99年の外食動向(商業界 飲食店経営1999年1月号)

99年度中に解決するべき重要課題
1.FF業界
低価格、絞り込み、コンセプト刷新がキーワードだ
景気の低迷という逆風の中、業態を越えた競争にさらされたのが外食産業だ。500円で食べられる弁当や惣菜を抱えているCVSの急成長にその基盤を脅かされている。コンビニに対抗するために80円バーガーなどの低価格メニューを充実させた業界トップのマクドナルドは一気に独走態勢に入り、価格競争と多店舗展開に追随出来なかったチェーンは脱落を始めている。マクドナルドは10年ほど前より低価格を実現するために、グローバルパーチェシングと言う世界で最も安い食材や機材、内装設備を調達する低価格の仕組みを作り上げた。さらに、小型店舗の多店舗展開を行った事が売り上げを大きく伸ばした。このマクドナルドの価格競争力はハンバーガー業界だけでなく、フライドチキンやドーナツ業界も巻き込んでおり、どの業界も低価格を実現しないと生き残れない時代を迎えているようだ。400円以下でマクドナルドに対抗できる吉野家のような牛丼業界の好調さを見るとそれを裏付けている。価格競争から逃れるために販売品目を増やしたチェーンは企業コンセプトが色あせ、消費者に混乱を呼んでいる。FFの原点に立ち返りメニューの絞り込みを行う必用があるだろう。
コーヒーチェーンではドトールコーヒーの独走にストップをかけるスターバックスの存在が目に付くようになった。コンセプト、内装、看板の陳腐化が新鮮なスターバックスの進出により顕在してしまったわけだ。ドトールは新規のファッショナブルなビルでの出店競争での優位性を失い始めている。FFの場合古い企業ほどそのイメージコンセプトの色あせが目に付き、飽きやすい日本の消費者から指示されなくなっている。店舗内装、イメージ、の刷新が必用だろう。

2.FRの世界
多角化、和風、価値観の向上がキーワードだ
FRの最大の課題は業態の多角化だ。ガスト、ビルディ、すかいらーく、ガーデンズ、グリル、ジョナサン、バーミヤン、藍屋、夢庵、と言う多角化を成し遂げたすかいらーくとその戦略を踏襲するチェーンの動向だ。しかし、多角化には企業としての体力が必用であり、多角化を成功させたのはすかいらーくグループだけだ。すかいらーくの低価格と多ブランド化に追随した他のチェーンは企業体力を消耗している。今後は自企業の得意の分野に集中して展開をせざるを得ないだろう。
洋風FRは不調の反面、和風FRが好調だ。すかいらーくの和食業態の藍屋、夢庵の展開がスローダウンしている間隙を縫って、ライフコーポレーションの華屋与兵が首都圏で積極的な展開を図っている。屯田も主力の北関東では京樽の後に店舗展開を行ったり、神奈川地区への進出など積極的だ。サトも和風FRに主力を移すようで、今後、競合の厳しくなる分野だ。和風の場合より鮮度の高い、加工度の高い料理に取り組まなくてはならないだろう。

FR業界の最大の課題はコンセプトの陳腐化だ。すかいらーく、ロイヤル、デニーズが急成長したのは住宅のドーナツ化の波の乗り、郊外型の新しい生活の提案を成し遂げたということだ。その新鮮さが薄れる中、店舗コンセプトを変えないで、メニューだけ増やし他店舗には顧客の飽きがでているようだ。

FRは従来FRというくくりの中で、和洋中と何でも提供すると言う店舗形態をとっている。しかし、顧客の求めているのは単なるメニューバラエティではなく、鮮度の高い店舗コンセプトだ。それを物語っているのはサンマルクの成功だといえる。

今年度注目した業種、業態、企業
今元気なのは新進気鋭の中小チェーンだ。首都圏に3店舗の出店を成し遂げたケンズダイニングバーや熱熱食堂/橙家を展開するちゃんとフーズ、ロイズやNOBUを大繁盛店にした月川企業、胡同四合坊を大ヒットさせた中華の際コーポレーション、恵比寿にZEST/白金にラポエムと言う大型店舗を出店したサービスの良い都会的な店舗のグローバルダイニング、オバカナールなどの個性的な店を抱えるオライアン、イタリアン/チャイナなどと多角化を進めるキハチ&エス、女性に大人気の豆腐懐石梅の花の梅コーポレーションなどが続いている。これらの個性的な企業は、店舗のイメージ、サービス、バリューというバランスを武器に昔のFRで感じた「外食のときめき」を再現している。
また、ライフスタイルがカジュアル化、個人化に変化する中、サービスと雰囲気に自信のある米国の外食チェーンが続々と進出を図るようだ。ワタミフードサービスと提携するTGIフライデー、米国で急成長中のアウトバックステーキハウスなどが準備中だ。今後のFRは業界の淘汰、買収、外資の進出、などと波乱が予想される。

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