家庭で使用するような機械を使用してはならない。
サミットの場合
てんぷらやトンカツなども購入した方が簡単だが、フライヤーなら、圧力式フライヤーを検討してもいいだろう。厚手のトンカツもしっかり上がり肉質も柔らかいのだ。特にフライドチキンなど柔らかくて品質が良い。圧力フライは家では殆ど出来ないので差別化にはもっってこいだ。
圧力式フライヤーの原理は衣を着けた肉や鳥を入れフライする。高温の油で衣に色を着けた時点で温度を落とす。食材自体から出た蒸気が内部にこもり圧力を大気圧より上げる。それにより水の沸点が100度C から115度C くらいに上がるので内部まで火が良く通り、且つジューシーに出来上がるのだ。
王子店から導入したスチームコンベクションオーブン(以下SCO)の活用も良いだろう。揚げ物も良いのだが栄養の観点から、油を使用しない調理が人気を呼んでいるのだ。また、大型のオーブンは家庭にはなく、時間がかかり、掃除も大変なので良いだろう。
ある都内のお肉や屋さんでのSCOの使用例を上げると。肉屋であるからとんかつとかコロッケを揚げて出すが、それだけだと他の店との差別化が出来ないということで、SCOでローストビーフなどの高級惣菜を売ることを考えだした。しかし、ローストビーフだけではもったいないので、色々と料理の種類を増やし、差別化をしようとしたのだ。従来、ポテトサラダなどの調理サラダを業者から仕入れて販売していたが、全部自家製の新鮮な物にした。まず朝のうちはサラダ、コロッケに使用するポテト、人参などを蒸気モードで蒸す。じゃが芋はゆですぎるとグラグラした時に、芋が割れて崩れてしまうが、SCOで蒸すと崩れる事がなくきれいに仕上がり、ホクホクして品質がよい。人参はサラダなど用途に応じてカットの大きさと堅さが異なるがカットした後時間をうまく調節して蒸すと、簡単に堅さの調整ができて便利だし、色が変わらずきれいに仕上がる。
昼からはローストビーフやチャーシューをコンビモードでどんどん焼く。夕方になると、鳥のももや焼き鳥を焼く、そして常に焼き立ての温かいものを売るようにして、お客様の圧倒的な指示をえているのだ。最大のメリットは柔らかくジューシーに焼き上がるので、家庭で温めなおしても柔らかく美味しいということだ。
但し、SCOは従来と異なった調理方法の工夫が必要だ。SCOの場合焼き焦げが付き難いという欠点がある。焼き鳥の場合たれをつけて焼くとムラになったりする。そのため焦げ目をきれいに付ける特殊な工夫が必要だ。例えば液体のたれでなく粉末にすると、きれいに焼き上がるのだ。また、鳥の丸焼きでも色が付き難いが、それも付け込みの調味料や、シーズニングで改善できる。一工夫が必要だろう。
最後に
サミットの場合設備投資をかけすぎて採算が合わないという声があるようだ。それはあれだけ投資をしてもまだ他店と差別化できるだけの惣菜の開発に成功していないからではないかと思われる。調理機器は充実しているのだから、販売品目と調理方法に工夫すれば他店舗とは異なる素晴らしい惣菜を販売できるのではないかと思われる。そうすれば今までの投資金額に見合った成果がでるのではないだろうか。
油の品質など大変注意を払っているのは良くわかった。しかし問題はそれがお客様に伝わっているかということだ。筆者の家内はサミットに週に3回位行くヘビーユーザーである。近隣の競合店はダイエー、いなげやであるが、最も行く店舗はサミットである。理由は駐車場があり、歩かなくても済むからというのが最大の理由だ。惣菜を購入するのは海苔巻きだけである。残念ながらサミットの品質の良さが伝わっていなかったようだ。
サミットの場合、レイアウト上、寿司と魚のキッチンしか客から見えないのだ。また、それすらも壁の位置が高いために調理しているところがあまり見えないのだ。店舗によっては、魚のキッチンを見せるようにしているが、いかんせん注文が少ないので見せ場にならない。常時調理しているのはフライ物であり、そのフライ調理を客から良く見えるようにしたほうがもっと効果的ではないだろうか。単純な作業でも見れるのは安心だし、楽しいのではないだろうか。