96年ホテルレストランショー(商業界 飲食店経営1996年5月号)

今回のホテルレストランショーで目立っているのは

クックチルシステム
厨房の環境改善
他業界からの参入
コンピューター、POSシステムのオープン化
の4つのエリアだ

クックチル
クックチルが数多く出されていた。クックチルは調理機器と冷却機器の組み合わせが重要だが、今回は調理機器、冷却器、保冷庫、保温庫などのシステムとしての提案がでてきた。クックチルには2種類の方式があり、空冷のブラストチラー方式と水冷のタンブルチラー方式がある。

大規模なシステムのために、スチームコンベクションオーブン、ブラストチラー、加湿保温庫、冷蔵庫のラックサイズを同じにして、ラック毎移動できるロールイン方式がシステムとして出品された。大型のホテル、旅館、給食、病院、セントラルキッチンなのでの導入が見込まれている。今後ブラストチラー方式は単なる保存法としてだけでなく、急速冷却することによる衛生管理状態の向上という面からも導入が多くなるだろう。

タンブルチラー方式を提案しているメーカーでは自ら工場に導入し数年のメニュー開発を経て、今春にはあるファミリーレストランでスパゲティソースを中心の調理に使用される予定だ。タンブルチラー方式は食品を真空パックし、低温調理するというフランス料理真空調理方式の味が良いと言うメリットを持っており、保管期間が45日間と長いことから今後の普及が見込まれるようだ。

本年から病院給食など院外調理(セントラルキッチン方式)が認められるようになり、今後これらのクックチル方式が多く導入されるだろう。

厨房の環境改善
経済的なガスを使用しながらどうやって厨房の環境を良い状態に保つかということでスチーム加熱ケトルと室外置きのスチームジェネレーターの組み合わせが提案された。今流行のイタリアンスパゲティーの調理は、ソースを作るのはストーブ、パスタを茹でるのは湯の入った大釜を裸火で加熱するという物で、厨房の環境は劣悪であった。そこでガスタイプの蒸気発生器を室外に置き、発生した蒸気を配管でケトルまで持っていき加熱する。小型のケトルでソースを作り、中型のケトルで水をわかしてパスタを茹でるという物だ。蒸気の潜熱は大きい物があり中型ケトルの水が短時間の間で沸騰するのには驚かされる。欧米では一般的な使用方法であり、日本でもこれからの活用が望まれる。

両面から短時間に焼き上げるという、両面焼き焼き物機が展示されており、居酒屋や和食の店舗で短時間で焼きものを調理するのに便利になり、結果として厨房の環境が改善されるだろう。

今後の厨房の作業環境の改善は、スチームケトルなどの熱を出さない調理機器、一体型給排気ダクト、一体型配管などの組み合わせによる総合的な改善を目指した物になるだろう。

他業界からの参入
焼きたてパンや、饅頭などを作る包餡機などは、モバックショー(製菓製パン)に展示していた物だが、ホテルレストランショーでの展示規模が大きくなってきた。昨年低価格で大成功を納めた大手ホテルのメイン厨房で包餡機を中華饅頭の製造に使用したことをきっかけにホテルなどへの販売を本格的に考えているようだ。同じく焼きたてパンのシステムも外食産業への参入をねらって展示していた。コンビニチェーンの焼きたてパンに対抗するために本格的な焼きたてパンのシステムをレストランでも実現しようと言うものだ。

従来は保温と冷蔵のショーケースは総菜スーパーマーケット向けの商品であったが、米国のボストンマーケットなどで採用されてから外食産業でも注目を浴びている。

コンピューター、POSシステムのオープン化
POSやコンピューターのシステムは従来は専用のソフトと機械であったが、昨今のオープン化の影響で、コンピュータもDOS/V機を使用し、汎用ソフトが動くようになってきた。 POSはまだ専用機であるが、本部のパソコンがDOS/V仕様であり、POSのデーターを専用のフォームで集計し、それを汎用ソフトの表計算ソフトのエクセルや、データーベースソフトのアクセスなどに簡単に取り出すことが出来、自分たち独自のフォームを構築できるようになっている。これにより中小の飲食業もより使いやすくなっていくだろう。

最近成長している分野は寿司などの宅配チェーンだ。宅配のチェーンではパソコンや専用のPOS等を注文受けに使っているが、よりコストの低いシステムが望まれ、電話機と一体型の低価格の専用端末が展示されていた。 今後これらの低価格の機器の開発が進む物と思われる。

写真説明

[写真1] クックチルのプレゼンテーションが大人気だ。

[写真2、写真3、写真4] ラックのサイズを統一した、ロールインの大型のスチームコンベクションオーブン、ブラストチラー、加湿保温庫、冷蔵庫、を組み合わせたシステム

[写真5] 大規模な能力のあるタンブルチラーとブラストチラーの組み合わせで本年はファミリレストランにも本格採用。

[写真6] 小型のスチームケトルと室外置きのスチームジェネレーターの組み合わせで厨房環境を改善

[写真7] 高温のブラストガスバーナーによる両面焼き機により調理時間の短縮と厨房環境の改善

[写真8] 排気ダクトと配管スペースの一体化による厨房環境の改善

[写真9] 焼きたてパンがレストランやホテルでも採用されだした

[写真10] 大型の食品工場で使用されていた包餡機が低価格の大型ホテルの厨房で採用されている。

[写真11] ボストンマーケットなどで脚光を浴びた保温ディスプレー。総菜マーケットでの採用が増加している。

[写真12] POSと連動したDOS/V互換機による汎用ソフトウエアーの活用が可能になる。

[写真13] 宅配用の低価格オーダー入力システム。ピザや、寿司など宅配ビジネスが盛況を示している。従来はオーダー受付のポスを数多く入れなければならず投下資本が高価であったが、電話と一体型のターミナルを活用し、パソコンと連動した低価格のオーダー入力システムが開発された。

[写真14] 米国で急成長中のスターバックスチェーンが今春日本に進出してくることでもわかるように、各コーヒーチェーンで人気急上昇なのがこのエスプレッソマシンだ。エスプレッソは味はよいのだが抽出に時間がかかったり、高価であったが、抽出時間を短縮しながら、日本のマーケットに合った小型で安価な機械が販売されるようになった。

[写真15] 野菜やフルーツを脱気して保存すると変色がしないというメリットがあるが、従来の真空パック用のプラスチックバッグではつぶれてしまう。そこで、脱気してもつぶれず、蓋を開けてサラダバーなどにそのまま陳列できる真空パック用のコンテナが開発された。

[写真16] 日本の大手の厨房機器メーカーも円高対策で米国大手厨房機器メーカーの調理機器を幅広く展示し、顧客のニーズに応えられるようにしている。

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