飲食店の広告宣伝と販売促進(商業界 飲食店経営1997年10月号)

美味しいものを、きれいな店舗で、やさしい笑顔と早いサービスで提供すれば、口コミでだんだん売り上げがあがる。つまり、お金と手間のかかる広告宣伝や、販売促進は不要なはずだった。しかし、現在のように競合する飲食店が多く、情報がテレビや雑誌に氾濫している時代では口コミに頼っていると売り上げがあがるまでに時間がかかる。また、設備投資や家賃、保証金、人件費が以前より高騰し、飲食業の損益分岐点を押し上げている、そのため、売り上げがあがる前に資金繰りがつかなくなり店を閉めなくてはならないという状況に追い込まれてしまう例が多くなっている。

マクドナルド、KFC、ミスタードーナツ、コカコーラが米と魚と味噌汁を食べる日本でそれぞれのジャンルでナンバーワンになっているのは決して美味しいものを出しているからではない。その秘訣は優れた広告宣伝と販売促進手段(マーケッティング)にある。

では飲食店に必要な広告宣伝と販売促進手段にはどんなものがあるか、それらを実施する前の前提条件、実施上でのメリット、デメリットは何かを見てみよう。

マーケティングを細分化していくと、アドバタイジング(広告宣伝)プロモーション(販売促進)、パブリックリレーション(PR,広報)、店舗展開と店舗オペレーションの4つに分かれてくる。ここでは中小の店舗でできるマーケティングを考えてみよう。大型チェーン店のマーケティングに関する詳細は飲食店経営95年2月、3月号の筆者の記事を参考にしていただきたい。

1)広告宣伝、販売促進を行う前に必要なこと
店舗の体制がしっかりしているか
広告宣伝や販売促進は重要だ。マクドナルド、KFC、ミスタードーナツ等の大手ファーストフードが新規開店する際には周辺に大々的にチラシを撒いたりして、開店日には客が列を作るほど繁盛する。それを真似して皆さんの店舗で広告や販売促進を店舗の運営がしっかりできないうちにやると逆宣伝でお客が怒り二度と来てくれないことになる。大手ファーストフードチェーンは厨房施設の能力が高く、1時間20万円から50万円の売り上げを上げるのが可能になっている。従業員もベテランの従業員を周辺の店舗からヘルプで派遣するから初日から売り上げが高くても問題がなく裁くことが可能で、もし、顧客が待たされて怒り出してもクレーム処理も完璧に行うことができる。筆者もダンキンドーナツの3号店を開店した際に大々的なクーポン付きのチラシを配布し、QSCが確立しない中で売り上げを上げたため、後で顧客が怒り二度と行かないと言われその解決にずいぶん苦労したことがある。(飲食店96年3月号 を参考) 皆さんの店舗で広告宣伝や販売促進をする前にはまず、店舗のQSCのトレーニングがしっかりできているか、仮に売り上げが倍になってもさばけるだけの従業員がいるか、調理能力は大丈夫かということを確認し、トレーニングをしっかり行う必要があるだろう。

売り上げを上げる方程式
売り上げを上げる方程式を考えてみよう。売り上げを上げるには来店客数を増やし、客単価を上げれば、かけ算だから大幅に売り上げが上がるということがわかるだろう。

来店客数を増やすにやや誤解があるようだ。良くあることだが飲食店の売り上げを伸ばすためには固定客作りが大事だと思いこむことだ。勿論固定客作りは大事なのだが同時に新客も大事だということだ。もしあなたの店が固定客1000人で成り立っており新規顧客がなければどうなるかというと、売り上げは年々下がるはずだ。それは、週に1回は来ていた客でも来店頻度が下がったり、引越しをして2度と来なくなったり、商売だからたまにはサービスや品質で問題がありその時に気分が悪いと2度とくるものかとなってしまう。つまり、固定客は年々減少するものなのだ。そういう意味では新規顧客の適正な比率というのが売り上げの伸びを維持するためには必要だ。

そして、新規顧客が初めて来店したら高いQSCと価値観を提供して固定客になってもらい、さらに来店頻度を増やすような工夫が必要になる。新客の増加と来店頻度の増加をする事により客数は大幅にのびるはずだ。

次に客単価を上げることを考えてみよう。総客数とは来店組数に同伴人数をかけることだ。つまり、客単価には組当たりの単価と、一人当たりの単価とに分かれる。組当たりの客単価を上げる最も簡単なやり方は同伴人数を増やすということだ。だから、誕生パーティーや、宴会をおすすめするわけだ。同伴人数を増やすことにより組当たりの単価が上がるし、宴会やバースディーパーティは一人当たりの客単価もあがるからだ。

一人当たりの客単価を考えると、今まで普通のハンバーグステーキを食べていた客に、デラックスハンガーグやステーキなどの単価の高いメニューにグレードアップしてもらうことがある。次に、サラダや、デザート、飲み物など一品を追加してもらいそれで単価を上げるという手法だ。

お店の問題点、商圏を把握しているか
もし、貴方の店の問題点が前年に対し売り上げが下がっていることであれば、売り上げ減少の原因が客数が減少しているのか、客単価が減少しているからかを分析しなければいけない。客数が減少する理由は一組みあたりの同伴数が少ないのか、組数事体が少なくなっているのか、客数は減少していないが、客単価が減少しているのか、客単価が減少しているのは食べる品目数が少なくなっているのか、単価のやすいメニューを食べるからか等その原因、現象面を明確にする。

次に、顧客名簿があればその住所を見て商圏が変化しているのかどうかを明確にする。たとえば近隣に大型のスーパーや百貨店ができて店のある商店街の来店客数が減少し、それが影響し、店の商圏が小さくなっている場合もある。

また、良く誤解するのだが、商圏は決して綺麗な円形ではない、アミーバのように変形した形状だ。商圏は距離ではなく時間で設定される。徒歩が中心だったら商圏は狭いが、電車、車、バスが客の交通手段であれば道路沿いに細長く商圏が広がっていく。この商圏を正確に把握しもっと商圏を増やせるのか、商圏内の人の来店頻度を増すのが優先なのかを決めなく手はいけない。そのためには日ごろから顧客の住所などを把握するために顧客カードの発行や、アンケート調査を行う。

広告宣伝や販売促進をやることにより、売り上げがあがるか、利益が出るのか?
クーポン付きのチラシの回収率は0.3%―7%とかなり幅がある。最初に知名度がないときにチラシをまいても回収率は低い、しかしそれで諦めてはいけない。テレビコマーシャルも、蓄積総視聴率という考え方がある、普通テレビの放映量を計測する手段としてGRPと言う考え方がある。何回も繰り返し放映することで視聴者の頭の中にその飲食店のイメージがたまり、それがある一定レベルにくるとその店舗を訪問したくなる。つまり、単発でテレビコマーシャルを流したり、チラシを配布してもすぐには効果が出ないということだ。

マーケティング(広告宣伝や販売促進)とは何か?
<広告宣伝>

広告宣伝とはテレビ、ラジオ、新聞広告、新聞折り込みや宅配などのチラシ配り、看板、ポスター、垂れ幕、などを通じて、店舗の形態、何料理なのか、特徴、店の場所などを新しい顧客に教えることだ。

広告宣伝手段
テレビコマーシャル
ラジオコマーシャル
テレビコマーシャルやラジオコマーシャルを関東圏や関西圏などの広域テレビエリアで使用するには、店舗数の規模が必要で中小のチェーンではコストがあわない。広域テレビエリアの場合、最低でも100店舗の店舗数が必要となるだろう。もちろん年商規模による支出可能な広告宣伝費の額により変わってくるが。

しかし、地方の小さいテレビマーケットでは時間帯や時期によっては中小のチェーンでも使用可能であり、地方の大型飲食店や旅館などで使用し効果を上げているので、まずどのくらいの費用がかかるか聞いてみてもよいだろう。

テレビとラジオを比較する場合まず、テレビの方が効果がはっきりしている。ラジオを使用するには対象顧客がテレビを見ないがラジオをよく聴く場合と、テレビの補助としてカバー率を上げたいというときに使用する。

映画館でのコマーシャル
新聞折り込みチラシ
宅配チラシ
店頭配布チラシ
駅構内看板
駅構内ポスター
電車内中吊り広告
電車、バス内窓ガラスステッカー
バス外部広告
店舗前看板
店舗大看板
店舗袖看板
店舗外観
店舗垂れ幕
店舗窓ガラスステッカー
以上の媒体は販売促進にも使われるが、飲食店で使用できる広告宣伝媒体だ。 この中でも使用料金を払う必要のあるものとないものがある。まず、使用料金を払う必要のない、店舗の外観、店舗前の看板類、店舗の垂れ幕などをしっかりめだたせるようにする。筆者の経験ではその店舗を知った動機の50%以上が店舗の存在そのものだからだ。まず、店舗を通りかかる人にアッピールする必要があるわけだ。

ここで忘れてはいけないのは店舗の存在自体が大きな広告宣伝媒体だということだ。そのためには店舗外観がきれいで夜は照明が明るく店舗が浮き上がるように目立ち、通行人に対して対面するような大きな目立つ看板を用意する。そして、店を見たときに格好がよくしゃれた感じで思わず入りたいなと思わせることが重要だ。

ここで重要なのは店舗の店名、会社名などのデザイン、名称、色などを統一するということだ。広告は一つでは終わらない、いくつかの広告を見ることによりイメージがたまり、お店に来たくなるようにする。だから、すべての広告媒体のデザインが同じでないとイメージの蓄積ができないわけだ。だからコーポレートアイデンティティCIが必要になってくる訳だ。

広報(PR、パブリックリレーション)

広報は、会社のイメージ、商品、店舗のオペレーションなどについて、企業が媒体費用を支払わないで、新聞や、雑誌、テレビニュースに取り上げてもらう活動である。会社のイメージや商品にあらかじめ好感度を持ってもらってから、大量の広告宣伝費や、販売促進費を使用すると効果的になる。

パブリシティには以下の媒体がある。

新聞
テレビ
ラジオ
ミニコミ紙
雑誌
口コミ
関東、大阪圏などの大都会では新聞記事のネタが多いのでなかなか取り上げてくれないが、地方紙などでは地元の情報を掲載してくれることが多い。単なる店の広告ではなく、特殊な催し、例えば有名な調理人を招聘するイベントや、老人の日の招待、子供の日に恵まれない子供を招待するなど、話題性のある内容を提供する必要がある。

販売促進(プロモーション)

販売促進とは短期的な売り上げ増進や、店舗未利用者の利用を促す活動であり、無料券、試食券、割引券、セットメニュー、プレミアム(景品)等を使用する。

TVCMやチラシだけでお客をお店まで来させることは難しい。そのために、無料の試食件や割引券を配布することにより、店舗までお客を引き寄せる。

また、以前は顧客だったが飽きて遠ざかっている人に対するリマインドを行うために新メニューの告知などを行う必要もあるだろう。

販売促進手段
急に、大手のファーストフードやファミリーレストランが行っているようなクーポン付きのチラシをまいてはいけない。まず行うには従業員に名刺を作ることがまず重要だ。皆さんも、近隣の商店街やデパート、レストランに買い物に行くことがあるだろう。その時にまず名刺を出して自己紹介し、ぜひ来てくださいと自己宣伝することから開始しなくてはいけない。もし、従業員の皆さんが感じが良ければ何も特典がなくても来てくれるはずだ。まず、近隣への挨拶ができるようになったら、次に名刺の裏にご来店してくださり何か注文の際には飲み物をサービスしますと言う特典をつける。そして、それを1枚ずつ挨拶しながら丁寧にまいていく。基本は皆さんの応対の態度である。

この基本的な近隣周りができるようになってから初めてチラシ撒きを開始する。

その前に、なにをしたいのか、来店客数を増やしたいのか、その場合組数を増やすのか、同伴人数を増やすのかなどの目的を明確にして、それぞれにもっとも適した販売促進手段を選ばなくてはいけない。

では目的別販売促進の内容を見てみよう。
A)来店客数を上げるには以下の手段がある
新規顧客を獲得する
新聞折り込みチラシ
宅配チラシ
店頭配布チラシ
新規顧客を獲得するには広範囲にチラシを配布することが有効だ。開店前や、開店後に配布する場合には無料券などの特典はつけない。新しい店が開店すること自体が顧客の興味を引くからだ。新聞折り込みのチラシは折り込む日を考慮する。新聞折り込みを読むのは主婦であり、買い物にいく給料日後の週末にきちんと読むが、平日だと読まないことがある。以前は飲食業の新聞折り込みチラシの効果が少なかったが、景気が低迷している現在、主婦層などはチラシをきちんと読むようになり、配布日とチラシの文面を目立たせることにより効果が上昇してきている。

店の前の通行人にも同じチラシを配布するのは有効だが、配布の際のマナーをしっかり守ることが必要だ。まず、従業員がきちんとユニフォームを着て笑顔で声を出して配布することが基本になる。また、道路で配布する際には警察の道路使用許可を申請してから回付しなくてはならない。

チラシは新聞折り込みは一度に配布できて有効だが、無料券などのインセンティブをつけると一度の効果が強すぎて店舗の対応が難しくなる。そのような場合には地図で地区を決め、毎日一定枚数のチラシを自分たちで宅配する。人件費を考えると一枚当たりの宅配コストは新聞折り込みよりも高くなるが、無料券などをつける場合には効果を測定しながら配布できるので、中小の飲食店ではかなり有効な手段になる。

無料券配布
訪問配布
街頭配布
チラシに無料券を添付したり、無料券を配るのは大変効果的だが、配布方法の注意が必要だ。無料券を配布するのは新規顧客を獲得することが目的であり、店内に入ってくる顧客などの配布するとかえって売り上げが下がることがあるので注意が必要だ。どの地域に配布するのかきちんと計算して行う必要がある。

更に注意が必要なのは顧客が無料券を持って来店するときだ。顧客は無料券を使うことは恥じらいを持ったり気後れがする場合がある。その際に忙しいからと言ってぞんざいに扱うとかえって気分を害し二度と来店してくれなくなることがあるので、無料券を使用する顧客の扱いは特に注意を払わなくてはいけない。

無料券の種類だが、新商品などのようにそれだけで魅力のある商品をつけるのではなく、一定金額の料理や利益率の高い料理を注文したら、飲み物などの無料券をつける。この無料券の設定はどの位新規顧客を取りたいかという貴方の店の意気込みにより変わり、インパクトを強くしたい場合には思い切った無料券の設定も良いだろう。但し効果が強く顧客が列を作っても大丈夫なような店舗運営面の強化は必要になる事を忘れてはいけない。

無料券は新聞折り込みなどのチラシに刷り込むのも良いが効果が強すぎるので、まず、無料券を店舗周辺の事業所や家に訪問し、説明しながら配布することが第一歩だ。そしてどの位の回収があるかを測定してから、だんだん規模を大きくすると言う慎重さが欲しい。

食事ギフト券の販売
店内の顧客に対する新規顧客の獲得にとって効果があるのが食事ギフト券だ。顧客が店のサービスや品質に満足し、それを友人や親兄弟に教えたいとギフト券を購入する場合に大変効果がある。売り上げが急にあがるわけではないがきちんとしたQSCを実現できる場合には効果的な手法だ。

固定客化する
会員カード
回数、購入金額により得点がつく
食事ごとにサービス品がつく
食事ごとに割り引き
無料クーポン券の綴り
チラシや無料券で新規顧客が来店したら固定客になってもらう必要があるし、月に一回来る固定客が週に1回くるようになれば売り上げはかなり上昇する。そのために使用するのが会員カードやポイントカードだ。会員カードにマスをもうけて一定の購入金額毎にスタンプを押し、一定の数がたまったら、商品や、景品と交換するやり方だ。

会員カードは単に固定客化だけでなく客単価の向上のメリットがある。一人当たりの客単価が800円だとしたら、スタンプ毎の購入金額の設定を500円とする。そして、メニューに200円から300円のサイドメニューを作り、顧客が1000円の単価にしやすいように誘導する。この場合レジの精算の際に、次回には1000円になった方がお得ですよときちんと説明したり、オーダーを取るときにさりげなくお勧めするのが秘訣だ。

特典は売り上げの7%―10%位の割引になるようにするのが一般的だ。この会員カードはすぐに効果が出るわけではないが、固定客作りには大変友好的なので是非活用したい。

また、VIPカードのように一定金額の食事ごとにサービス品がつく、一定金額の食事ごとに割り引きになるようにして、顧客が店にとって特別な固定客であるという待遇をして、固定客になるようにする。

無料クーポン券の綴りの配布も固定客作りに役立つ。チラシなどに無料券を添付する場合に、回収期間を一週間毎に設定し、一ヶ月の間に4回はこなければならないようして、来店週間をつけるという手法だ。最初の回収期間の無料券は最もインパクトの強い割引率が高いか、無料の食事招待券にして、その後はだんだん割引率を下げていく。

来店頻度を上げる
会員カード
回数、購入金額により得点がつく
食事ごとにサービス品がつく
食事ごとに割り引き
2.と同じ手法を用いる。
ダイレクトメール
来店頻度が落ちた客にリマインドをさせる。特に客単価の高い宴会客に送付したり、する。

また、誕生日パーティのお知らせなどグループ客を獲得する手法として有効だ。但し、ダイレクトメールはコスト的に高価なので客単価の高い店舗や、グループ客の獲得に使用する。場合によっては電話や事業所訪問などの手段も併用する。

B)客単価を上げる
一組当たりの人数を増やす、グループ化
宴会の訴求
メニュー開発
チラシ
街頭看板
ダイレクトメール
幹事向けの無料招待券
宴会の訴求に使用するのは幹事に送付するダイレクトメールだろう。ダイレクトメールに宴会の案内と共に無料招待券や、お試し券などを同封する。

来店後にはダイレクトメールでお礼を申し上げ、来店されるときの割引券などを同封し、幹事が固定客になるようにすると、次にダイレクトメールがもっと有効になる。

客単価の高い商品に移行してもらう
POPの必要性
店頭キオスク看板
店頭メニュー
店舗窓ガラス垂れ幕
店舗窓ガラスステッカー
チラシの配布
告知が重要であり、チラシで告知し、店頭のキオスク看板、店頭メニュー、入り口POPなどで、しっかりと告知する。次に、オーダーを受ける際にお勧めをきちんとすることが必要だ。

チラシを配布する場合、客単価の高い新商品を購入の際には何か他の一品のサービスなど、購入条件付きの特典をつけ、客単価の高い商品を注文する動機付けを行う。

一人当たりの品数を増やす
もう一品購入してもらう。
テイクアウトをしてもらう
先に述べた会員カードを使用して行ったり、テイクアウトの商品を設け、購入金額が増加するように務める。

2)予算と効果測定
広告や販売促進を実施する前に現在の自社チェーン店舗の位置づけを明確にしなければならない。自社の位置づけはアンケート調査などで調べる。300サンプルに聞き取り調査を行う。この調査では、会社のイメージ、想起率(会社の名前、商品名などを思い出すか)、利用頻度、利用形態(何時、誰と、どの理由で)、競合チェーンの利用状況、QSCの評価(自社と他社)、競合のGRP量、強い点、弱点、店舗展開上の地域別強弱、地域別の広告の強弱等、細かく調査する。この調査と、各店の売り上げデータ、アンケート調査を元に、今後どの地区で、どのような広告宣伝が必要かがわかってくるのだ。そしてどのような広告宣伝媒体(テレビ、ラジオ、新聞、折り込みチラシ、雑誌、屋外広告、ダイレクトメール)を使用するか決定していくのだ

調査により、自社の強弱が出るからそれに基づき今後訴求する内容を決めていく。会社のイメージ、商品のイメージ、QSCのイメージをどのように訴えるか、明確にするのだ。

3)広告宣伝と販売促進の費用の予算化と効果の予測
予算の作成と効果の予測
どのくらいの広告宣伝、販売促進費を使うかの予算をたてる。次にそれによりどのくらいの売り上げが上がり、最終的に損益がどうなるかを考える。

広告のターゲットと目標を決める
自社店舗の対象客層を明確にする。年齢、男女別、所得別等だ。これによりターゲット別の広告戦略を立てることが可能になる。

訴える内容は、会社のイメージ、商品のイメージ、店舗QSCである。プロモーションであれば、客単価アップ、新商品による売り上げアップ、新規顧客の獲得、来店頻度アップなど訴求する内容を明確にする。

タイプ別広告販売促進手段を決める
ターゲットと目標が決まれば、TV、ラジオ、新聞、チラシ、無料券、会員カード、等の中でどの媒体が効果的か決めていく。

クーポン、チラシの効果測定
クーポンやチラシを配布しっぱなしで、効果があるとかないとか、感覚で評価をしてはいけない。効果を科学的に分析し、次回の販売促進に役立てる必要がある。

たとえばクーポン付きのチラシの配布の場合、地区別に印を付けておき、地区別の配布枚数に対する回収率を計算する。そして、回収率のよいとこと悪いところの理由を分析する。回収率のよいところの人たちは普段から店舗の前を買い物や、通勤、通学で通る人で普段から店舗の存在を知っていた人だろうし、回収率のよくないところの人は他の駅を使って買い物、通勤、通学をするからかもしれない。問題は回収率のよくないところの人に対して次回も販売促進を行うかどうか、行うのだったらもう少し来たくなるような刺激の強い特典をつける必要があるのかなどを検討するわけだ。

だから店舗には、表を用意し地区別の回収状況、クーポン当たりの売り上げを記録しておく。クーポン当たりの売り上げというのは対費用効果を測定する上で重要である。

効果測定には損益分岐点の手法を用いる。貴方の店の営業利益率が10%位しかないとそんなに宣伝広告費をかけても売り上げの伸びの10%しか儲からないのでは利益が出ないからやめようと考えがちだ。そのような方は損益分岐点の考え方をしっかり身につける必要があるだろう。経費は変動費と固定費に分かれる。変動費とは売り上げに連動して経費が上がったり下がったりする。材料費や人件費などだ。固定費は店舗の家賃や金利、減価償却費、社員の人件費などだ。この固定費は店舗により異なるが20―30%になる。つまり売り上げが上がってもこの固定費は上昇しないから、売り上げ向上分の利益率はかなり高くなるわけで、売り上げを上げるための経費はかなり使えることになる。(損益分岐点の考え方は94年1月号の筆者の記事を参考にしていただきたい。)

販売促進費用の捻出
販売促進は効果があるのはわかるがそれだけの費用を捻出できないという人には、まず、費用のかからない販売促進をおすすめする。それはまず店舗看板をきれいにする。

そして、自分で各家庭や職場を回り、売り込んでいく。そんな時間がないという場合にはまず店舗の仕事の中身を分析しよう、経営者や店長でなければならない仕事は何か、アルバイトに仕事をもっと任せ

られないかを工夫して販売促進が出来る時間を捻出しよう。

そうすると顧客から意外な意見を聞くことが可能だ。そうすることにより売り上げを上げるだけでなく、店舗の品質、サービス、クレンリネスに対する顧客の不満を見いだすことができ、それだけで店舗の売り上げを向上することが可能になる。
<最後に>
筆者はマクドナルド時代色々な広告宣伝、販売促進を試みた際に、同じ手法なのに店舗により効果が異なることに気がついた。特に効果が出る店のトレンドを見てみると同じ広告宣伝、販売促進の手法をとっても他店よりも抜きんでて売上の伸びがよい。また、販売促進が失敗したり、景気の動向により売上が低下する場合でも他店よりもその減少度合いが大幅に少ない。そんな傾向の店舗が幾つかあった。そこでそれらの店舗を詳細に点検したところ、店舗での日常のサービスが際だって優れていることに気がついた。

マクドナルドの販売方法はカウンターで顧客が並んで購入するセルフサービス方式で効率がすこぶる良い。しかしながらその欠点はサービスの手抜きという印象がある。顧客と会話する時間がなく機械的な販売の印象が強い。筆者がSVの時に2階の客席の店で売上が低迷したときに、顧客のアンケートを行ったらサービスが冷たいという声が挙がった。そこで、フロアーホステスという制度を発足させ、その後,STAR制度に進化させた。これは客席で困っている顧客、例えば子供を連れの顧客のハンバーガーの乗ったトレイを運ぶのを手伝ったり、子供が騒ぎ廻るのをなだめたり、老人が階段をトレイを持って上るの助けるなどする仕事だ。後に売上の悪い店舗で、店舗周辺の住宅への販売促進を行ったり、サンデーイベントと言って日曜日に子供を集めゲーム大会を開く、卒業時のお別れ会の開催など色々なイベントを顧客と一緒に行うシステムだ。

この制度は人件費がやや高いのが欠点であったが売上の伸びの良い店の殆どがこのシステムを導入しており、景気の悪いときでも売上の低下は少ないのだ。その理由は顧客がこのサービスのせいで店舗に対して良い印象を持っており、販売促進を行うとその効果が格段に高くなるし、景気が悪くても店に対するロイヤルティが高いから来店頻度が下がらないと言うことのようだった。

販売促進を効果的に行うには日頃からの店舗のサービスが良くなくてはいけないと言う事なのだろう。皆さんも販売促進に走る前に自分の店のQSCはどうなのだろうかと見直してみることが一番大事なポイントだろう。

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